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月色の砂漠  作者: チク


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夜の訪問-2-

「この前のロボットと違うね。なんで一緒だったの?」

 キョウが尋ねた。

「別に一緒だったわけじゃ。たまたま向かう方向が同じだっただけ。――違うロボットだって見分けがつくの?」

 ファウは驚いてるようだった。


「この前のは水晶が少し丸っこくて水色に光ってた。これは水晶が角ばってて青いでしょ」


 それを聞いても、ファウはどこか半信半疑のようだ。

 しばらく首を傾げ、何か思いついたように口を開く。

「この前のは赤い水晶だったような気がするけど?」


「そうだっけ?」

「ええ」

 キョウは違和感を覚えた。

 あんなにはっきり水色だった記憶がある。

 ファウが記憶違いしてたとしても、水色と赤を間違うだろうか?


「勘違いしてたかも」

 と、ファウ。

「似たようなロボットばっかりだし」


 ……まあ、いいか。

 キョウはテーブルに盆に乗った二人分の茶を置いた。久々のばあやのパウンドケーキにキョウは年甲斐もなくわくわくしていた。

「お茶、どうぞ」

「ありがとう」

 ファウはお茶を飲む。


「ところで、ばあやは……」

 元気?とキョウは言いかけて、口をつぐんだ。

 子どもの頃なら、ファウが『ばあや』と呼ぶからそのまま真似して呼んでいたが、大人になった今も『ばあや』呼びはおかしいと思ったのだ。

 かといって、キョウは『ばあや』の名前をすっかり忘れていた。

「……ばあやって名前、何だっけ?」

 なぜか小声で聞いてしまった。


 しばしの沈黙の後、ファウは答えた。

「……知らない」


 まさかの答えにキョウは唖然とした。

 そして、吹き出してしまった。


「そんなに笑う?」

 ファウはむっとして、パウンドケーキにかじりついた。ぐびっとお茶を飲む。

「いや、プッ……別におかしくなんか……くっく……」

「笑い過ぎだけど?」


 そこでキョウは合点がいった。

 キョウは『ばあや』の名前を忘れたのではなく、そもそも誰からも知らされてなかったのだ。

 十数年ぶりに意外な真相が知れて、おかしいやら、新鮮やら、霧が晴れたというか――何がなんだかとにかく笑いが止まらなかった。


「じゃあ、ばあやさんで。ばあやさんは元気にしてる?」

「元気すぎるくらい、元気」

「それはよかった」

 久々に食べるパウンドケーキは昔と変わらぬ味だった。


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