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悪役(の僕)なら法に触れない限り怠慢は働きません故(黒笑)  作者: 旧プランクトン改めベントス
パンケーキ~層を重ねる度に増える贖罪(食材)~
17/71

15 フロアボスの顔も三度まで

(前回のあらすじ)

ロス君てぇてぇ…だがアルバンに造られし虚像だと思うと胸が苦しい辛いbyショタコン

 「じゃあ、要領が分かった所でお待ちかねのブツです。」


 アルバンが右手で作った拳を高く上に上げて指をはらりと開くと、1メートルほどの赤紫色の炎が出現した。それと同時にごうっと風が吹いた。


 そう…これがアルバンの「点火魔法」。そう…点(・)火(・)魔法。

 ただ点火するだけの、最もエネルギー消費の少ないとされる初歩的な魔法の一つだ。


 それが、最もエネルギー消費をするとされるブレス攻撃をはるかに超えるエネルギーを放出しているのだ。


 炎が大きくなると同時に強風は暴風となる。


 「うわぁぁ~っ!」

 1匹が飛ばされた。


 「ケイっ!」


 「私ぐらいになれば、反対の手でね?」

 アルバンが左手で炎をちぎるようにして宙を舞うケイ君に投げつけた。光の柱が上がる。


 アルバンいわく、この仕組みは空間に放出したエネルギーの塊を炎と一緒に投げるので、炎を物体のように扱えるらしい。私も前に試してみたけど、2発投げた所で魔力切れになった。


 「ケイっ!」

 ケイ君、絶対オーバーキルされたじゃん。


 「耐えたご褒美に、ルベとロスには一瞬だけ綺麗な色を見せてあげましょう。」


 アルバンの手の中の炎が青くなりそれから白くなった瞬間、ルベ君とロス君の姿が消えた。そしてアルバンの手の中の炎も消えていた。

 代わりに、ルベ君とロス君がいた位置に2本の柱が立っていた。


 「アルバン、頼むからこれ以上の破壊はやめろ。」

 「あれ~、屋敷の屋上にある時計台、壁が溶けていますね~。以前に何かあったんでしょうか?」


 「…あの高さにあってそこから離れているレンガの壁を溶かす事が出来るのはお前ぐらいだ、アルバン。言い逃れは出来んぞ。」


 ケイ君狙う時にジュッていってたのはあれだったのか…。


 「本当にごめんなさい、フォンテさん…」

 そろそろ謝るだけでは済まされなくなってきたぞ。


 「弁償は」

 「いや、構わん。ただこれ以上は本当にやめろよ、アルバン。」

 仏の顔も三度までですよ。


 「大丈夫です、次は拳で語り合いましょう。お嬢様はそこで待機を。」

 「はっ、はい。」


 「兄弟たちよ、アルバンのみ集中で襲うのだ!」

 「はっ!」


 アルバンが中指をクイクイして挑発すると、人狼部隊がフォンテさんとその後ろの数人を残して消えた。次の瞬間には、三方からアルバンに飛び掛かってきていた。

 次々と飛び掛かるわ、直前まで狼の姿で足元から出てきて人の姿を取って殴りかかるわ、恐ろしいほどに連携がとれている動きだ。


 人狼は…魔種族の中でも速さと体力の両立が最も贅沢な種だ。速さでも体力でも上はいるけど、人狼以上のレベルは体が小さすぎたり大きすぎたりしてもう片方の要素を捨てているに等しい。


 つまり人狼ほど肉弾戦に向いている種族はいないのだ。

 代わりに人狼は魔力量が少ないという弱点がある。魔種族には欠かせないはずの従属のテイムにすら魔力を割く事のできない個体が大半なのだ。


 だからフォンテさん達がケルベロスにブレスなどの魔攻撃という未知の領域を指導するのは困難を極める。フォンテさんがアルバンに頭を下げてまで手本を見せてほしいと言ったのも、魔攻撃の師で適任がいなかったからという背景があるのだろう。


 ダンジョン内の魔攻撃が出来るキャストに聞く手もあるんだろうけど、基本的に冒険者もダンジョンキャスト内でも魔道に通じる存在は物理攻撃に特化した存在を蔑む傾向がある。だから頼みにくかったというか、厳しい条件を突き付けられたか相手にされなかったんだろう。


 ともかく、その肉弾戦特化の人狼だからこそ、フォンテさん達はこれまで来た冒険者たちが魔法を使う前に速さや部隊の連携した動きで圧倒するという戦い方をしてきたのだろう。


 防御に回るより攻撃をして1体でも早く削るのが正攻法のはずだ。

 弱点が明確なものの、この部隊を突破できるだけの攻撃力と耐久力は高度なものを要求される…まさにこのダンジョンの第1層を守るのに攻略が難し過ぎず安易にはならず、適役だろう。


 丸腰である彼らは甘いように見えるが、これだけの人数でしかも息ぴったりに統率された人狼部隊を前に「かかってこい」と「丸腰で」言えるような冒険者はほぼいないだろう。


 レイド戦じゃない限りは10人を超えるパーティーなんて無いので、全員格闘系のメンバーで固めてあっても、この部隊を相手にするには少なすぎる。だからここを突破する冒険者たちは飛び道具や魔導・魔法・魔術または使役下にある生物を使ってきたのだろう。


