お仕立て バックの補修 11
「お待たせしましたー!あ、あぁぁぁ!」
勢い良く降りてきた女の子は、着くや否や
「…クルト様……」
顔を赤くし、顔を手にした箱で隠しながら小さく唱えた。あまりの声の大きさに私も背の高い男性も、女の子に注目してしまう。
彼女は私の胸ぐらいまでの身長の小柄な子で、もしかしたらリトくらいの年かな?
考えている矢先、女の子が手にした箱がバキッっと端が割れる音がした。…箱、木製っぽいけど?
「ちょっと、ニア、商売道具さないでくれる?」
私の隣にいた背の高い男性が声をかけ、女の子から箱を取り上げる。
「ヴォルフラム、ごめんなさい!」
男性が背が高いから、比較するとまた小さく見えてしまう。女の子は長い銀髪をひとつの三つ編みにしており、その上からヘアバンドをしている。
「ニアは少し落ち着きなさい。
さて、針とは聞いていたから、あらかじめ用意しておいたが…実際に何用が必要だい?」
婦人が声をかけてくれたので、私は男性が持つ箱を覗き込む。整然と並べられた針が入った私の小指ほどのケースが敷き詰められていて、ひとつを手に取った。
コルクで蓋をされた透明なケースに店内灯の光があたる。中に封入されているのは少し長めな針、刺繍糸だ。
「お針子だとは聞いているから、ある程度種類が必要だと思うから、取り急ぎ必要なものを選んだらいい」
「ありがとうございます。そうさせてもらいます」
男性がカウンターに針を置いてくれたので、そこからケースを持ち上げて中身を確認する。
「あの!こっちが細くて、こちらにいくにつれてどんどん太くなるように並べてます!
針の長さも同じように、こっちがちびで、こっちに向けてのっぽになります」
覗き込む私に女の子が背伸びしながら説明してくれる。伸び上がってちょっとふるふる震えているのがなんだかかわいい。
「あ、なるほど!そう並んでるんだね。
今は綿のシーチングで作っていて、このあと革製品の刺繍をしたくて…」
「革だと、ちょっと違う箱にあるので持ってきます!」
「ニア、お客様の前だよ、静かに!」
走り出そうとした女の子は、ご婦人にぴしゃっと叱られて、肩を竦めながらそろそろ2階に戻っていった。
「そういえば、クルト。この子うちの仕事頼めたりしない?」
ヴォルフラムがクルトに話しかける。
「カイの義妹だと言ってるだろう。カイに聞け」
「こないだお針子一人辞めちゃって、あんたの奥方のドレスの仕立てに遅れが出てるのよね。奥方のドレス、毎回結構大変だし?
一肌脱いでくれると助かるんだけど?」
クルトは頭に手を当てると、深く息をついた。
「…わかった、頼んでみよう。
あと、頼むからヴォルフラムはあまりコストの掛かるドレスをユーディトに奨めないでくれ。ただでさえもお前のデザイン費は費用が掛かる。」




