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月色の砂漠  作者: チク


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     * * *


 雨は二日続いた。


 その天気は三日続くと思ったクスナだったが、二日で終わった。

 レファイ家の人たちには「導師様の予想も外れることがあるんだ」と朗らかに言われたが、クスナは笑えなかった。

 なんだか妙な胸騒ぎがした。


 クスナは、リゾの住むオアシスに行ってみた。

 雨で足跡が消えて場所を特定するのに苦労したが、なんとか見つけた。そこにたどり着くと……


 オアシスの中の泉の前で、リゾが倒れていた。

 どこかくつろげる場所に移動しようかとも思ったが、二メートルを超える体躯を運ぶのはクスナには不可能だった。

 クスナはその場で回復魔法を唱える。

 

 リゾはすぐに起き上がった。

「………」

「倒れてましたよ」


「放っておけばよかったのに」


「私の勝手な想像で言いますが、ひょっとして? ――死のうとしてました?」

「………」

「雨を降らせたのはあなたですね。自殺ではないにしろ、力を使い切って死のうとか考えてはないですよね?」

「……だったら、なんだ?」


「だったら、止めます」

 クスナにとって、リゾが死のうとしたかどうかなんて半信半疑ではあったが――


「あなたはレンの幸せそうな死に顔を見れて本望でしょうが、キョウは魂を半分奪われたようなものです。

 おそらく長生きはできないでしょう。

 それを少しでも長生きさせられる可能性があるとすれば、あなただけです」


 リゾはクスナの言葉を肯定も否定もしなかった。

「あなたには生きてもらいたい」


 クスナは少し熱くなってしまった。

 自分でも意識しないうちに、キョウのことが気に入ってしまったようだ。


「どっちみち、あと一日、雨を降らせないと処刑なんだがな。――もう精も根も尽き果てた」

 リゾはクスナをちらっと見る。

「大丈夫です。私は息を吐くより簡単にあなたを回復できますから。アシストします」


 リゾは笑ったようだった。

 リゾは立ち上がり、泉の前に剣を突き立てる。

 剣のつかに頭をつけ、意識を集中させる。

 泉の前なのは、水(魔)脈を利用して、少しでも魔力を強めるため。

 さらに、リゾの剣には魔力を増幅させる作用があるらしい。

 リゾは目を閉じ、意識を集中させている。

 程なくして、雨が降り始めた。


 クスナは確かに回復魔法は得意だった。

 だが、この時のリゾは体力と同時に魔力の回復も欲していた。

 行きがけの駄賃とばかりにクスナは体力も魔力も同時に回復させ続ける。さすがに一日は長い。

 リゾは雨を、さらに一日降らせ続けた――。



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