第30話「休息と再出発」
前回のあらすじ
封印の遺跡で古代の魔物と遭遇したアキラたち。影の組織の企みにより封印が解かれるが、クロウの助けで何とか逃げ延びる。試練はすでに始まっていた――
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## 第30話「休息と再出発」
王都に戻った翌日。
俺たちはギルドで、セリアに報告していた。
「……封印が解けかけた、か」
セリアが眉をひそめる。
「ええ。クロウさんが再封印してくれましたが……完全ではないそうです」
リーナが答える。
「厄介だな。セレスティアには、俺から伝えておく」
セリアがため息をつく。
「お前たちは、しばらく休め」
「え?」
俺が驚くと、セリアが続けた。
「Aランクダンジョン攻略から連日の依頼だ。疲労が溜まっているだろう」
「いや、俺は全然平気ですよ!」
「お前は平気でも、他のメンバーが平気とは限らん」
セリアがリーナとエリンを見る。
確かに、二人とも少し疲れた顔をしている。
「そうね……少し休みたいかも」
リーナが小さく言った。
「じゃあ、三日間休暇だ。その間は依頼を受けるな」
「了解しました」
ガルドが頷いた。
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ギルドを出ると、リーナが伸びをした。
「ふあ……久しぶりの休みだわ」
「そんなに疲れてたのか?」
俺が聞くと、リーナが苦笑する。
「あなたと一緒にいると、気が休まらないのよ」
「ひどい!」
エリンがクスクス笑っている。
「でも、お休みって何するんですか?」
「そうね……」
リーナが考える。
「エリン、あなた街を観光したことある?」
「いえ、まだ全然……」
「じゃあ、一緒に回りましょう! 女の子同士で!」
「本当ですか!?」
エリンが目を輝かせる。
「ええ! 可愛い服とか、美味しいお菓子とか、色々見に行きましょう!」
「わーい!」
二人が盛り上がっている。
「俺たちは?」
ガルドが聞くと、リーナが冷たく言った。
「男子は別行動」
「即答かよ!」
俺がツッコむ。
「だって、あなたたちがいると服とか選べないもの」
「それ、どういう意味……」
「特に意味はないわ」
リーナがニコリと笑う。
怖い。
「じゃあ、アキラとガルドは男同士で楽しんでね」
「はーい……」
俺とガルドは、二人に見送られた。
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**【リーナとエリンの休息】**
「さあ、まずは服を見に行きましょう!」
リーナがエリンの手を引く。
「はい!」
二人は、街の中心部にある服屋に入った。
「うわあ……綺麗な服がいっぱい……」
エリンが目を輝かせる。
「エリン、これとか似合いそう」
リーナが青いワンピースを持ってくる。
「え、でも……高そう……」
「大丈夫! 今回の依頼の報酬、まだもらってないけど、私の貯金で買えるわ!」
「そんな、悪いです……」
「いいのよ。エリンにプレゼント」
リーナが微笑む。
「リーナさん……」
エリンが感動する。
「さ、試着してみて!」
「はい!」
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試着室から出てきたエリン。
青いワンピースが、彼女の金色の髪によく似合っている。
「どうですか……?」
「すっごく可愛い! 似合ってるわ!」
リーナが拍手する。
「本当ですか!?」
「ええ! これ、絶対買いましょう!」
「ありがとうございます、リーナさん!」
エリンが嬉しそうに笑う。
「それと……」
リーナが別のドレスを取る。
「私もこれ買おうかな」
「リーナさん、それ似合いそうです!」
「そう? ありがとう」
二人は服を選び、会計を済ませた。
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次に、二人は街のカフェに入った。
「ケーキ、美味しそう……」
エリンが目をキラキラさせる。
「好きなの頼んでいいわよ」
「本当ですか!?」
「ええ。今日は私が奢るから」
リーナが優しく言う。
「リーナさん……優しいです……」
エリンが涙ぐむ。
「そんな、大したことじゃないわ」
リーナが照れくさそうに笑う。
二人はケーキとお茶を注文した。
「美味しい……」
エリンが幸せそうにケーキを食べる。
