お仕立て セレモニードレス その4
町までの馬車の中、お母さんはずっと泣きそうな顔をしていた。
抱っこされた赤ちゃんは、時折ぐずったように声を上げるが、ふにゃふにゃ、と声に元気がなさそうだった。
すぐ眠ってしまう。
ぽつぽつお母さんが話す内容では、私と会った翌日からミルクの飲みが悪くなり、ついには飲まずに寝てしまうとのこと。
赤ちゃんはミルクしか飲まず、小さいから量もあまり飲めないので、脱水状態を起こしているかもしれないとの話だった。
馬車の中はまだガタガタしていて、私は気持ち悪いままだったけど、あんまりにも暗い雰囲気でサラと軽口を叩ける状態ではなかった。
サラの家に仕えるお兄さんだけが、まちのお医者さんだと何軒か心当たりがあるみたいで、場所や医術の腕を紹介してくれていた。
サラは私が渡したハンカチを膝に掛け、何か考えている。
走行している間に、馬車は町についた。馬車を停めておくところに馬車を停める。
馬車を降りるが、ガタガタした道をずーっと来たので、くらくらする…
座り込んでいる私の脇をひょいっと、サラが降りてくる。
サラは平気そうだ。ひらりと身軽に馬車から降りてる。羨ましい。
「ジェフ、あんた赤ちゃんを医者に連れてく手伝いしてきな。赤ちゃんだとマリウスの旦那の所の方が適切かもしれない。
買い物は知り合いの商家もあるし、私が進めとくよ」
「分かりました」
サラはお兄さんになにやら包みを渡す。
「あと、あそこなら少し休ませてもらえるくらいでかい病院だから、お母さんの方も休息とらせてもらうよう、交渉頼んだよ。
帰りもうちで馬車の面倒見るけど、買い物ついでになると思うから、数日居させて貰うようにしといて」
サラはこういうところ、すごいと思うし良く考えられるな、と惚れ惚れしてみてしまう。
お母さんは赤ちゃんを抱っこして、何度もお礼を言いながら、お兄さんと町の中に消えていった。
ひらひらサラは手を振り見送ると、まだ吐き気でぐるぐるしてる私の頭にハンカチを乗せる。
ひんやりした。
そして、吐き気でお腹の辺りがもやもやしていたのが、何か変化した気がした。
「リゼ、この刺繍、大至急縫ってくれる?
こっちのお姉さんのドレスになかった方の刺繍でね」




