お仕立て フォックステール その3
注)フォックステールは、おしり部分を特に強調するパニエのような下着のことです。
公爵夫人の水鉄砲から出た水は私のおでこにクリーンヒットして、水が前髪から滴り落ちた。メジャーを持った手のまま、前髪をかき上げる。
構わずぴゅーっと公爵夫人は水鉄砲から水を近くに飛ばしている。
「…なんで水掛けてくるんですか!」
「一緒に入浴をしてついでに採寸って話したぞ」
侍女を見るとぶんぶん首を縦に振っていた。逡巡したときに、侍女の言葉に思い当たり、天井を仰いだ。
「た、確かにそんな話…」
「私はきちんと侍女に話したぞ。なあ?」
「お、お伝えしたつもりですが…」
「公爵夫人と一介のお針子が一緒にお風呂なんて、普通考えません」
「頭固いな、リゼは。まあいい」
公爵夫人は水鉄砲を天井に向けて放った。水は噴水のように空中に線を描くとやがて落ちるときに広がり、バシャッと泡で満たされたバスタブに落ちた。
「お洋服を綺麗にして差し上げてくれ」
「畏まりました」
迫り来る侍女に私は思わず胸元を腕で抱くも、「ごめんなさい」なんて謝りながらなので、次第に私も申し訳なくなってしまい。
「どうしてこうなるのよ…」
結局服を脱ぎ、バスタブに浸かってしまった。
バスタブに浸かると、なにやら花の香りが漂う。なんの香りか、良く嗅ごうと水を掬い上げると、公爵夫人が近くまで来て、バスタブに腕を掛けて顎をのせ私を見てきた。
手には相変わらず水鉄砲が握られたままだ。
「なかなかいいものだろう?来客が女性なら良く一緒に風呂に入るのだよ、私は」
もう一度、公爵夫人は水鉄砲をバスタブに沈め、それからバスタブの外に飛ばす。
しかし出てきたのは水ではなく、石鹸水から生まれた細かいシャボン玉が飛び出すばかり。
思わず飛び出すシャボン玉から公爵夫人に視線を移すと、公爵夫人は耳に髪を掛けた。先端が尖った耳が露になる。
「私は水があった方が色々やり易い質だからな。水と相性がよいのさ」




