第七夜 ⑥
「気付いちゃったのよね」
アイザックのツッコミを華麗にスルーして話しだすエラにアイザックは呆れたようで話半分に耳を傾けた。
「半覚醒した時はショックだったしこのまま学園にいるよりも逃げた方がいいんじゃないかって。魔王城に行った方がマシなんじゃないかって思ったのよ。でも違う。今は逃げさなかった当時の私を褒めてあげたいと思うの」
「ほーぅ?」
力説するエラと生返事のアイザック。温度差が激しい。
「だってねアイザック…。私、魔女でいる限り命狙われる事に変わりないのよ!!!」
突然の悲劇のヒロイン劇場が始まった。涙なくてしては語れまいと言いたげだ。アイザックは更に暇そうにしながら話を聞いてやる。
「そうよ、魔女は許されざる存在なのよ。何処へ逃げたって狙われるの。魔王城に行ったって平和なわけじゃない。それこそ再び戦争が起きれば巻き込まれる。その時誰が来ると思う?そう、ヒロインよ!!!!」
真・ENDで魔女が倒された後、激昂した魔王軍との闘いとなり、イオニコフとリチアによって魔王が異空間に封印されたというエンディング部分がある。この時、魔王軍は軒並み聖女の力で浄化されて消滅するという結末を迎えた。浄化を免れた魔族は魔王を失ったことでその地を捨てて逃亡したという。つまり…。
…魔王城に行っても幸せにはなれない!!!!
そう、イオニコフとリチアがくっつくのを阻止しなければ。出来なければ魔のつく存在全てに危機が迫るという事だ。当然、魔女も例外では無い。
「イオニコとリチアがくっつくのだけは阻止しなければならないわ!魔女とバレようがバレなかろうが私に明日は無いのよ!」
くっ…!!と涙を飛ばしながら熱の入った演技を入れる。
…こいつ…こんなキャラだったか?
空になったイチゴミルクのストローを刺したり抜いたりとすぽすぽとさせながらぼんやりとアイザックはエラを眺めた。
まぁでもやる気になってくれたのならなんでもいい。原作で唯一のエラにとってのBADENDだ。これを回避出来るなら協力は惜しまない。
原作唯一の胸糞悪いエンディング。どれを取ってもエラにとっちゃろくなエンディングなんて無かったが、最も賛否分かれたエンディングでもある真・END。覆るなら何だってしてやる。“灰かぶりのエラ”なんて意味深な設定つけたんだ。導いて見せるさ、シンデレラってお姫様にな。
一人で語っているエラを横目にアイザックはそう誓った。




