お仕立て モンゴメリーカラーのジャケット 9
つぎは順当にフォクツ公爵家にたどり着いた。
ううん、なんだか、街中が騒がしかった。あちらこちらで走る兵士を見かけたのが気になるくらい。
ただ、それだけで、他はいつもと変わらない街の風景が流れていた。
フォクツ公爵家を訪れると、執事さんに手紙を渡した。今はユーディト様も留守らしいが、近くにいるらしく、待つための部屋を案内してくれた。
一階の、花が咲き誇る庭に面するテラスが望める部屋は、陽の光が入り込みとても明るい。
庭には、白い低木の花が垂れるようにあたりを取り囲み、奥の方には高い木々の花が咲いている。
窓が額縁のようになって、見事な白い花とピンクの花があふれる景色が、部屋を彩っていた。
「す、すごい綺麗…」
「この時期だけの特別な眺めになりまして、客人はこちらにお通ししております」
花に見入ってしまった私に後ろから執事さんが声をかけてくれる。
「ぜひテラスにもどうぞ。本日はあいにくの曇天ですが、晴天が見られますとまた格別ですよ」
「じゃあお言葉に甘えて…」
後ろを振り向くと、マリウスさんもルシウスさんもカチコチになりながらカウチに腰掛けている。
脇で執事さんが話しながら、メイドさんが給仕をしてくれていることには…それは確かに一般人は慣れないよね。
訪問を先にしたことがある私は、少し気安さがあるからか、執事さんのお言葉に甘えて、テラスに出た。
風が心地良い。
空を仰ぐと、ピンクの花びらが舞う。
(確かに曇天だから……?)
空が光った。
その光が見えたところに目を凝らすと、雲に穴が開く。
その刹那。
音と同時に突風とは呼ぶないぐらいの空気の硬い塊が私にぶつかり、私の体が飛んだのが分かった。




