お仕立て フォックステール その13
絡み付いた腕のメジャーは光を放った。
あまりの眩しさに目を閉じ、左手を翳す。やがて光が落ち着いて来たので目を開けると…
「お帰り、リゼ」
ランプの薄暗い明かりの中、ユーディト様の顔が上に見えた。
安心して、微睡みたくなる。
「夢…見てたみたいです……。っ!!」
言いかけてから、慌てて私は飛び起きた。さっきの夢の中で、私何してた!?
慌てて寝具の上を手でさすり確かめる。濡れた様子もべちゃっとしたのもない。
「よ、よかった、寝ながら嘔吐とかしてなくて…」
「夢だから安心したまえ。さあ、今度は本当に寝よう。
…と、その前に…」
ユーディト様は、ぽん、っと、私を再びベットに倒した。
「?、え、え、何するんですか?!」
ユーディト様はサイドテーブルの引き出しの中から小瓶を取り出す。
それをユーディト様の手のひらに垂らすと、瓶を傍らに置いた。
ユーディト様が掌を擦り合わせると、擦り合わせる音に混じってピチャピチャと音が混じり、花の香りが立ち込める。
「さあ、目を閉じて…」
とりあえず言われた通り瞳を閉じると、ユーディト様の掌が私の肌を滑る。強い花の香りが鼻孔をくすぐった。
「なんですか、これ…すごい気持ちいいです…」
額を横に滑らせたあと、輪郭の部分を上にマッサージされる…めちゃくちゃ気持ちいいんですけど!
顔が解れるー。
「最近私はフェイシャルエステなるものに嵌まっててな。客人の女性には良くやってるのだ。
だからか、我が家に泊まりたがる女性が多いらしい。クルトが私と過ごせない、とぼやいている」
ユーディト様の話を聞きながら、目を閉じて、顔をマッサージされて…
先程の反動もあったからか、あっという間に私の意識は沈んでいってしまった。
「…おや?寝てしまったか。まあ、寝落ちするご婦人ばかりだからな。終えたら私も寝よう」
目を閉じて、口が半開きのリゼを見て、ユーディトは密やかにクスクス笑うと、暫くしてマッサージを続けていたのであった。




