お仕立て パフスリーブのドレス その1
途中町にたどり着けず野宿をした日を含めて3日目、私たちは王都の見える位置まで着いた。
王都は小高い山の上、お椀をひっくり返した高台に当たる部分に王宮があり、その裾野に街が広がる。裾野は緩急ついた坂が巡らされて、いくつかは模様の溝のように高台まで引かれていた。
その上で目を引くのは、街の上に光の幕があることだ。このオーロラは王都を守るために魔法で作られていると、この国に住む人なら誰でも知っていることだった。
「今まで通ってきたどの街よりも大きいと言うか、インパクトがあるね」
リトの言葉に思わず頷いた。
大きさ、人、建物、美しさ。どれを取っても来るときまでに見た街よりも、村から出てきた私たちにとっては圧巻だった。
大きさだけなら途中立ち寄った港近くの街も大きかったが、平面な分王都のような圧迫感を感じなかった。
それになんと言っても天から下がる光のカーテンが、港の街とは一線を画している。
「山に築かれた王宮なんてあまりありませんから。それに街を守るように障壁が展開されているので、旅をしている者からしても、グランネクルゥと並んで名城とされています」
ファティマが少し進んだところで、私たちに振り返りながら答える。
私とリトは止まってしまっていた歩を進めた。
「ねえファティマ、グランネクルゥってどこ?」
この旅で何度も見知らぬ土地の名前が出る度に、私とリトはファティマに尋ねていた。
「グランネクルゥは海を渡った大陸にあります。気候はこの国とはあまり変わらず温暖で、住み良い街のようでした」
「どんなところが名城なの?やっぱり王都みたいにキレイ?」
「グランネクルゥは水の都、と呼ぶにふさわしい街ですね。
水路が道の代わりになり、船で移動します。水も清んでいて、手入れの行き届いている街でした。
水路以外ですと橋が多く、各地区を治める諸侯が橋の意匠を競い合うらしく、細工が見事な橋が多かったです」
すっかりファティマに親しんでしまったんだけど…ファティマとの契約は王都までだから、ここで別れることになると思うと、名残惜しくて会話の花を咲かせながら私たちは王都の門へと続く道へと足を進めていった。




