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忘れっぽいのか

 式が終わる。


「さて、ロードさん。やっと式も終わりました。なのでこれから自由行動です」


「やっとか......」


 やっと一息ついて自由時間だ。

 というか、祭りって言っていたけど、いつするんだろうか。


「今日がロードさんが聖者になった日なので、今晩これから祭りですかね」


「そうか......」


 そういえば、式は今日だった。

 となれば、聖女様が攫われて本当にすぐ救出できたんだな......

 まぁ、兵士の準備速度が尋常じゃあないくらいに早かったのもあるだろうが。

 というか、祭りの準備速度尋常じゃないくらい早い。前もって準備をしていたんだろうか。

 と、そこでその思考はいったん置いておく。


「アミリアさんは、今日はあれの準備ですか?」


 そう、今日が満月。

 彼女は、それでも待つのだろうか。


「えぇ。待っていますよ」


 そう答えられては、一緒に祭りを回ろうとも誘えない。


「そうですか」


 俺は、そう返すだけだった


「あ、そうだ、ロードさん」


「どうしましたか?」


「あの件、まだ内緒ですからね?」


 人差し指で唇を抑え、アミリアさんは笑う。

 あの件、とはつまりキスのこと、そして結婚のことだろう。

 まぁ、近々教皇様直々にお触れみたいなものを出すんだろう。


「わかりました」


 そう返答すると「よろしくお願いしますね。では」と、アミリアさんは建物の中に入る。

 さて、俺も行くか。


 やっと、ロードは一人、街へ出た。




「お小遣いは良し、と」


 俺は先ほど隠してアミリアさんにもらった銀貨十枚を手に、街へ出る。

 何故金貨ではないのかと言うと、単純に金貨を出してもおつりに時間がかかるからだ。大体の相場は銅貨三枚から五枚。銀貨一枚でも十分支払いできるから、あえて小分けして渡されたわけだ。


 まぁ、これまでの金銭感覚からすれば、銀貨十枚を自由に使って良いと言われても、どうするか悩むものだが......


 そう思い、とりあえず祭り騒ぎをしている連中をよそに、少しずつ建てられた屋台を見る。


「お、あんたが噂の聖者様かい?」


「あぁ、そうです」


 屋台のおっちゃん、と表現するのが一番正しいであろう風貌の男が話しかけてきた。

 どうしてわかったんだ、と思えば、そういえば礼服のまま着替えるのを忘れていた。

 胸元にナイフで切り裂かれた跡とかあるのに、着替えていないのはまずいか。

 しかし、それを気にせずおっちゃんは話を続ける。


「それなら一本食ってけよ! 金は要らねぇ!」


「あぁ、どうも」


 俺は手渡しで焼き鳥を一本貰う。毒物は......まぁ、ないだろう。


「うまい」


 とりあえず一口、食べた。

 普通にうまかった。


「これでうちの屋台も箔が作ってもんよ、聖者様のお墨付き、ってなぁ!」


「あぁ、そう言う」


 どうやらそう言う意図があって無料だったらしい。商人としての判断力は良いだろう。


「また来るよ」


「おう! 今度はぜひ買ってくれよ!」


 俺はその声を聞きながら、焼き鳥をつまみ建物へと戻る。





 建物――――外見はまさに七神教本部だが、正式名称を知らない――――に戻ると、ちょうどそこから、見たことのある顔の人が出てきていた。


「お、食堂の時の」


「あぁ、聖女様......?」


 俺はそこまで言って、名前を聞いていなかったことを思い出す。


「まぁ、聖女様でいいさ。嫉妬するんでな」


 嫉妬......? と思ったその時、後ろから男が出てきた。

 同じ神官服を着た、長身の男だった。

 彼は聖女様の隣に行くと、手を後ろで組む。


「こんにちは、新たな聖者君。ところで私のマリーと仲が良いようだけど......」


 整った顔立ち。そして青い髪が一層爽やかさを増させていた。

 が、その表情は暗い闇を思わせるほどに固まっていた。


「どうも、ロードと申します。聖女様には食堂の時にお話しを聞かせていただきまして」


 俺は正直に答える。

 マリーさん、と言ったらきっとこの男性が嫉妬を爆発させるだろう。マリーさんの聖女でいいという発言はこれに対する警告か。良く相手のことを知っているようだ。


「そうそう。別に少し話しただけで、やましいことはなかったさ」


 マリーさんもそう弁明を入れた。

 この様子だと、事あるごとに彼に弁明していそうだ。大変そう、なんて言うレベルで収まるのか、俺は想像もしたくなかった。


「そうか、ならいいんだ。僕はアルト。聖者として、よろしく頼むよ」


「よろしくお願いします」


 打って変わってやわらかい笑みを浮かべる。この笑顔は女性を虜にしそうだ。

 マリーさんもその一人なんだろうな。と見ていると、そのマリーさんから話を切り出された。


「それで、どうした? これからあんたのための祭りだってのに、建物内に戻ろうとして」


「あぁ、礼服がちょっと」


 そう言って、服の一番上、切り裂かれた跡の残る服を見せた。


「あぁ、なるほど。それなら入って右の突き当りで直してもらえるさ」


「ありがとうございます。それでは、失礼します」


 俺は服をさっさと直してもらいたいから、さっさと建物内に入ることにする。

 そして向こうも――――というよりアルトさんが主に――――祭りに早くいきたい様子だった。


「おう、またな」


「ロード君。マリーとは程々にね」


 最後の最後までアルトさんは俺に警告を飛ばしてきた。

「わかっていますよ」と笑いながら答えると、向こうも笑いながら手を振ってきた。

 どうやらマリーさんが関わらなければ好青年のままでいられるらしい。


「っと、早く行くか」


 俺は礼服を直すため、すぐに言われた通りの部屋に移動した。

 一つの疑問を抱えて――――


次回深夜。十二時目標。少々お待ちを。

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