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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第二章 生き残りを賭けて〜徳川家で戦国サバイバル〜
34/66

井伊の赤鬼、妻の前では無力

天正十五年。


正月の慌ただしさが残る駿府城内で、井伊直政と茶々の婚儀が行われた。


白の束帯を纏う直政と、白無垢の茶々は、誰の目にも似合いの美男美女である。


旭はそれを見て「お雛様みたい」と嬉しそうに笑っていた。


婚儀を終えた茶々は奥御殿から井伊家の屋敷へ移ったが、屋敷は城内にあるため、引っ越した実感はほとんどない。


(あの狸親父……ウチの夫のこと、どんだけ好きなんだよ。)


と、思ったのは内緒である。


しかも茶々は婚後も変わらず旭の女房として仕えるため、生活自体も大きくは変わらなかった。


ただ一つ変わったことがあるとすれば、女房名である。


「少輔の方」


夫・直政の官位「兵部少輔(ひょうぶしょうゆう)」から取られたものだ。

直政が「兵部殿」と呼ばれている以上、その正妻である茶々が「少輔」と呼ばれるのは自然な流れである。


(女房名ってこんなもんよね……。)


平安の女房たちも父や兄弟、夫の官位から名を取っていたのだから、特別なことではない。


今日は旭からの呼び出しもなく、茶々は奥御殿には向かわず井伊邸の奥向きで雑務をこなしていた。


***


「御方様、殿より此方をと。」


呼ばれて顔を上げると、井伊家の侍女二人を連れて萩乃が入って来た。


「……ん?なに?」


「殿より、婚儀のお祝いがようやく届いた、との事です。」


「もう十分頂いてるのに……。」


侍女がそっと桐の箱を置いて、中を確認する。


深い萌葱色の生地に、美しい鶴が織り込まれた見事な打掛だった。


(……これ、高いんじゃない?)


茶々はじっと打掛を見つめていると、萩乃が声を掛けてきた。


「お召しになりますか?」


「……そうね、折角だもの。」


萩乃たちに手伝ってもらいながら、真新しい打掛に袖を通す。


「「まぁ〜……!!」」


「よくお似合いで!」


姿見に写る自分ですら、思わず見惚れた。


(殿って、センスがいいんだなぁ。)


二人の侍女はニコニコと告げる。


「是非とも、若様に!」


「きっと、お喜びになられます!」


(そこまで言われりゃ……。)


そして、茶々は早速、夫へ見せびらかしに行った。


「旦那様、如何でしょう?」


クルリと目の前で回ってみせると、直政は顔を赤くして目を逸らせる。


「うむ……。そのような美しい姿……誰にも見せとうないな。」


ほぼ、消え入りそうな声だった。


控えていた侍女はキャーキャーとはしゃぎ、萩乃に至ってはドヤ顔である。


(……つまり、独り占めしたいってこと?)


悪くない。


そして、ふとある考えが頭をよぎった。

何故、その考えに至ったのかは、茶々本人にすら、分からない。


しかし……。


(……見たい。)


気付けば、茶々は畳に額を擦り付けんばかりに、勢いよく土下座した。


「旦那様ぁぁぁあああーーーー!!お願いにございまするぅぅぅーー!!」


「お茶々ぁぁ!?」


「この打掛、お召しになってくださぁぁぁぁいっっ!!」


「………はぁぁ!?」


「私が見たいのですぅぅぅ!!」


「やめぬかぁぁぁぁーーーー!!」


侍女たちは流石にドン引き、萩乃は慣れてしまったのか、そっと目を逸らせる。


「お願いしますぅぅぅぅ!!一生のお願いぃぃぃーーー!!」


「婚儀が終わったばかりで、一生のお願いをそんな事に使うでないっ!!」


直政の意見は尤もだ。


「そもそも!何故、俺が其方の打掛を着ねばならぬ!?」


「私が見たいから!!」


「答えになってない!!」


その後も攻防が続いた。


結果は茶々の粘り勝ちである。


「旦那様、此方の小袖を!」


「……打掛を羽織るだけではないのか?」


「ダメ。」


直政は死んだ目で茶々にされるがままである。

一方の茶々は、水を得た魚のようにキャッキャとはしゃいでいる。


髷を下ろされ、化粧まで施されている。


「……ここまでする必要があるのか?」


「ございます!!」


即答だった。


かれこれ半刻。


「……出来た!」


ようやく終わったらしい。


直政が立ち上がると、侍女たちは唖然としていた。


「「……ああ。」」


「「若殿……。」」


今にも合掌しそうな雰囲気である。


「……やはり、似合ってないのではないか!」


「そんな事ございません!!お綺麗です!!」


茶々だけが楽しそうだった。


「やっば!イケメンの女装を独り占め出来るなんて、私ってば勝者やん!なにこれ!優勝!?

宝くじ一等当たる前に、運使い果たしたんかな〜!」


直政は思考を手放した。


(考えたところで、分からん。)

直政さん、新婚早々で前途多難。

この妻、普通じゃないぞ(笑)

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― 新着の感想 ―
イケメンだから、すごく女装も似合ってたでしょうね(男の娘なコスプレイヤーさんみたいな)
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