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見難い火傷の子  作者: 清風
220/228

リディア人親子「アフメット一家」の休日

挿絵(By みてみん)

見難い火傷の子220


リディア人親子「アフメット一家」の休日


深淵ダンジョン第十六エリア、第四紀完新世層

この地では、生きるものすべてが八倍の大きさで存在する。


工場長アフメットは、リディアではありふれた名を持つ実直な男だった。

妻ファトマは経理部長として工場を支え、家でも財布の紐を握る。

息子エムレはその名の通り、誰にでも懐く無邪気な子どもだ。


観覧車が、茜色に染まるバビロニアの空を背景にゆっくりと回る。


リディア王国に拠点を置く『なまけもの君トラック製造』。


工場長のアフメット、経理部長のファトマ、そして愛息エムレの三人家族は、有給休暇を使ってこの「爆炎バビロニア遊園地」にやってきた。


名物の『たこやき』に手を出しかけたが、鉄板の熱気にアフメットが眉をひそめた。

「……今日はやめておこう。休みに火傷は洒落にならん」

代わりにエムレの手には、大きなソフトクリームが収まった。


親子お揃いのうさ耳カチューシャをつけ、エムレがソフトクリームを頬張る。


「父さん、溶ける溶けるー!!」


「待て待て、エムレ!落とすぞ!」


「あんたたち、走らないの!」


電磁コースターに乗れば、アフメットの威厳もどこへやら。


「うおおおおおお!!」


「父さん、最高だよ!もう一回!」


「もう無理だ……目が回る……」


海中コースターでは、八倍サイズの魚影に三人が声を揃えた。


「でかいな!?これ、八倍サイズか!?」


「写真!写真撮らなきゃ!」


ひとしきり遊び倒したあと、三人は最後に観覧車へ乗り込んだ。


観覧車の頂上。

西日に照らされるバビロニアの全景を見下ろして、エムレが満面の笑みで言った。


「父さん、母さん。また来たい!」


アフメットが照れくさそうに笑い、ファトマが優しく肩を叩く。


「……ああ。そうだな」

その短い返事には、埋め合わせのような響きが少しだけ混じっていた。

休暇申請書に判を押した瞬間まで、呼び戻される気がしていた。


「今度はもっと休み取ってね。アフメットさん、工場長なんだから」


バビロニアの平和な夕暮れ。


この遊園地は、戦う者にも働く者にも、ほんのひととき心を休める場所だった。

アフメット一家もまた、

その笑顔は、明日を乗り切るためのものだった。

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