第23話 人類の生存圏の中
≪108番SIDE≫
全ての〝ワービースト〟を学園長が簡単に倒した後、オレ達はその学園長についていく事になった。
「落ち込む必要はないよ。君達はエーテルギフトを得てまだ日は浅いのだろう?
慣れてくればあの〝ワービースト〟程度なら、分身1体で倒せるようになるんじゃないかな?」
学園長は無言でついていくオレ達を励ますようにそんな事を言い出したが、別に落ち込んではいない。
ただ、自分達の力だけで生きていけない事が残念なだけだ。
いやまあ、オレは何もできないので、77番の力に頼り切りになるのだが。
最終的にいたたまれなくなりそうだから、逆にこれで良かったのかもしれん。
「もっと強くなりたいですね」
77番がぼそりと呟いたが、今でも十分強いと思うんだがな。
分身能力とバフ能力は強力すぎるだろ。
その2つを同時に持つ無法が許されてええの? と、言いたくなるほどに。
まあその能力のうち、学園長達はオレの能力をバフ系だと勘違いしているようだが。
それにしてもエーテルギフトについて詳しく聞いてこようとしないんだよな。保護する前にどんな人物でどんな力か調べそうなものなのに何も聞いてこないのはなんでだ?
そんな事を思ってた時だった。
「すいません、お待たせしました」
「研究所の制圧は完了しました。私達以外は研究所の人間達を監視するために残っています」
そう言って現れたのは、先程研究所ですれ違ったどこかの学校の制服を着た少年少女達。
「お疲れ。みんな、大丈夫だったかい?」
「はい。正直拍子抜けするほど抵抗が少なかったので。強力なエーテルギフト持ちは何故かすでに弱ってましたし」
77番が昨日フルボッコしたからな。
まだ回復しきっていないタイミングで襲撃されたから、まともに反撃できなかったんだろう。
「制圧の方は問題ありませんでしたが、あの発光現象の原因はまだ判明していません。
何かしらの実験だと思うのですが……」
「うんうん。あの光があったから探っていた研究所の場所も判明したわけだけど、それについてはおいおい調べていけばいいから問題ないよ」
学園長が軽く頷きながら報告を聞いている中、オレは内心叫んでいた。
こいつらが襲撃してきたのはオレが原因かよ!?
どう見てもタイミング的にオレが77番の願いを叶えた際の発光が目印となって、こいつらを呼び寄せたようだ。
研究所は地中深くにあったんだが、それを貫通して地上まで光ったのか。
「それじゃあ研究所の人間は拘束連行していくとして、被害者たちの保護を――」
学園長が秘書に何かしらの指示をしている時だった。
唐突に眠気が襲い、頭がハッキリとしなくなってきた。
「大丈夫ですか108番様?」
「……眠い」
さっきまではテンションで誤魔化していたが、もうそろそろ限界だ。
〝自身の契約2〟である【能力使用後、体力の9割が消失する】デメリットのせいで、体力が失われてまだ回復しきっていないのに、77番に必死にしがみついていただけで残っていた体力を使い切ってしまったようだ。
以前、無理やり[願望成就]を使用させられた時は、数日食っちゃ寝を繰り返してようやく回復したのだ。
なのに今回はまだ1日しか経ってなくて、ご飯を少し食べた程度ではろくに体力が回復していなかった。
「あと、任せる」
「かしこまりました」
オレは77番にそう言って、そのまま目を閉じた。
◆
ふと目を覚ましたら、真っ白な部屋だった。
一瞬、研究所に戻ったのかと思ったが、首だけ動かしてよくよく周囲を見たら、前世で見たドラマの病室と似たような部屋で、研究所の無機質な部屋とは違っていた。
どうやらオレは病院のベッドで寝かされているようだ。
「起きましたか108番様」
「……ずっと起きてオレを看てたのか? 疲れてないのか?」
そしてベッドの横には当たり前のように控えている77番。
オレが眠る前、77番はオレを抱えて学園長から逃げたりしていたから疲れていただろうに、マジか。
「分身を出して108番様の護衛と看護を任せ、本体は先ほどまで休息を取っていましたから、疲れてはいませんよ」
「分身って便利だな」
本体が寝てても分身が消えずに指示をこなすとか凄いな。
だてに【寿命99年の先払い】という理不尽なデメリットなだけあり、その分能力が強力だ。
「オレが寝た後どうなった?」
「108番様が眠った後、巨大な壁に囲われている街へと連れて来られ、この病室で休ませることになりました。
詳しい話は108番様が起きた後、という事になっています」
「巨大な壁?」
「はい。なんでも人類の生存圏に〝ワービースト〟が侵入してくるのを防ぐためのものだそうです」
前世では聞かないものがまた出てきたな。
城○都市か学○都市とでも言うつもりか。
「侵入を防ぐってことは、出るのは容易じゃねえよな?」
「壁自体は巨大といっても、私なら分身を駆使すれば108番様を抱えて脱出することは可能かと」
「なら研究所よりはマシなのかねえ」
研究所だと地下空間で、脱出なんて到底できるもんじゃなかったからな。
出口がどこにあるかすら知らなかったから、あの大穴が無ければ抜け出せなかったくらいだし。
籠の中の鳥から、動物園で飼育されている鳥くらいの環境に変わったということか。
オレの能力がバレない内は過ごしやすい場所ではありそうだ。




