あなたと一緒なら……
***
クリスティーナ視点。
「ついに今日は二人が視察という名の旅行に行く日ですね」
「そうですね。これでやっとお義姉様も……フフフ」
「「「そ、そうだな(女って怖い……)」」」
この数ヶ月、お義姉様の近くにいましたが、色々なことが大きく変わってきていました。
お義姉様自身、自分が言い寄られているということに気づいていないようでしたが、夜会に行けば男の人に囲まれ、お茶会に行けばご婦人たちに囲まれて、私の息子はどうかと、どうにかして縁を結ぼうと必死でした。
巷では「マーガレットは幸福の花」と呼ばれているほどですから、幸福の花を手に入れるために必死なのでしょう。
お兄様は本当に何をしているのか……。
お義姉様は鈍感以上の鈍感なのですから、きちんと伝えなくては伝わらないというのに。このままでは他の人に取られてしまう……。そう思った私はスージー、サフィール、クレソンを我が家に呼び出したのです。
「今日集まってもらったのは他でもない、お義姉様とお兄様の件です。お気づきでしょうが! お兄様はお義姉様のことが大好きなのですが、いかんせん伝わっておりません。お義姉様は最近色々な方から言い寄られていますし、そろそろ二人をくっつけるべきだと思うのです!!」
「「「「はぁ……」」」」
わかりますよ! その気持ち!!!
ヘビー級鈍感お義姉様に愛の言葉は通じませんから……。
「君はバラのように美しいね」
「君より綺麗な花はないよ。マーガレット……」
なんて言われても靡くことはないでしょう。しかし最近、お義姉様はポロッと言うのです。
「最近、なんかやたらと声掛けられるのよ。なんだかよく分からないこと呟いてくるし……事業についての話なら喜んで聞くんだけど……何かいい方法ないかしら……」
それを聞いて確信しました。お義姉様が言い寄られているのだと……。そして思ったのです。これは結婚する以外に言い寄られなくする方法はないのではないかと……。
なるべくお兄様が近くにいるようにしているみたいですが……お義姉様は自由奔放……。ちょっと目を離した隙にあっちこっち行ってしまわれます。
「もうさ、そこはディグレッド王太子殿下に頑張ってもらうしかないって!! あの姉上だよ? 俺たちができるとしたら……二人で視察という名の旅行に行ってもらって、王太子殿下に気持ちを伝えてもらうくらいしかないと思うけど……」
サフィールの言葉に皆が頷きました。
「いいと思います。行き先は我が領地。アルヴィエ侯爵領なんていかがでしょう……。最近、お義姉様がアルヴィエ侯爵領にも事業展開しようかしらと言っていましたので……」
確かに以前、そんな話をしていたことを思い出しました。アルヴィエ侯爵領は温泉地帯になっていて、観光地帯が多くあります。スージーの言葉を聞いてクレソン様も頷いているところを見ると、特に問題がないということでしょう。
こうして私たちは密かに二人になれるよう画策したのでした。
***
ディグレッド視点。
クリスティーナから手紙をもらって、いよいよマーガレットと二人で旅行に行くことになった。
アルヴィエ侯爵領までは馬車で二日ほどだ。
一日は別の街に泊まってゆっくり進むことになる。
馬車でファレノプシス邸に迎えに行くと、マーガレットが待っている。
「あら……? なぜディーがここに……?」
「クリスティーナから行けなくなったから代わりに行ってほしいと言われてな……」
「そう……王太子殿下って暇なのね? でも(独りだと退屈だし)ディーが来てくれて良かったわ!」
暇ではないんだが……マーガレットも俺と一緒にいられて嬉しいってことなのか!? これはもしかすると今回こそうまくいくのではないだろうか……。
「暇ではないが……俺も一緒に来られて嬉しいよ」
二人で話していると、馬車はゆっくり出発した。
道中は最近なかなか会えていないこともあって、仕事の話や王宮での話をする。
どうしても仕事の話になってしまうのは仕方がないだろう……。それにマーガレットは仕事の話をしている時が一番楽しそうだ……かわいい……。
好きな人との時間はあっという間で、アルヴィエ侯爵領にはすぐに着いてしまった。
二人で色々回りながら、時々マーガレットの仕事に付き合う日々が続くこと二日。
いよいよ明日は帰る日だ。
「少しはゆっくりできた?」
「ええ……クリスティーナが視察だけでなく楽しんできてくださいねと言っていたけど、こういうことだったのね。最近ゆっくり時間が取れていなかったから、久しぶりに体を休めることができたわ。ディーが一緒だと気兼ねしなくていいからいいわよね」
温泉に入ったあと、二人で牛乳瓶を片手に夜風にあたる。
「じゃ、じゃ、じゃあ……俺と一緒にならないか?」
「え?」
「だから……その……だな……」
「何言ってるのよ。今も一緒にいるじゃない!」
違う……そういうことじゃないんだ。これでも通じないのか……。
「そ、そうなんだが……そうではなくてだな……」
「なによ……はっきり言ってちょうだい」
俺はマーガレットの言葉に後押しされるように、もう一度言葉を口にした。
「小さい頃から君のことが好きだったんだ……君は俺のことをただの幼馴染としか思っていないことも知っている。恋愛もあまり好きじゃないってことも……でも他の男と一緒になるくらいなら、俺を選んでくれないか?」
長い沈黙のあと、マーガレットが重い口を開いた。
「いいわよ……」
「えっ……?」
「だから……あなたと一緒なら退屈しないで済みそうだし、あなたのような傍若無人な男の隣に立てるのは私くらいしかいないでしょ? だから……いいって言っているのよ……」
そう言って少し顔を赤くしながら顔を逸らすマーガレットは、いつもと少し違うように見えた。
「あ、ありがとう! 大切にする!!」
「そうよ。私……三度も結婚するなんて嫌だから、ずっと一緒にいてよね」
そう言ってこちらを見るマーガレットは、花が咲いたようなとても綺麗な笑顔だった。
俺たちは周りとは少し違うかもしれないけれど、
二人のペースでゆっくり進んでいこう。
マーガレットの花が枯れないように、
俺はマーガレットを支える男になると誓うよ。
「あぁ、分かっている。ずっと一緒にいよう」
「約束だからね!」
完
こんにちは、ゆずこしょうです。
この度は本作をお読みいただきありがとうございます。
マーガレットの物語はこちらで終了となります。
拙い部分もあったと思いますが、最後まで読んでくださりありがとうございました。
皆様と、また別の作品でお会いできるのを楽しみにしています。
ありがとうございました( * . .)"
ゆずこしょう。




