深夜に起きるのもなかなか悪くはないものだ
もう一月末ですね。
だからなんだって言われたらそれまでですが。
結局あの後一人で買い物をして、寝間着含む私服を最低限買った。
そしてそれが入るくらいのバッグも、同時に。
というのも、これから転移してすぐにセントリアに着くと言っても、そこからの生活で数着服は必要だろうし、それを持って行くバッグも容量不足が否めなかったからだ。
だが、マジックバッグという選択肢もあった。まぁしなかったが。
というのも、俺にとって魔力は生命線だから、ずっと吸われ続けるというのは正直背筋が凍りそうなくらいの恐怖を抱いている。
それにあれは一応魔道具――――魔法の効果を発揮している道具――――であり、城などの重要人物がいるところには持ち込めない。
そして何より小さいもので金貨一枚でかつかつなくらいに高い。これでも一昔前よりは安くなってはいるが。
そしてその他諸々の生活必需品の補充をして、バッグの中にほとんどを詰める。
今日の寝間着を取り出し、それに着替えるとすぐにベッドにダイブした。
「ふぅ......」
久々の大規模作戦に疲労がたまっていたようで、すぐに俺は眠りについてしまった。
「ふぁああ......よく寝た」
ベッドのおかげか、はたまた最近の睡眠時間のせいか。
体の疲れが取れて、すっきりとした寝覚めだった。
「夜か......」
それも深夜だ。
街に人は誰もいない。だがギルドに行って時計を確認するのも面倒。
また寝ようと思ったが、これだけ良い寝起きをしたあたり、また寝付けるとは思えない。
「どうしたものか」
そういえば、追放された日もそうだった。
こんな感じの、人のいない深夜の街並みだった。
治療院の外に出る。受付には、偶然だろうか人はいなかった。
辺りを見回せば、月明かりが街を白く照らしていて、一面白と黒の世界だった。
寝起きの俺には少し刺激が強かったが。
少し目を細めながらも、治療院の入口にある階段に腰を掛けた。
今から歩き出しても、どうせ足がギルドに向くことが分かっているからだ。
それはギルドに行くという染みついた動きというよりも、そこにしか行く場所がないという意味でだった。
というのも、この近辺でこんな夜中に明かりが灯っているところなんて、ギルド以外は詰め所くらいしかない。用事もないのに夜更けに詰め所に行ったところで、迷惑なだけだろう。
「ふぅ......」
ため息を吐いた。
追放された時には、聖者と呼ばれることなんて想像もしていなかった。
こんなに給料をもらえると思っていなかった。
こんなに、温かいと思っていなかった。
「こんな夜にどうしたんですか? ロードさん」
ふと、聖女様の声が聞こえた。
次回更新予定は1/30日の夕方予定です。




