お仕立て モンゴメリーカラーのジャケット 10
自分の体が転がされたあとに、右足に何かがぶつかった。
あまりの衝撃に息が止まりそうだ。奥歯を噛みしめ、私は衝撃のあとにじわじわ広がる痛みに耐えた。
風の塊は一回だけで立て続けには来てないらしい。いつの間にか瞑っていた瞳をあける。眼の前には、先ほどの絢爛たる花景色はなかった。
そこにあるのは、緩やかに散るピンクの花びらに混じる赤いチロチロ光るものと、根本から折れた…いや、消えている木。
花が咲き誇っていたはずの木々は、なくなっていた。
混乱する頭を抱えながらも、痛みを感じる右足…横になった体の上側を見る。
私のスカートが真っ赤だった。スカートだけでなく、床にも血が湛えられて流れようとしている。
「おい!大丈夫か!」
背後から声がしたが、すぐ息を飲む様子がわかった。私の近くまでその声の主は来ると、赤いスカートを手にする。
「…悪い、ちょっと見せてもらうぞ」
「ちょっと…やめてよ…へんたい」
痛みで奥歯を噛み締めながらも、なんとか反抗の意地を示すが、ルシウスさんは構わず私のスカートをめくった。私からは赤い布のしか目に入らない。
何かをしている様子がわかるが、痛みが強すぎて、何をされてるのかまでは分からなかった。
「失血がまずい。急いで安全なところに行こう、幸いマリウスもいるし、大丈夫だ。助かる」
ルシウスさんは私のスカートを戻すと、そう話しかけてきた。
そのまま私を抱き起こすと、体を持ち上げ動き出した。
揺られている間は、なんだかグワングワン頭が鳴り響き、正直一体どんな状態なのかわからなかった。
遠くの方で、沢山の人の声がする。




