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ふたりのアイドル

____________________


あの女は絶対に許さない。


いつもいつも私の邪魔ばっかりして……

絶対に私の方が彼女より何もかも優れている。


私は"特別"なのよ。


やっぱり彼女には消えてもらうのが一番だわ。

だから次のライブの前に"例の計画"を実行して。


ああ、あの子の怖がる顔が目に浮かんでくるわね。


あの女を事務所から追い出して必ず私が一番になる。


次のライブは私のソロライブで決まりよ!



◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎より


__________________




「あー。今日も楽しかったー」


夕焼けを背に町を歩く2人のプレイヤーがいた。

声を上げたのは長い金色の髪をなびかせて歩く女性プレイヤー。

装備は白ワイシャツに皮の胸当て、青のジーンズにブラウンのブーツを履く。

すれ違う他プレイヤーの視線を奪うほど綺麗なアバターだ。


「レナもずいぶん、この"キンスレ"にハマったわね」


そう笑みを浮かべて言ったのは丸々と太ったアバターの女性プレイヤーだった。

魔法使いのような風貌で体型が目立ちにくそうなローブを着ていてもハッキリと太さがわかる。


「ほんと。レモンママに誘ってもらってよかった。このゲームはいい発散になってるからさ」


レナが言うとレモンママと呼ばれたプレイヤーは笑みを浮かべつつ何度も頷いていた。

"自分がレナを救ってあげた"と言わんばかりだ。


「でもなんか、あの日から物足りない気がするのよね」


「あの日から物足りないって……どの日?」


レモンママは首を傾げながら聞き返す。


「あの洞窟での配信の時よ」


「ああ、例の"ざまぁ配信"の時ね」


「そうそう。確かにこのゲームは協力し合って攻略するのは楽しいけど、あの時の興奮が忘れられなくて」


「なら一層のこと、レナも配信したらいいじゃないの」


「え……」


レモンママの言葉にレナは固まる。

頑張りを配信を通して見てもらい、それが思いの外に上手くいった、というのが自分にとっての"興奮"なんだろう。

しかし自分1人で配信を始める……というのは何か違う気がした。


「でもなぁ。私だけっていうのも何か寂しい気がするんだけど」


「ヴォルフさんは一人で農業配信してるわよ」


「あの人は変わり者だと思う」


レナは言っておいて失礼だなと思ったが、事実、あの後に配信を農業に切り替えた途端に視聴者と登録者が激減したようだった。

しかし彼はなぜか農業系配信者を続けている。


「何かまた"イベント"を望んでいる私がいる……けど何をやったらいいかわからないな」


「それなら今度、このキンスレ内であるライブイベントに行ってみる?」


「何それ?」


「一ヶ月後くらいに、あるアイドルプロダクションがゲーム内でライブを計画してるのよ」


レナは眉を顰める。

ライブということは……歌?

しかしゲーム内でライブということはアバターのまま歌うということなのだろうか。

そんなレナの思考に構わずレモンママは続けた。


「今、話題の"コロットプロダクション"、略してコロプロはライブを通してアイドル同士の登録者数を競わせてるのよ。一位になると単独でライブができるってシステムなの」


「へー。でも私、アイドルとかライブとか詳しくないけど」


「大丈夫。今の"上位二人"の争いを知ったら興奮すること間違いなしよ!」


そう語るレモンママが一番、興奮しているように見えるが……


どうやら今現在、コロプロで売り出しているアイドルで特に人気なのが2人おり、完全に彼女たちの戦いだとのこと。


1人は天使系アイドルの【天野川アクア】。

金色の長い髪とクールな外見。

背が高く、スタイルがいいアバターで青色の衣装が印象的なのだという。


もう1人は小悪魔系アイドルの【夜桜カノン】。

黒色の髪に赤いメッシュを入れたツインテール。

小柄で黒のゴスロリ衣装だが色に似合わず可愛げのある女の子といった印象だそうだ。


どちらも当てられた設定にギャップがあり、それが人気に繋がっているのだろうとのこと。


「ふーん、なんか面白そうだね。行ってみようかな」


「そうこなくっちゃ!チケット予約しとくわ!」


こうしてレナはレモンママの提案によって一ヶ月後にコロットプロダクションが企画するライブを観に行くことになる。


"天野川アクア"と"夜桜カノン"という2人のアイドルが歌う予定のライブだ。


しかし……実際にこのライブで歌ったのは彼女たちのうち"1人"だけあった。

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