 しかし…この丸腰の男は例外だ。


 「甘いですね。」


 アルバンはそう言って人狼を超えるスピードで捌いていく。


 どんどん光の柱に消えていったとき、フォンテさんの後ろの数人が出て来て一斉に攻撃した。さっきの人達よりずっと速い。

 1人消えた所で、フォンテさんが出て来た。


 「俺が兄弟たちと同時に心置きなく戦える相手は久しぶりだ!もっとも、丸腰でしかも1人なのは初めてだが!」

 そう言ってフォンテさんが吠えると他の人狼たちの動きがさらに鋭くなった。


 群れ全体に狂暴化するバフをかける…狼でいう所のリーダー格いわゆるαにあたる人狼「頭」だけが使える技だ。


 「私は手加減しなきゃいけないのでしょう?」

 「すまない、これ以上の破壊は本当に困る。俺だけじゃ止められん。」

 アルバン、クレームつけないの。フォンテさんだけシラフに戻っちゃったじゃん。


 数十秒ほどお互いに楽しむようにアルバンと人狼の人達は戦っていた。それからだんだんフォンテさん側が削れてきてもう残すところフォンテさんとアルバンだけになった。フォンテさんは少し息を切らしていて、アルバンはまだ余裕そうだ。


 「はあっ、はあっ…とんでもない化け物だな、アルバンは。」

 フォンテさんは苦しそうだけど心から楽しそうに笑った。


 「先代の協力もあったとは言えケルベロスをあれだけ鍛えられるのも、あれだけの部隊を統率出来るのも、フォンテぐらいじゃないですかねぇ…私はフォンテを一般人からしたら化け物だと誇って良いと思いますよ?」


 「一般人からしたら化け物、か…今まで言われたどの誉め言葉より嬉しいかもしれん。」


 「強い者は驕ります。フォンテも人狼の中ではαとして元々ステータスが高い個体だったのでしょうが、今の状態になるためには驕る時間を全て充てても足りないはず…それ故に私はフォンテをすごいと思いますよ。」


 「…アルバンは驕った時期があってそれなのか?」


 アルバンはフッと笑って私をちらりと見た。

 「驕る時間は確かにありましたが…私はマイナスからのスタートですので努力の程度が激しく短かっただけでしょう。」


 「そうなのか?」

 「人並外れた波乱万丈な生を受けています故。」


 ま、まあ…そうだね。お祖父様の侍従をしていた以前のアルバンの事は知らないけど、お祖父様に拾われたとかいう話を聞いた事があるからワケアリなんだろう。


 お祖父様がいた前勇者パーティーのメンバーの誰かの子供とか?でも、パーティーは…魔導師だったお祖父様を除いて全員が別大陸で殉死してるからあり得ない。お祖父様はあんな感じだから隠し子なんて作るはずもないし、アルバンと容姿が全く似ていないから違うだろう。


 「まあ、お前ぐらい強くて…性格の方が歪んでいたら逆に平凡な生き方をしている事があり得んだろうな。」


 「まあ、何て酷い!お嬢様、聞きました?私の性格が歪んでいる、ですって。」

 フォンテさんの方が正論だと思います。


 「はー…」

 「おっ、お嬢様?!なぜため息を…?」


 「アリス殿に愛想つかされたらお前の周りには人がいなくなるぞ。」

 「あっ、それはないと思います。」


 だってアルバン、外面が良いから。ここ最近は…うん、色々あってやさぐれてるだけだよ。


 「…ほう?」

 「フォンテ、お嬢様をそういう目で見ないでください。品定めする資格はフォンテなどに一生回ってこない相手です故。」

 言い過ぎ。


 「そういうつもりではないんだが…気を悪くしたなら済まないな、アリス殿。」

 「あっ、いえ…」


 「俺だったらいくら強くてもアルバンみたいな部下は即クビをきるんだが、それをしないならアリス殿はとても心が広い方なのだな、という思ったんだ。」


 あっ、もしかしてアルバンに愛想つかさないって事に勘違いされた?…まあでも、私からアルバンを突き放すような事はしないと思うから否定はしないでおこう。


 アルバンが離れたいって言った時は追わないつもりだ。私は弱いから…「行かないで」と口が動かないように唇を噛みしめて、袖を捕まえないように手を握り締めておくつもりだ。


 私はこれから落ちぶれていくだけ、それに彼を強引に付き合わせてしまう事は出来ない。


 「…アリス殿?」

 「えっ、あっ、はい!」


 「お嬢様が物思いにふけっていらっしゃるのを邪魔するとは…まったく、フォンテはつくづく最低な男ですね。」


 「えっ、それはすまなかった…って、そもそもダンジョンは物思いにふける場所じゃないんだが。」

 フォンテさんの言う通りだ。


 「では戦いに戻りましょうか。」

 「ああ。死亡フラグが立つ前に少し。」


 フラグならまだケイ君達がいた時に立てたじゃないですか。


 「…アリス殿、この先の事はよろしく頼んだ。」

 「アルバンを?」

 「その通りだ。」


 フォンテさん以外にもこれやって回るのか。


 「特に第2層からはここみたいに開放的な空間ではなくスペースが限られているから、一つ食らっただけで甚大な被害が出る。」


 「分かりました。」

 アルバンが恭しくお辞儀をする。

 「アルバン、お前が返事をしても信用できん。」

 ばっさり言っちゃったよ。


 「善処します。」

 「ああ…」

 フォンテさんも無理強いはしないつもりなのだろう。


 外面が良いので皆からは「主に従順で理想的な従者(ヴァレット)」だと思われているけど、アルバンは本当に言う事を聞かない。

~アルバンの業~


器物損壊については、ダンジョンダイブ中における敵への攻撃の一環としてみなせるが、必要性についてはいささか疑問点が残る。

しかしフロアボスの意向により、これ以上の破壊行為に至らなければ弁償責任を負わないのでセーフ。


(備考)

フォンテと本格的なBL展開になってはいないので登録必須ワードについて「なろうルール」違反はしていない。

だがアリーシアに引き続きカップリングを匂わせて知名度を稼ごうとする悪質行為につき記す。

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