南へ!
「さて、砂亀も消えたことですしそろそろ野営の準備をしましょうか」
防壁を解除しながら優希はトール達にそう告げた
「…お前達はあの魔物を倒したのか?」
神妙な面持ちでトールさんが尋ねる
「いいえ。固めて遠くへ送っただけです」
裾を払いながらリリーが寄ってくる
「もう、砂亀を見ることはないのか?」
「いいえ。数年は現れないでしょうが遠くない未来にまた現れます」
「そうか…もし、もしもの話だが、砂亀は倒せるものなのか?」
「それもいいえです。例えその場では倒せたとしても、魔物がまた生まれるように砂亀も生まれてきます」
「そうか…」
どこかくやしそうに呟くトールさんはうつむき、小刻みに震えているようにも見える
「ですが…倒し方は存在します。よければお教えしますよ?」
「………頼む」
絞り出すように答えるトールさんを横目に、優希達は野営の準備をすすめていった
「まさか、こうまであっさりと処理するとは思いませんでしたなぁ」
一人の男が呟いた声は、誰にも届くことなく砂漠の静寂に包まれてきえていく。
翌日、日の出のまだ暗がりが残る時間に出発した一行は夕前には砂漠を抜けて南部諸国連合の土地へと踏み込んだ
「さてさて、何事もなく砂漠を超えれましたし、砂亀はいないって事でいいんですよね?」
優希は改めてメンバーに質問を投げかけた。
「被害もありませんでしたし、姿も見てませんが魔物の数が圧倒的に少なかった事は報告する必要がありますね」
それに答えたのはオルフェンスさんだ
「まぁ砂亀がいないとわかればまたこの道も使われるようになるだろうさ」
傭兵のトールさんがそれに続く
「ところで、ここからギルドのある街まではどれくらいかかるんです?」
「2日…1日ぐれぇだな。まぁ急げば半日だが急ぐ理由もねぇし普通に行くさ」
「私もそれでいいと思いますよ」
「もう少ししたら野営ですかね?」
「だな。しっかしこうまで戦闘もなく過ごしてると体が鈍りそうで怖いぜ」
「そんな事言ってると魔物がよってくるんじゃないですか?」
無い時に無いと言うと現れるのが一般的なフラグだからね!
「……そのとおりになりそうですね」
リリーの一言に周囲を警戒してみると、砂漠方向へと進む魔物の群れが確認できる
…おやおやおや?砂亀が消えて縄張り争いが始まるとかじゃないですよね?
「おい、どうしたんだお前ら。急に黙って」
「リリー。できるかい?」
「はい♪お任せ下さい!」
テンションが上がっているリリーは楽しそうに答える。しばらく魔物に会えなくて魔素が減ってるだろうし、ちょうどいいボーナスタイムみたいなものだよね?
「まさかとは思うが、本当に魔物が出てきたとか言わないよな?」
「ええ、もう終わりますし何も問題ありませんよ」
すでに魔物たちの総数は半分を超えて減っており、全滅も時間の問題だ
引きつった笑いをこぼしながらトールさんはその場で固まっている
「じゃ、そろそろ進みましょうか。日が落ちるまでまだもう少し時間がありますし」
どうやら、魔物の行進に巻き込まれた人が残ってるみたいだし、ね?




