人殺しなんて当たり前
「はぁ!? 今なんて!?」
「目の前の女を24時間以内に殺してください。」
ジャブダルはやれやれと言う雰囲気をかもし出しながらもう一度言う。
「なんで!? このゲームはこの部屋から出たらスタートだろ!? 意味がわからん」
「私はゲームの準備とルールの説明をすると言ったはずです。 このゲームのルールは先程話しました。 次は準備です。 いきなり外に出て殺しなどできるはずもないでしょう 仙道様。 これはいわゆる準備体操のようなものですよ」
「人なんか殺せるかよ!」
俺はジャブダルに吠える。
ジャブダルはため息をつくと
「あなたは、この拘束されている女も殺すことができないのですか!? 外に出ると拘束されていないプレイヤーばかりなのですよ!? これくらいできると思いましたが。」
「で、できるかよ!」
チラリと前を見ると服部は顔を伏せて泣いている。 当たり前だ。
「中央にナイフが落ちてきたのはご存知ですね。 ノーマルの方はそれで拘束されている相手を殺すのですが、仙道様はエスパー能力を使って殺してもいいのですよ! それは仙道様にお任せします」
「絶対にやらねぇ」
「やらないのは結構ですが私は24時間以内に殺せと言いました。 今から86400秒のカウントダウンがモニターに表示されます。 これが0になるとゲームを放棄したと見なし2人の、首のアクセサリーが爆発して死ぬことになるでしょう」
「は!?」
「どのみちこの女は死ぬのです。 なら仙道様でもこの女を処分してゲームに参加してもらいたいものですが...」
「マジかよ...そういえば四宮は、どうなった!?」
俺はずっと自分の事を気にしていて四宮の存在を忘れていた。人間は何か自分に不幸な事が舞い降りると自分の事しか考えない嫌な生き物だ。 俺ももちろんその一人だが四宮の存在を確認しなくてはならない。
四宮さえ無事ならばそれでいい。
「お連れの四宮様はもうゲームをスタートしてますよ。」
「は!? 四宮が!?」
「はい! 四宮様には2時間前にゲームの説明をして、仙道様と全く同じような状況にしました。」
「おい!それって...」
俺は恐る恐るジャブダルに問いかける。
ジャブダルは、俺の言いたい事が察したのか肩を揺らすほど笑いながら答える。
「もちろん拘束されていたルール違反者も容赦なく能力を使い殺しました。」
嘘だろ!四宮が人を殺した..
「仙道様、ここの場所では人殺しなんて普通なんですよ! 外の概念を捨ててください。 戦争と同じような感覚でいてくれればいいんですよ」
「戦争と同じ感覚でいろってか! 戦争の恐ろしいところは、人を殺しても何も罪に問われないところなんだよ! 人の命はそんなにも軽くない!!!!」
俺は、ジャブダルに怒りをぶつける。
部屋には俺の声が響き渡る。
ジャブダルは、俺の言葉を聞くと少し黙り
「それでは、今からゲームの準備を始めてもらいます」
そう短くつぶやくとジャブダルの写っていた。映像は消えカウントダウンが表示されてカウントがされていった。
四宮のシクシクと泣く声が乾いた鳴き声が嫌な感じで俺の耳を攻撃している。
俺は状況を理解できずうずくまることしか出来なかった。