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月色の砂漠  作者: チク


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夜の訪問-1-

 夜――

 キョウは悲鳴のような、部品がこすれるような、聞き覚えのある音を聞いた。


 外に出てみると、やっぱりだった。

 環境維持ロボがいた。

 前と状況が違うのは、もう一人いたということ。


「ファウ」

 予想外の訪問に面喰う。

「こんばんは」


「ばあやが、久々にパウンドケーキ焼いたから、好きだったでしょ? 持ってきたんだけど」

 それを聞くと、キョウはぱあっと破顔した。

「今も好きならよかった。ばあやが久々に張り切って作ったから」

 それを聞いて、キョウは子どもの頃よくレファイ家に遊びに行ったのを思い出す。ばあやの手作りお菓子をご馳走になったりもしたっけ。

「なら、お菓子と一緒にお茶でも?」


 が、空には星が出始めている。

 年頃の男女が二人きりになるには、何やら誤解をされかねない時間帯。


「きみも入りなよ」

 ファウの傍らにいた環境維持ロボに、キョウは呼びかけた。

 人間の言葉がわかるのか、ロボットは先にキョウの家の中に入って行った。



 環境維持ロボは、キョウの家の床掃除を始めていた。

 足のキャタピラがモップのように切り替わる構造になっていて、時々岩場とか塀の上なんかをモップのようなもので拭いている様子を目撃される。

 環境ロボを神の使いかのように崇め奉る者も多いのに、キョウは躊躇いもなく家用にすることがあった。


「助かるよ」

 キョウはロボットに話しかけている。

「ご褒美だよ」

 キョウはロボットの水晶に手をかざし、魔力を送った。

 水晶は青くぼうっと光り、心なしかロボットの動きが早くなった。


「いつも、掃除させてるの?」

 ファウは目を丸くした。

「便利だよ。父さんの作りかけの武器とか、どう扱っていいかわからくてさ」

 ロボットはアームを伸ばし、どういう構造なのかアームから伸びた雑巾で、壁に飾ってある武器を拭いていた。

 キョウの父親は鍛冶屋で武器修理や武器製造なんかもしていた。壁にあるのは作りかけの剣らしきものだった。

 その父親は今は行方知れずの状態で、それはルウ族の者は皆ほとんど知っている事実である。ファウはなんとなく気まずいものを感じ、口をつぐんだ。


 キョウはお茶を淹れていた。

 ファウは椅子に座り、テーブルの上には持ってきたパウンドケーキがあった。

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