精霊
お待たせいたしました。長い間お待たせしてすいません。
『俺、動物や魔物と話せるんです』書籍化します!
ペガサスと泉で別れた俺は、フェリスに付き添われて道を歩いていた。
フィアは帰り道が違うので別れている。
「ペガサスは気難しい動物なのに、よくあそこまで仲良くなれたわね」
先を歩くフェリスが何気なく呟く。ヤックと戯れながらもこちらを見ていたらしい。
「まあ、癖があるけど話せばいいやつだから」
口は悪かったけど、今度お礼に背中に乗せてくれるって言っていたしな。
帰りはフェリスの案内なので、ヤックが行きに案内してくれた獣道のような道とは違う。
道も大きく開けており、通常はこちらを通るようだ。
「おい、こっちの方が歩きやすいじゃないか」
『俺が案内した道の方がバレな……近道なんだよ』
俺が小声で肩に乗るヤックに話しかけると、なかなかゲスい答えが返ってきた。
道理で最後に茂みがあったわけだよ。
まったく、ごちそうさまです。
道を進んでいると、先程の泉よりも小さな川があった。
長老が指した水場はこっちだったのだろうな。こっちの方が家から近いようだし。
長老の家へと戻った俺は朝食をすまし、近くの川で身体を洗ってから集落を歩いていた。
フェリスは案内役兼、見張り役なのだろうけどヤックへと向ける視線を見れば、こっちがメインじゃないのだろうかと思わなくもない。お陰でヤックはフェリスを恐れて反対側の左肩に乗っている。
一泊したんだから帰れ、とか言われるんじゃないかと思っていたが、そんな事は言われることもなかった。
寿命三百年以上と言われるエルフからすると、一日ぐらいどうってことはないのかもしれない。一ヶ月、一年してからそろそろ帰るかとか言われそうだ。
まあ、さっさと帰れとか言われないのならそっちの方が断然いい。
人間とは違ったエルフの生活にこっちは興味深々だ。
何せ木をそのまま使って住んでいる家なのだ。俺達が住む家とは全く異なる。
自然そのものと一体化したようなこの集落には、それぞれの家を繋ぐようにして木でできた梯子や板をかけている。橋が多く広がっている様は、この集落そのものが巨大なアスレチックのようである。
ロープで吊ったりしているせいか歩くと多少揺れるが、それがまた浮遊感があって面白い。
この空中に架けられた橋を渡るだけで楽しいのだ。
ちょっと童心の気持ちに帰った気分だ。
「ただ橋を渡っているだけなのに楽しいの?」
隣を歩くフェリスが首を傾げる。どうやら笑っている俺を疑問に思ったらしい。
『だよなあ。ジェドってばさっきからニヤニヤして気持ち悪いんだよ』
フェリスの言葉を聞いて、失礼なこと言うヤックのヒゲを左手で引っ張ってやる。『ああ! 痛い!? 痛い!?』とか叫ぶが気にしない。
フェリスを恐れて左側の肩に乗っているのが仇になったな。
「楽しいよ。俺達人間は木をそのまま使って住んだりはしないし、こんな風に木と木を橋で繋いで移動したりしないから」
「そうなの? じゃあどんな家なの?」
おや、フェリスから質問をしてくれるとは嬉しいじゃないか。
多少は外の世界や人間に興味はあるらしい。
「えっと、木を切って繋ぎ合わせたり、レンガっていうのを積み上げたり様々だよ。勿論、皆地面に建てているよ」
「レンガっていうのはよくわからないけど、木を切って加工したりするのはわかるわ。人間って器用なのね」
そんな風にお互いの事を話したりしながら、俺達は進んでいく。
途中でエルフの人とすれ違ったけど、軽く挨拶をすると皆答えてくれた。俺という人間がこの集落に来ているという情報はきちんと回っているようだ。
遠くからでも人間である俺を観察したりする人もいるし。
まあ、多くのエルフは俺の肩に乗っているヤックに注目するみたいだけど。
子供や女性だけでなく、男性もヤックに触れようとしていた。
その度に本人は嫌がっていたが、最終的に諦めたのかなされるがままになっていた。
現在は疲れ切って俺の頭上でグデーっとしている。
その隙にフェリスがそーっと指を伸ばして、突いたりしている感じだ。
大層幸せそうにしているので、俺は放置する。
エルフの人々の生活を見ると、家で縫物をしたり、皮をなめしたり、料理をしていたりと基本は人間の生活と変わらない。
ただ、火を起こしたり水を出したりするのに、子供から大人までの誰もが精霊から力を借りて行使しているのは凄いと思った。
