第33話「帰還と新たな依頼」
前回のあらすじ
東の山脈の遺跡でゴーレムを倒したアキラたち。制御の石板を手に入れ、力のコントロールができるようになった。だが、クロウから影の組織の警告を受け、アキラを狙う陰謀が動き出していることを知る――
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「ただいまー!」
アキラが王都の門をくぐると、見慣れた街並みが広がっていた。
「三日ぶりの王都だな」
ガルドが腕を伸ばしながら言う。
「たった三日なのに、なんか懐かしい感じがする」
エリンが嬉しそうに周りを見回している。
「それだけ濃い三日間だったってことよ」
リーナが疲れた様子で肩を回した。
「ゴーレム倒して、遺跡探検して、クロウさんに会って……確かに濃かったな!」
アキラが楽しそうに振り返る。
「あんたが一番楽しんでたでしょうが」
「だって面白かったじゃん!」
「……まあ、否定はしないけど」
リーナが小さく笑った。
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ギルドの扉を開けると、いつもの喧騒が迎えてくれた。
「おお、アキラたちじゃねえか!」
「東の山脈から帰ってきたのか?」
冒険者たちが声をかけてくる。
「ただいま戻りました!」
アキラが元気に手を振る。
受付嬢のミラが笑顔で迎えた。
「お帰りなさい、アキラさん。依頼の報告ですね?」
「はい! 無事に完了しました!」
「セレスティア様からすでに連絡をいただいています。お疲れ様でした」
ミラが書類を確認しながら言った。
「報酬の金貨50枚は、すでにセレスティア様からお受け取りになったとのことですので、こちらでの手続きは完了です」
「ありがとうございます!」
その時、二階からセリアの声が響いた。
「アキラ、ちょっと来なさい」
「あ、ギルドマスター!」
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二階のギルドマスター室に入ると、セリアが腕を組んで立っていた。
「お帰り。東の山脈、無事に終わったようね」
「はい! ゴーレムも倒しましたし、遺跡も調査できました!」
アキラが胸を張る。
「……で、レベルは?」
「867になりました! また5下がって強くなりました!」
「だから下がったら弱くなってるって何度言えば……」
リーナが頭を抱える。
セリアが深くため息をついた。
「レベル867……もう普通のBランク冒険者より強いわよ」
「え、そうなんですか?」
「Bランクの平均レベルは80前後。あんたのステータスは867,000よ? 規格外もいいところだわ」
「へー、そうなんだ!」
アキラが嬉しそうに笑う。
「喜ぶところじゃないでしょ……」
リーナのツッコミが入る。
セリアが真面目な顔になった。
「それで、一つ相談なんだけど」
「相談?」
「あんた、そろそろBランク昇格試験を受けてみない?」
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「Bランク昇格試験!?」
アキラが目を輝かせる。
「ちょ、ちょっと待ってください! アキラはまだCランクになったばかりですよ!?」
リーナが慌てて言う。
「確かにそうなんだけど……」
セリアが腕を組んだ。
「アキラの実力は明らかにCランクを超えてる。このままCランクの依頼を受け続けるのは、逆に危険なのよ」
「危険?」
「Cランクの依頼は、想定されるモンスターのレベルが50以下。でも、アキラはレベル867のステータスを持ってる」
セリアが説明を続ける。
「つまり、アキラにとっては楽すぎる依頼ばかり。それだと経験値が偏って……」
「レベルが下がらない!」
アキラが嬉しそうに言った。
「だから下がったらダメなんだって!」
リーナが叫ぶ。
ガルドが苦笑いした。
「まあ、確かにアキラの実力ならBランクでも問題ないだろうな」
「エリンもアキラさんならできると思います!」
「ありがとう、エリン!」
セリアが書類を取り出した。
「Bランク昇格試験は来週の予定よ。内容は実技試験と筆記試験」
「筆記試験……」
アキラの顔が曇る。
「あんた、依頼書も読まないのに筆記試験大丈夫?」
リーナが呆れた顔で言った。
「う……頑張ります……」
「全然頼りにならない返事ね」
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「それで、昇格試験までの間なんだけど」
セリアが別の書類を取り出した。
「ちょうどいい依頼が来てるわ」
「どんな依頼ですか?」
リーナが前に出る。
「北の森の調査依頼。最近、森の奥で妙な光が目撃されてるらしいの」
「妙な光?」
「ええ。魔力反応も通常より高い。何か起きてる可能性があるわ」
セリアが地図を広げた。
「報酬は金貨30枚。ただし、危険を感じたらすぐに撤退すること」
「了解です!」
アキラが元気に返事をする。
「ちょっと待って、アキラ」
リーナが依頼書を手に取った。
「これ、Bランク相当の難易度じゃない……」
