第11章 魂の行方
同時刻 廃墟地
「武器を置き、反撃はしないでください」
美咲を人質に取った敵が静かに告げる。
今は従うしかない。
ルーたちはゆっくりと武器を地面へ置いた。
(僕の能力で美咲を助けるしかない……。でも、バレたら美咲が危ない……)
カイトは必死に思考を巡らせる。
頭の中で何度も作戦を組み立てていた。
「あなた達は私についてきます。これはボスの命令です」
「なぜお前はSに味方する……!?」
ルーが鋭く問いかける。
敵は淡々と答えた。
「恩返しです」
その言葉に、一同が息を呑む。
「ボスは、“私達”を蘇らせました。それは私に感動を与えた。だから私達はボスに協力しているのです」
敵は静かに続ける。
「悲しみに沈む人々を、蘇らせるために」
「……!! まさか、お前達は……!?」
「私達は日本人です。しかし、一度死んだ身なのです」
その言葉に衝撃が走る。
その隙に、カイトは地面の銃へ意識を集中させていた。
能力で銃を操作し、敵へ狙いを定める。
「無駄話は終わりです。それでは――」
パンッ!!
敵が言い終える前に銃声が響いた。
弾丸は、美咲を拘束していた触手へ命中する。
触手が弾かれ、美咲の拘束が解かれた。
「ルーさん! アナベルさん!」
カイトの声と同時に、二人が敵へ攻撃を仕掛ける。
その隙にカイトは美咲へ駆け寄った。
「美咲! 美咲……!」
肩を揺する。
しかし反応はない。
気絶しているようだった。
「カイト! 美咲を連れて離れろ……!」
「我々がいつまで抑えられるか分からない……!」
「っ……!」
カイトは美咲を抱え、廃墟の奥へ向かう。
だが――
「作戦を変更します」
敵の声が響く。
「あなたを優先的に排除します」
触手が一斉に伸びる。
その先端は鋭く変形し、美咲へ向かって突き出された。
「ぐっ……!」
カイトは咄嗟に美咲を庇う。
衝撃で二人は地面へ倒れ込んだ。
「うぅ……はっ……!」
その瞬間、美咲が目を覚ます。
「カ、カイト……!? 大丈夫!?」
敵は素早く距離を詰める。
「私のところへ来てください」
触手が再び美咲へ向かう。
しかし――
その動きが突然止まった。
「美咲……逃げてくれ……!」
カイトが苦しそうに声を上げる。
敵はわずかに驚いたようだった。
「すごいですね。私の動きを止めた」
静かな声が続く。
「だから、次はあなたを狙います」
触手の矛先がカイトへ向く。
その光景を見た瞬間――
「やめてぇぇぇっ!!!」
美咲の叫びが廃墟に響いた。
同時に、美咲の身体から凄まじいオーラが溢れ出す。
「……なんなのですか、あなたは」
敵の声に初めて動揺が混じる。
「ボスと何か関係があるのですか?」
「うるさい」
低く、冷たい声だった。
「カイトから離れて」
美咲の背中から溢れたオーラが、羽のような形を作り出す。
次の瞬間――
轟ッ!!
美咲が凄まじい速度で敵へ突進した。
敵はそのまま吹き飛ばされ、廃墟の建物へ激突する。
轟音と共に建物が崩れ落ちた。
「なんだ……あの真源の量は……!」
アナベルが目を見開く。
「とにかく今はカイトくんの保護だ!」
ルーとアナベルは急いでカイトを安全な場所へ運ぶ。
一方、美咲は瓦礫の中の敵を見下ろしていた。
「素晴らしい……。あなたには才能がある。私にも教え――」
敵が言い終える前に、美咲が拳を振るう。
「どうでもいい……!」
怒りを押し殺した声だった。
「もう目の前で……助けられたはずの命が失われるのを見たくない……!!」
美咲の掌から赤い粒子が溢れ出す。
それは一直線に敵へ放たれた。
「素晴らしい……。私も使いたか――」
次の瞬間。
赤い粒子が敵を飲み込み、その動きが止まる。
敵はその場へ崩れ落ちた。
「美咲……! 大丈夫か!?」
ルーが駆け寄り、肩へ手を伸ばす。
しかし――
パシッ。
美咲はその手を払いのけた。
「美咲……?」
ルーは息を呑む。
その瞳は、いつもの赤ではなかった。
奥底に黒い影を宿したような、不気味な色へ変わっている。
それは覚醒なのか。
それとも――暴走なのか。
誰にも分からない。
ただ一つ確かなのは。
美咲の中で、“何か”が目覚めてしまったということだった。




