表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
6/21

姫様、土を触る

三姉妹が大坂城にやって来て、暫く落ち着いた頃。


寧々に側室たちを紹介された。

……全員、良いところの姫君。


(ブランド好きの成金かよ。)


茶々は心の中で、そうツッコんだ。


「お茶々、そこ踏むでにゃーよ〜。」


「え、あ、はい!」


――茶々は気づけば、畑にいた。


大坂城、奥御殿の一角。そこには、畑があった。


そして、その真ん中にいるのは――秀吉の母、仲。


(……いや、なんでこうなった?)


最初は、ただ仲の様子を見ているだけのつもりだったのだが……。


(無理。)


じっとしていられなかった。

気づけば、袖を捲って土に手を突っ込んでいた。


「姫様ぁぁぁ!!?」


後ろで、於孝が悲鳴を上げる。


「浅井の姫が何をなさっているのですか!?」


「ちょっとだけだから!」


「ちょっとの問題ではありません!!」


――そして、於孝は膝から崩れ落ちた。


それからというもの。茶々は、仲の元に通うようになった。


最初は止めていた於孝も、今では半ば諦めている。


「姫様、お茶とお菓子をお持ちしました。」


今は、休憩のタイミングを見計らって、準備してくれるようになった。


(相変わらず、適応力高いな……。)


「はぁ〜ん、お初がねぇ……。」


土を払いながら、仲がぽつりと呟く。


「ええ。一目惚れしたみたいです。」


「高次殿やろぉ?竜子ちゃんの弟の。」


「はい。私たちの従兄になります。」


「お初はまぁ十四だにゃー?嫁ぐには早すぎん?」


「決まった訳ではありません。

ただ……武家の娘が、家の為にその歳で嫁ぐのは……珍しいことではありませんから。」


仲は少しだけ目を細めた。


「……お武家様は大変やのぉ。」


その言葉に、茶々は苦笑いを浮かべる。

返す言葉がない。


「お茶々、そろそろ休憩にしよみゃーか。」


「はい。」


井戸の傍で、手と足の土を洗い流す。

用意された湯は、じんわりと温かかった。


「最近、冷えてきたなぁ。」


「ええ。もうすぐ冬ですね。」


こうして並んでいると、まるで祖母と孫だ。


――戦国の姫と、天下人の母。


(……変な組み合わせ。でも、嫌いじゃないな。)


縁側に戻ると、於孝が茶を用意していた。


「寧々様より、珍しい菓子を頂きました。」


「へぇ、どんなの?」


「ボーロ、というそうです。」


「ふ〜ん……。」


一口齧ると、ほんのり甘さが口に広がる。


「……美味しい。」


ぽつりと呟く。


――ただ、それだけのことなのに。なんだか、少しだけ肩の力が抜けた気がした。


「それにしてもなぁ……。」


仲が茶々を見つめる。


「浅井のお姫様が、オラァと一緒に土いじりなんてなぁ。」


「……ダメでした?」


「んにゃ、ええよ。ええよ。」


仲は、くしゃりと笑った。


「なんや、普通の娘みたいやで。」


その言葉に、茶々は少しだけ目を伏せる。


(……普通、か。)


そんなもの、もうとっくに捨てたと思っていた。


だけど、土の匂いと、温かい茶と、どうでもいい会話。


(まぁ、悪ないな。)


ほうじ茶を啜る茶々は、ポツリと語り始めた。


「昔、父に連れられて領内を回ったことがあるんです。」


茶々は、ゆっくりと続ける。


「その時、百姓たちと一緒に畑仕事をして……。

こうやって作物は育つのか、って。」


「へぇ……面白い殿様やったんやねぇ。」


「はい。少し、変わった父でした。」


思い出したのか、茶々はくつくつと笑う。


「そういやぁ、織田の御屋形様もなぁ……。」


仲がぽつりと語り出す。


「取れたばっかの瓜を持ってな〜、"おっか様、こりゃええ瓜だなも〜!"って、尾張訛り丸出しでなぁ〜。」


それは茶々の知らない、伯父の姿だった。


(……そんな顔、する人だったんだ。)


茶々の知る伯父の信長は、いつも難しい顔をして、眉間に皺を寄せていた。


(あの伯父上がね〜……。)


「オラァにとっては良え人やったけどなぁ……。」


その一言に、空気が静かに沈む。


「……そうですね。」


少しだけしんみりし出したので、話題を変える為に、ボーロを頬張る。


「このお菓子、美味しいですね。」


茶々はわざと明るく振る舞った。


「ほぉ〜、どれどれ。」


仲がボーロを齧る。


「うみゃーなも。」


思わず、三人で笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