閑話休題 王都への旅 2
「そういえば、ファティマの国って南の方なんだよね。だから、民族衣装も薄手の生地なのかな?」
リトが私が気にした服について、言葉を挟む。
「ジルニは暑い国です。私自身もかなり暑がりなので…ヴェリエでもこの格好のままでしたから、地元の方に驚かれました」
ヴェリエって海凍る?そこでもこの格好?
ファティマの薄手の上着は袖はない。
想像したら私の方が寒くなって思わずブルッと身震いしてしまったけど、ファティマは確かにすごく鍛えてありそうな体をしているから、あまり寒くなかったのかも…
シャリシャリ、と音をたてながら3人で道を進む。街道は石畳が敷かれるほど整備はされてないけど細かい砂利が敷かれている。
歩く人が多いからか、草は端に生い茂っているだけだった。
しばらく進むとファティマは手を私たちの前に片手を伸ばした。どうも止まれのジェスチャーのようだ。
時折強い風が吹くものの、好天候な空の下、回りには誰かいる様子はない。
突然の事にビックリして、思わず私はリトにくっついた。
砂利の音が足が擦れたぶんだけした。
何かあったらすぐ対処しないと、と思うと、握った手が汗で濡れる。
ファティマは砂利道を全く音もならさずに、背の高さくらいまで育った草むらに近づいていくと、しゃがんで静かに弓を下ろして構える。
小さくギリッギリッと弦が引かれる音がする。
不意に少し強い風が吹き、草むらの葉を撫でる。
草が動くのに合わせ、ひゅんっと音が鳴り矢が放たれる。
とたんにガサガサっ!と草むらが揺れた。
私は思わずリトの服をつかむ。足は動けないのに…
ファティマは素早く弓を下ろし、ブーツにつけていたナイフを取り出すと草むらに入って行った。やがてあまり時間も経たずに出てくると、ファティマの手には動くものがいた。
ふさふさの茶色い毛皮でおおわれた…うさぎ?
血を流しているのが見える。うさぎの足を捕まえてファティマがひょいっと街道に戻ってきた。
うさぎは逆さ釣り状態でバタバタともがいている。
「良かった、生け捕りにできました。まだ生きていますし、あとでお昼ご飯の時に捌きましょう。
もう少し進むと川に出ますから、血抜きはそこでできますし、火を起こせば食事できますよ」
「す、すごいファティマ!」
なるほど、昼食はファティマがなにも要らない、って話していたのはこういうことだったのね。
何せ私たちの旅の格好、私とリトが持つ服とか入った荷物だけで、ファティマなんて弓と矢とナイフ、それと小さなバックしかないんですから。