精霊の力を操ることができるエルフらしい生活だ。
「エルフは誰でも精霊の力を使うことができるのかい?」
精霊について問いかけると、フェリスはヤックを突く手を止める。
「そうね、魔力を流すことができれば、火を起こしたり水を出すくらいの簡単な事ならできるわ」
「えっ!? じゃあエルフは全属性の魔法を使うことができるの?」
精霊魔法を自在に操るとか本に載っていたけど、強すぎじゃないですか。
人間は普通の農民が火も水も風もといった感じに魔法を使う事は無理だ。
ましてや小さな子供が魔法を使うだなんて不可能に近い。
魔法言語による魔法は、誰かに師事しながら何年も訓練を重ねなければ、初級魔法すら発動できないのだ。
普通の平民や農民がそんな時間とお金があるはずもないのだ。
あるとすれば引退した魔法使いや冒険者が村に住んでおり、才能ある子供に教えてもらっていたくらいだろう。
あとは商人の息子や俺のように貴族出身の者だ。
「あなたの言う、全属性がどれを現すのか知らないけど、火、水、風、土、闇、光、それぞれの精霊の力を使えるかはその人次第ね。時間や場所、それぞれ精霊の格や性格、相性によるものだから。さっきの闇精霊とかすぐに力を貸してくれなかったでしょ?」
確かに、あの様子では毎回安定した力を使うのは難しいのかもしれない。
それぞれの精霊の特徴をフェリスから聞いてみると、大体このような感じらしい。
『火精霊』結構どこにでもいるが、森には余り存在しない。攻撃的で気が強いのが特徴。火山の近く、鍛冶場が多いところを好んだりする。
『水精霊』綺麗な水がある場所を好む。森や川の傍に多く存在する。マイペースな性格。
『風精霊』空気の綺麗な場所に存在。気ままな性格な物が多く、一定の場所に存在する事は稀。綺麗な空気をした森や街によくいる。悪戯好き。
『土精霊』土があればどこにでもいる。しかし、土が死んだ土地にはいなくなってしまい、見放された土地となる。落ち着いた性格をしており、精霊の中で一番言う事を聞いてくれる。
『闇精霊』 夜になると多く現れる精霊。根暗だったり、性格が曲がっていたりと曲者が多く、扱いづらいと言われている精霊。太陽が出ている昼間にはあまり出没しない。日の当たる場所などは嫌がる。影などに地味にいたりする。
『光精霊』昼によく現れ、夜になると姿を隠す。闇精霊とは真逆の性質。影を嫌い、光を好む。明るい場所が好きで、性格は自由奔放なものが多い。
うわー、フェリスと闇精霊って性格的に合わなさそうだな。太陽が苦手だから渋っていたっていうのもあるようだけれど。
「いつでも安定して力を使えるとは限らないのよね。他の属性を使ったら拗ねる子もいるし。精霊と会話ができたら苦労しないのに……」
やれやれと言った感じでため息を吐くフェリス。
俺には聞こえるんですけどね。
「そういえば、さっきから気になってたんだけれど、たまにエルフ達の傍にいる光は精霊だよね?」
下を見れば、子供達が楽しそうに話しており、その肩や手に寄り添うように赤や青の光が漂っていた。
「精霊は気に入った相手に付いて行ったりするのよ。一人の者にずっと寄り添ったりするのも珍しくないわ。私にもいるわよ。……来て、風の精霊」
『呼んだー?』
フェリスが右手を差し出し、そっと呟くと、手の平から翡翠色の光が現れる。
間違いない。泉で俺を吹き飛ばした精霊達の片割れだろう。声に聞き覚えがある。
「こんな感じにね。精霊に気に入られたら、その属性の魔法が使いやすかったり、魔力を分け与える量が少なく済んだりするわ。ありがとう。もういいわ」
『呼んだだけなのー? つまんなーい』
フェリスが一言かけると精霊は虚空へと消える。普段からフェリスの近くを気まぐれに漂っているんだな。
「へー、なるほど」
人間の魔法属性の適性とは違って面白いものだ。
「ねえ、フェリス」
「何よ?」
「そろそろ名前で呼んで欲しいな」
「……わかったわよ。ジェド」
おお! フェリスが初めて名前を呼んでくれたぞ。何だか嬉しいな。
会話することでフェリスとの距離を詰められたようだ。
詳しい情報は活動報告にてご覧ください。
新作、『俺はデュラハン。首を探している』の方もよろしくお願いいたします! よければ一読してみてください。
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