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お仕立て モンゴメリーカラーのジャケット

 ユーディト様の採寸を終え、しばらく私は商会に毎日通ってせっせとフォックステールを作っていた。

 フォックステールの型も出来上がった頃、家に帰宅するなりリトが私に迫りながら来た。


「リゼ姉、お帰り!ねえねえ、リゼ姉からもカイさんの説得に協力してくれよ!」

「何々?どうしたの?」


 興奮して近くに玄関は行ったばかりの私は、勢いに押され扉に背中が付いた。思わずその場に裁縫道具を入れたバックを落としてしまう。

 リトの肩に手をのせ、少し押しもどす。


「どうしたの?そんなに慌てて…」

「従軍に協力したいんだ!」


 全く思いもよらない言葉に、手に入れた力が抜けた。思わず固まってしまった頭を動かそうと、首をブンブン振り、何とか言葉を紡ぐ。


「な、なにいってんの!ダメだよ!まだリト小さいからダメだよ!それは私も反対!

 第一なんでそんな話が出てるの!?」


「別に戦地のど真ん中に行きたい訳じゃないけど、先生や一緒に学んでいる子が何人か従軍の後方部隊で料理隊として参加するんだ」


「へ?料理?」

「うん、料理」


 戦場の中で料理…

 思わずハイキングや火起こししての肉を焼いた、ファティマとの旅を思い出した。

 ファティマとの旅では川の近くで焚き火を焚いたっけ。

 でも戦場だよね!?

 川辺の焚き火の近くで戦いが繰り広げられる様子がありありと想像できる。…魔女との夢の場面みたいに。


「ううん!やっぱり危ないところに行かせたくない!それに友達がいるから、自分もなんて…」


「だからだよ。騎士団も行くんだよ?俺一人だけ残っても学べない。行って、後方部隊で友達と学びながら従軍したいんだ!」



 しばらく玄関で騒いでいた私たちは、話が終息する様子もなく…騒ぎを聞いたお姉ちゃんとカイさんが来ると、ぷいっとリトは場から離れていった。

 やがて盛大な音を響かせ、扉がしまった。部屋の中でも物音がしているのが、離れた玄関からも分かる。

 普段のリトとは違う猛々しさに、私は思わず固まったまま。そんな私の裁縫道具をカイさんが持ってくれたので、なんとか、私は舌が動き始めた。


「カイさん、なんか…私と話してもリトと平行線たどってるみたいで…どうしたんですか、」


「ごめんね、リゼ。俺の師匠にあたる人が、候補生にも戦場に行くことを推奨したらしくてね…候補生の従軍はまだ決まってないから…」


 そう謝るカイさんもなんだか覇気がない。それに、話を聞く限りカイさんに非はなさそうだ。


「カイ、でもその口ぶりだとあなたは従軍決まってるのね」


 黙っていたお姉ちゃんがカイさんに声をかける。少しカイさんの肩が動いた気がした。 

 やがて私のバックを持ったまま、カイさんは振り返りお姉ちゃんに声をかける。


「…ああ、魔女が南の方で兵を沢山作り出したみたいでね。…あと数日で国境越えて来る。

 大丈夫、良くあることだから。また少し家を空けるけど…よろしくね」


「南で、兵士…」

 カイさんの言葉で目の前が暗くなり始めた気がした。

 私が見送ったファティマの顔がちらつく。…無事…だよね?

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