「エリン、村を出て冒険者になって……後悔してない?」
リーナがふと聞く。
エリンは少し考えてから、答えた。
「後悔は……ないです」
「そう」
「だって、リーナさんや、アキラさんや、ガルドさんに会えたから」
エリンが微笑む。
「私、みんなと一緒にいると、すごく楽しいんです」
「エリン……」
「それに、強くなれてる気がします。村にいたら、きっと何も変わらなかった」
エリンが真剣な顔で言う。
「でも今は、魔法も使えるようになったし、戦い方も少しずつわかってきました」
「あなた、本当に成長したわよね」
リーナが優しく言う。
「最初はFランクだったのに、今はDランク。才能があるわ」
「そんな……リーナさんに比べたら、まだまだです」
「謙遜しすぎよ」
リーナが笑う。
「これからも、一緒に頑張りましょうね」
「はい!」
二人はお茶を飲みながら、笑い合った。
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**【アキラとガルドの休息】**
一方、俺とガルド。
「で、何する?」
俺が聞くと、ガルドが腕を組んだ。
「そうだな……とりあえず、飯でも食うか」
「賛成!」
俺たちは、街の食堂に入った。
「おっちゃん、肉料理二つ!」
「あいよ!」
店主が元気よく答える。
「なあ、ガルド」
俺が話しかけると、ガルドが顔を向ける。
「なんだ?」
「お前、昔のパーティーってどんな感じだったの?」
ガルドが少し驚いた顔をした。
「急にどうした?」
「いや、前に言ってたじゃん。『昔の仲間を思い出す』って」
「ああ……」
ガルドが遠い目をする。
「そうだな……俺が20歳の頃の話だ」
「20歳? じゃあ15年前か」
「ああ。当時、俺はBランク冒険者だった」
ガルドが語り始める。
「仲間は三人。俺、魔法使い、弓使い、そして……リーダーだった剣士」
「リーダー?」
「ああ。強くて、優しくて、みんなから慕われてた」
ガルドが微笑む。
「そいつと一緒にいると、不思議と安心できたんだ」
「へえ……」
「でも、ある依頼で……」
ガルドの表情が曇る。
「リーダーが、命を落とした」
「……そうなのか」
「ああ。それで、パーティーは解散した」
ガルドがジョッキを傾ける。
「それ以来、俺は一人で冒険者を続けてた」
「寂しくなかった?」
「寂しかったさ。でも……」
ガルドが俺を見た。
「お前たちと出会って、また仲間ができた」
「ガルド……」
「お前たちといると、あの頃を思い出すんだ」
ガルドが笑う。
「だから、絶対に失いたくない」
「……俺も」
俺も笑った。
「みんなのこと、絶対に守るから」
「頼りにしてるぞ、最強の逆転者」
「最強はまだ早いって!」
二人で笑い合った。
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食事を終えた俺たちは、武器屋に向かった。
「アキラ、お前、木剣買い忘れてただろ」
「あー……そうだった」
俺は武器屋の店主に声をかけた。
「すみません、木剣ください」
「木剣? 何本だ?」
「えーっと……50本」
「50本!?」
店主が驚く。
「あ、いや、予備も含めて……」
「あんた、一体何に使うんだ?」
「特訓です」
「特訓で50本も使うのか……」
店主が呆れた顔をする。
「まあいい。50本だな。銀貨10枚だ」
「はい」
俺は銀貨を渡した。
「アキラ、お前、木剣何本折れば気が済むんだ……」
ガルドがため息をつく。
「いやー、俺、力加減苦手だから……」
「それ、冒険者として致命的だぞ」
「わかってるって……」
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武器屋を出た後、俺たちは街の訓練場に向かった。
「よし、せっかくだから少し訓練するか」
ガルドが剣を抜く。
「おお、いいね!」
俺も木剣を構える。
「じゃあ、手合わせだ。手加減しろよ」
「わかってる!」
俺とガルドが向かい合う。
「いくぞ」
ガルドが剣を振る。
俺は木剣で受け止める。
カキン!
「おっ、今回は折れなかったぞ!」
「当たり前だ。まだ一撃目だからな」
「ひどい言われよう……」
俺は笑いながら、ガルドと剣を交える。
カキン、カキン、カキン……
心地よい音が響く。
「アキラ、お前、力の制御が少し上手くなったな」
「マジで!?」
「ああ。前より、だいぶマシだ」
ガルドが笑う。
「よし、じゃあもう少し強く――」
バキィィィン!
