第0章 始終の蝶
2015年 日本 4月13日
高校の新学期が始まって数日。
美咲は親友のサキとユキと一緒に登校していた。
「今年から受験勉強もっと頑張らないとなぁ〜。」
「ね。ユキは、西正大目指してるんでしょ?大変そうだよね。」
サキとユキが何気ない会話をしている。
「ミサキは、どこだっけ?」
サキがミサキに話しかける。
「え、私?私は山東大だよ」
ぎこちなく会話を返す。
「元気ないね、やっぱ弟君のことで…?」
「……うん」
美咲は、高校に上がる前に小学生の弟を不治の病で亡くしている。普段の生活はしっかりと行えていたが、ふと弟の事を思い出すことがあると、そろそろ気持ちを変えようと思っていても元気が無くなってしまう。
「ごめんね。やっぱ切り替えていかないとなんだけど…」
「仕方ないよ。身近な人を亡くして悲しまない人なんてそうそういないよ。」
「私だってミサキがいなくなったら十年ぐらい引きずるし」
サキとユキが励ましの言葉をかける。
「…ありがと。」
自分のほっぺをぱちんと叩き言う。
「私もしっかりしなくちゃ…!学校急ご!」
サキとユキは、安堵して頷く。
「いこいこ!」
「遅刻したらまた怒られちゃうしね」
またいつもの日常が始まった……
かに思えた。
しかし終わりの時は誰にも予想できない。
「ケホッ…ケホッ…ッ!」
美咲が、突然咳をし、地面に膝をつく。
「だ…大丈夫!?」
「ちょっ…ヤバイんじゃない?!救急車呼んだほうが……」
サキとユキは、突然の事に慌て、冷静さを忘れてしまう。
(胸が…苦しい。私………死んじゃうの…?)
美咲は、そのまま気を失う。
「あ、あれ?!私どうなっちゃったの?!」
目を空けた美咲に映り込んだ景色は現実とは想像できないものだった。自分自身が宙に浮いて体を動かすことができない。
「やだ…!まだ死にたくないよ!まだみんなとやりたい事があるのに…!!」
美咲は叫び泣く。
しかし誰にもその声は届かない。
その時、声が聞こえた。
「まだ死んでいないよ」
この声を聞いていると自然と心が落ち着くような感じがする。
「あなたは誰なの?」
「すぐに分かるよ少し寝ていてね」
すると美咲の意識はまた遠のいていく。
物語は直に(じきに)始まるだろう。運命の歯車が、音を立てて回り始めた。




