お仕立て パフスリーブのドレス その2
王都ツィトブルグの門からなかにはいると、夕刻の街にはいい香りが溢れていた。
お肉の焼ける匂い、コンソメの香り、魚とトマトを焼いた潮の香、近くでは貝を焼いていて、パカッと貝殻が開いていく様子が繰り広げられられている。
店には売り子がおり、片手に商売道具を持ちながら道行く人に商品を勧めたり、団扇片手に焼いているいい匂いでお客を集める店もあり、道は人がごった返しながら、行き来していた。
辺りに見とれていたら、ドンッと押された。押されたその拍子に私の髪留めがなにかとぶつかり、宙を舞った。
「あっ!」
目の端を飛んでいく銀の髪止めに気を取られ、手を伸ばしたが人混みの中に落ちていく。
「待ちなさい!」
ファティマの鋭い声が響いた。あまりにもよく通った声に辺りのざわめきが止まり、ファティマに視線が集まる。
耳の近くで舌打ちが聞こえたと思った刹那、私の肩が軽くなった。
同時にファティマが体勢を低くし、走り出した。
「え?えっ?」
「リゼ姉、スリだ!すられたんだよ!」
少し離れたところにいたリトが大きい声で騒ぎながら近づいてきた。
「…ああああ!私のバック!針にお金にサラからの紹介状!
あとカイさんの家の住所…」
思わずへたり込みそうになったが、なんとか踏みとどまり、ファティマのあとを追いかけて駆け出した。
「リゼ姉!」
リトの制止も耳に入らないほど、私はパニックになっていたのだ、この時。
普段ほとんどの運動なんかしないのに、走り出した私は最初はファティマとその前を走る人の姿が視界に入っていた。
だけどもすぐに足が回らなくなり、息が上がり始めたと思ったところで前にいく人が大通りから一本左道に入るところまでを目に追ったところで、ファティマの姿も追えなくなってしまった。