「だからちょうどいいのよ。昇格試験前の実力確認にもなるわ」
セリアが腕を組む。
「それに……」
「それに?」
「その森で、最近シャドウビーストの目撃情報もあるの」
空気が一瞬、張り詰めた。
「シャドウビースト……!」
ガルドが険しい顔になる。
「ああ。だから、もし遭遇したら無理に戦わず撤退してちょうだい」
「わかりました」
リーナが真剣な表情で頷く。
「よっしゃ! 新しい冒険だ!」
アキラが拳を握る。
「あんた、シャドウビーストの怖さわかってる?」
「大丈夫大丈夫! みんなで協力すれば何とかなるって!」
「その楽観主義、たまには見習いたいわ……」
リーナが肩を落とした。
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ギルドを出た後、アキラたちは宿に戻って準備を始めた。
「北の森か……装備の確認しとかないとな」
ガルドが剣を磨きながら言う。
「エリンも魔法の練習、もう少ししておきます」
「偉いわね、エリン」
リーナが優しく頭を撫でた。
アキラは制御の石板を眺めていた。
「この石板、本当に便利だな」
以前なら木剣を握っただけで折れていたが、今は普通に持てるようになっている。
「力の制御ができるようになったのは大きいわね」
リーナが言った。
「でも、まだ完璧じゃないから油断しないでよ」
「わかってる! ……多分」
「多分って何よ!」
その時、通信石が光った。
「お、誰だろう?」
アキラが通信石を取り出す。
『やあ、アキラ君』
「クロウさん!」
クロウの声が聞こえてきた。
『北の森に行くと聞いたよ』
「え、なんで知ってるんですか?」
『情報屋だからね。それで、一つ忠告を』
クロウの声が真剣になる。
『北の森の光……あれは自然現象じゃない。何者かが意図的に起こしてる』
「意図的に……?」
『おそらく影の組織の仕業だ。気をつけて』
「わかりました!」
通信が切れた。
リーナが不安そうな顔をする。
「影の組織……また出てきたわね」
「でも、だからこそ調査しないとだろ?」
ガルドが言った。
「放っておいたら、もっと危険なことになるかもしれない」
「ガルドさんの言う通りです!」
エリンが頷く。
「よっしゃ! じゃあ明日、北の森に出発だ!」
アキラが拳を突き上げた。
「何が待ってるかわからないけど……」
リーナが覚悟を決めた表情になる。
「みんなで乗り越えましょう」
「おう!」
四人は拳を合わせた。
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宿の部屋で、アキラは一人考えていた。
(影の組織……クロウさんの話だと、俺のことを狙ってるらしい)
制御の石板を見つめる。
(この石板があれば、力の制御はできる。でも、それだけで足りるのかな……)
窓の外を見ると、満月が輝いていた。
(まあ、考えても仕方ない! いつも通り、全力でぶつかるだけだ!)
アキラが笑顔になった瞬間――
ドンッ!
突然、部屋のドアが開いた。
「アキラ! 大変よ!」
リーナが慌てて飛び込んでくる。
「どうした!?」
「ギルドから緊急連絡! 北の森で冒険者パーティーが襲われたって!」
「え!?」
「しかも、襲ったのは……シャドウビーストだって!」
アキラの表情が引き締まる。
「……明日じゃなくて、今から行くぞ」
「え、今から!?」
「冒険者が襲われてるんだろ? じっとしてられるか!」
アキラが立ち上がる。
「ちょ、ちょっと! 準備が……」
「準備なんかいいから! 行くぞ、リーナ!」
「もう、無茶苦茶なんだから!」
リーナが叫びながらも、杖を掴んで立ち上がった。
廊下でガルドとエリンも準備を始めている。
「聞こえてたぜ、アキラ」
「俺たちも行く」
「ありがとう、みんな!」
四人は夜の王都を駆け出した。
北の森へ――
シャドウビーストが待つ、危険な戦場へ。
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## 次回予告
「北の森で何が起きている? シャドウビーストの脅威、そして影の組織の陰謀が動き出す! アキラたちは襲われた冒険者を救えるのか!? 次回、第34話『闇の森の真実』――レベルを下げて、突き進め!」
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## アキラの現在ステータス
**名前**: 桜井アキラ
**年齢**: 17歳
**レベル**: 867
**ギルドランク**: Cランク(Bランク昇格試験予定)
**ステータス**:
- HP: 867,000
- MP: 867,000
- 攻撃力: 867,000
- 防御力: 867,000
- 魔力: 867,000
- 敏捷性: 867,000
**スキル**: 全スキルLvMAX
**所持金**: 金貨132枚、銀貨20枚
**所持アイテム**:
- 謎の水晶(逆転者の証)
- セレスティアの祖父の日記(写し)
- 通信石
- 木剣×47本
- 制御の石板




