第1話 天空の邸
アニメや映画でしか聞かない超未来だったという事実にたじろいでいると、また美少女は心配そうにこちらを眺める。
「あの、どうしたんですか」
「い、いえ。少し気が動転したというか、」「と、とりあえず大丈夫です」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は星陵高校1年、西条雲雀です。」
「ぼ、僕は中川圭と言います。お、同い年です。一応」
何となく自己紹介を終えると、さっき通った車とは桁違いに大きいのがやってきた。いわゆるリムジン車というやつだろうか。すると、扉がひとりでに開いた。
「さ、乗ってください」
促されるまま車内へ入ると、黒を基調とした内装にふかふかのソファがあり、いかにも金持ちの車といった感じだった。
少し気まずい空気のまま車は進みだした。ふと窓の外を見ると、僕が地面だと思っていたところは空の上だと分かった。正確には建物や道が空に浮いていて、それが何層にもなっているという感じだった。よく目を凝らして下のほうを見ると、見慣れたような街並みも広がっていた。
「下にも町はあるんですね」
何か会話をと話を切り出すと、
「へ? は、はい。そこには序列外共が住んでいます」
——かなり物騒な物言いをするな。
「そういえば、さっきから言ってる序列って何なんですか」
「序列、ですか」「昔、この国は資本主義国家だったらしいんですよ——」
僕たちの時代では当たり前のことから話し始めた彼女によると、第三次世界大戦が起こり、世界の資本主義国家は社会主義勢力に染まっていったらしい。日本はその中でも比較的ひどい攻め方をされたらしく、簡単に言うとほぼ滅亡したらしい。しかしそんな日本にも、最後まで反発した者たちがいた。序列はその反逆行為の鎮圧に対する貢献度で決まり、今もその子孫たちに適用されているらしい。ちなみに反逆者たちの子孫は序列外とされ、未だに差別の対象らしい。
「じゃあ今の日本は社会主義なんですね」
「そ、それも今は曖昧になっていて、はっきり残ったのは序列だけで——」「あ、家が見えてきました。も、もう着きますよ」
少し歯切れの悪い様子で言い終えると、西条さんは窓の外を指さした。
指の先を眺めると、『空中要塞』そんな言葉がしっくりくるような、思わず某天空の城の名をつぶやいてしまうような、そんな架空のものと思っていたものが目の前に広がっていた。
「え、あれ全部」
「いえ、あそこが序列二級の者が住む地域です。あの右端に見えるのが私の家です」
冷静に返されて恥ずかしくなる。しかし端の家だけでもかなりの大きさだ。序列の細かい差は知らないが、序列二級ってのがかなり凄いということは分かるレベルだった。
近未来と古風が混ざったような街並みを抜けると、さっき見えていた豪邸が出てきた。車が豪邸の目の前で止まると、中から召使いのような人たちが出てきた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
そういうと、召使いは僕に鋭い視線を向けた。
「して、この男はどちら様で」
「彼は道で迷子になってるところを私が助けたの」
「そ、それはまた——」
困ったなといった感じの顔でこっちを見てこられ、かなり気まずい空気が流れる。
「ぼ、僕ならもう大丈夫なんで、ここら辺で失礼します」
「そ、そうですか。ならよかったです。お気をつけて」
召使いと一芝居打って、屋敷から出ていこうとすると、
「なにを言ってるんですか? あなた、帰る場所なんてないんでしょ」「さ、そろそろおなかもすいてきましたし、ご飯にしましょう」
「い、いやでも——」
「ご飯にしましょう。いいですか」
「は、はい」
「で、ではすぐに用意させます」
かなり強引ではあるが、助けてもらっている側なので断ることもできず、とりあえず屋敷に入った。中は未来感というよりは、僕の時代にもあった館のような内装で、少し居心地はよかった。
「こちらでございます」
召使いの人に案内され入った部屋はやけにだだっ広く、真ん中には大きな机と椅子が並んでいた。自由に掛けてくれと言われたので、目についた椅子に座ると、西条さんが戻ってきた。僕の向かいに彼女が座り、広い部屋で二人きりとなってしまった。
——気まずい、何か話題は
「そ、そうだ、ご両親はどうしたんですか。見当たらないんですけど」
「両親はあまり家には帰ってきません。二人とも忙しい方たちなので」
「そ、そうなんですね。あ、ちなみに同い年なんでタメ口で大丈夫ですよ」
「そうですか? じゃあよろしく! 圭くん」
かなり勢いのある距離の詰め方に戸惑っていると、
「失礼します。お食事をお持ちしました」
落ち着いた様子で扉を開ける召使いさんに救われた。
——後でお礼を言っておこう
大きい机を埋め尽くす勢いで料理が運ばれてきた。
「それではごゆっくりどうぞ」
「え、皆さんで食べるんじゃ——」
かなり量があったのも相まって、つい口走る。
「いえいえ、私共のような三級が共に食事など」
「そ、そうなんですか」
——そういえば、僕はこの世界の人間じゃない。この世界の人間はみんな序列がある。てことは僕って序列外なんじゃ
そんな不安を抱えたまま夕食は終わった。
少し見て回りたいからと言い、一人で屋敷の外に出た。歩いている限り、お金持ちが住んでいる普通の街にしか見えない。道行く人々も僕の時代とあまり変わらないように見える。
ぶらぶら歩いていると、先のほうにオレンジの光が差しているのが見えた。その光の元を追って狭い路地を抜けると、小さい公園があった。
公園では、ブランコがオレンジ色に照らされていた。
——この時代でもブランコってあるんだな
そんなことを考えながらブランコに座る。柵の外には無数に浮かぶ島と、斜陽に染まる空が広がっていた。ふと思い出し、柵から身を乗り出して下を見る。遥か先には、米粒サイズの町が広がっていた。西条さんが言うには、そこに序列外と呼ばれる人たちが住んでいるらしい。
——自分もあそこに行かないといけないのだろうか
「もぉ、こんなところで何してんの」
「あ、西条さん」
「君の手続きのためにいろいろすることあるんだから、早く帰るよ」
「は、はい。っていうか手続きってどういうことですか」
「感が鈍いなぁ、君はこの時代の住人じゃないんでしょ、帰れない以上戸籍とかいるじゃない。それをやったげるって言ってんの」
「え、でもそんなの本当に大変で、お金とかもかなりかかるんじゃ——」
「言ったでしょ、私は序列二級なんだよ。そんなのどうとでもできちゃうの」
「——あと、同い年なんだから敬語はなしね。君から言い出したんだから」
——やっぱり序列二級ってすごいんだな
つくづくそう思わされた。
おはこんばんにちは!プロローグの続きいかがでしたか?個人的は自信があったので、面白いと思っていただけてると幸いです!次回も楽しみにしててください!