木剣が折れた。
「あああああ! また折れた!」
「やっぱりな」
ガルドが苦笑する。
「でも、前より持ったぞ。成長してる」
「そうかな?」
「ああ。このペースなら、いつか完璧に制御できるようになる」
ガルドが肩を叩く。
「頑張れよ、相棒」
「ああ!」
俺は新しい木剣を手に取った。
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夕方。
俺とガルドは、街の展望台に登っていた。
「綺麗だな……」
街を見下ろす景色。
二つの太陽が、ゆっくりと沈んでいく。
「なあ、ガルド」
「ん?」
「俺、もっと強くなりたい」
俺が呟く。
「みんなを守れるくらい、強く」
「お前は十分強いだろ」
「でも、まだ足りない気がするんだ」
俺は拳を握る。
「封印の遺跡の魔物……あれ、俺一人じゃ倒せなかった」
「当たり前だ。あんなの、Sランクでも厳しいぞ」
「でも、いつかまた封印が解ける。そのとき、俺が倒さないといけない」
俺がガルドを見る。
「だから、もっと強くなる」
「……そうか」
ガルドが微笑んだ。
「なら、俺が鍛えてやる」
「本当か!?」
「ああ。地獄の特訓、覚悟しろよ」
「よっしゃ! 任せた!」
二人で拳を合わせた。
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その夜。
宿の食堂で、俺たちは再会した。
「おかえり、アキラ、ガルド」
リーナが笑顔で手を振る。
「おー、リーナ、エリン! 楽しかった?」
「ええ、すごく楽しかったわ」
リーナが新しい服を見せる。
「ほら、これ買ったの」
「おお、似合ってるじゃん!」
「ありがとう」
エリンも嬉しそうに服を見せる。
「私も買ってもらいました!」
「可愛いな、エリン!」
「ありがとうございます!」
みんなで笑い合う。
「明日から、また依頼だな」
ガルドが言うと、リーナが頷いた。
「ええ。しっかり休んだから、また頑張れるわ」
「俺も!」
エリンが元気よく答える。
「よし、じゃあ乾杯しよう!」
俺がジョッキを掲げる。
「これからも、よろしくな!」
「「「乾杯!」」」
四人のジョッキが、カチンと音を立てた。
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その頃。
王都の裏路地。
黒いローブを着た男たちが、集まっていた。
「封印の遺跡は失敗か……」
「ああ。だが、まだ諦めていない」
「次は、逆転者を直接狙う」
「いつだ?」
「もうすぐだ。奴らが次の依頼を受けたとき……必ず仕留める」
男たちが不気味に笑った。
影の組織が、再び動き出す――
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翌朝。
俺たちはギルドに集まっていた。
「よし、今日から再開だ!」
俺が張り切っていると、セリアが声をかけてきた。
「アキラ、ちょうどいいところに」
「どうしました?」
「お前宛に、特別な依頼が届いている」
セリアが封筒を渡す。
「特別な依頼?」
俺が封筒を開けると――
『親愛なるアキラへ。
あなたの力が必要です。
東の山脈に、古代の遺物があります。
それを手に入れれば、あなたの力はさらに覚醒するでしょう。
ぜひ、来てください。
――セレスティア・ローゼンバーグ』
「またセレスティアからか……」
リーナが呟く。
「しかも、『力が覚醒する』って……」
「怪しいわね」
「でも、行ってみる価値はあるかもな」
ガルドが腕を組む。
「どうする、アキラ?」
「もちろん、行く!」
俺が即答すると、リーナがため息をついた。
「やっぱりね……」
「だって、気になるじゃん!」
「あなたの『気になる』は大体トラブルなのよ」
「大丈夫大丈夫!」
俺は笑った。
「じゃあ、決まりだな。東の山脈に向かうぞ!」
「「「おー!」」」
俺たちの新たな冒険が、始まる――
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**次回予告**
休息を終えたアキラたち。セレスティアからの依頼で、東の山脈へ向かうことに。そこで待ち受けるものとは――? そして、影の組織の罠が迫る……!
次回、第31話「東の山脈と古代の遺物」
お楽しみに!
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**現在のアキラのステータス**
- **レベル:832**
- **HP/MP/攻撃力/防御力/魔力/敏捷性:832,000**
- **ギルドランク:Cランク**
- **所持金:金貨82枚、銀貨20枚**(木剣50本購入で銀貨10枚消費)




