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エピローグ

 健二は一つの小さな墓石の前で屈み、瞼を閉じ、手を合わせ、彼の魂が少しでも救われる事を祈った。

 

 あの悲劇から十年が経った。

 社会人になり、大変だが仕事は順調だった。私生活でも、理沙と結婚し、今では3歳になる男の子も授かった。

 そんな幸せな生活の中で、時折あの悲劇を思い出した。そして忘れてはならないと思った。

理沙には内緒で健二は信也の墓石を立てた。あれだけ酷い目に合わされた者の墓石を立てるなど、理沙には神経を疑われるだろうし、理沙にそこまで強制させるのはどうかと思ったからだ。家計の事もあり小さな墓石になってしまったが少しでも信也の死を弔う思いでの行為だった。

 ひどく自己満足な行為だとは思う。いくら手を合わせようが、信也の安らぎを願おうが、生前の彼はあまりにも傷つき、苦しみ過ぎた。生きている時の信也に何も出来なかった自分を虚しく思った。

 だからせめて、せめて生きている自分が出来る事をと思った。


 瞼を開き、健二は用意しておいた何冊かの本を墓石の前に重ねた。小説やら漫画やら、あべこべな並びだが気に入ってくれれば幸いだ。


「ごめんな、信也」


 何年経っても、結局出てくる言葉は信也に対しての懺悔だった。

 そして健二は信也に別れを告げた。

 また来る時も、謝る事しか出来ないだろう。

 それでも凶悪犯ではなく、久崎信也という同級生の存在を忘れてはいけないと健二は思った。

 そして、どうか痛みも苦しみもない穏やかな世界にいてくれる事を願ってやまなかった。

  

                   ずっとあなたが好きだから(完)


                          

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