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見難い火傷の子  作者: 清風
219/238

バビロニア・アトラクション

挿絵(By みてみん)

見難い火傷の子219


バビロニア・アトラクション


――青銅の時代。

深淵ダンジョン第十六エリア、第四紀完新世層


この地では、生きるものすべてが八倍の大きさで存在する。


爆炎のバビロニア遊園地を作り。

直径400mの観覧車。

頂上(地上400m)に達するとバビロニアの全景が眺められた。

結界魔法車両はソニックブームからも守られた電磁コースター。

時代を遙かに超えていた。

海中ローラコースターは潜水機能付き。海の生態を満喫出来る。


冒険者ギルド長ハッサンは遊園地の仕様書を眺めてワナワナと震えていた。

意味が判らなかったのだ。


―――――――――――――――――――――――――――


『赤き閃光』から依頼された案件

彼らの後輩パーティ『灰の雛』の自信を取り戻してほしいと。

『赤き閃光』が対応したオルカリアン事案に連れて行ったら

自信を喪失したという。


リーダー「あの話か。若い冒険者にはショックを受ける事案だしな。」

深淵珈琲をズズッと啜った。


『爆炎』目の前に整列した『灰の雛』が自己紹介を始めた。


―――――――――――――――――――――――――――


灰のはいのひなメンバー自己紹介

——初等冒険者学校・児童6年生卒業課題パーティ

「灰の雛」定例ミーティングより抜粋。


・ルーク・ヴァルガス(12歳・前衛志望・灰土家出身)

「えっと……俺はルーク・ヴァルガス!

火傷薬の知識だけは人一倍あるつもりだ。

赤き閃光みたいに、誰かを守れる強い冒険者になりたくて……

このパーティに入った。

まだ全然力不足だけど……絶対に、みんなを連れて帰る!」(少し声が震えている。最近の挫折がまだ残っている)


・セリア・ルミナ(12歳・記録係・筆頭魔導書士)

「セリア・ルミナです。

記録と整理を担当しています。

……ルークがまた無茶しそうになったら、ちゃんと書き留めて、後で突きつける役目ね。

感情より事実。

それが私のルールです。

よろしくお願いします。」(いつも通り冷静。ルークを横目でチラ見しながら)


・ミラ・フィン(11歳・回復・支援魔法担当)

「ミラだよ?!

みんなの傷を治したり、元気出させたりするのが仕事!

ルークくんがまた泣きそうになってたら、すぐに癒しの光出してあげるね♪

……あ、でも本当は私も怖いこといっぱいだけど、みんなが頑張ってるの見ると頑張れちゃうんだ!」(明るいけど、ちょっと無理してる笑顔)


・レン・シャドウグラス(12歳・斥候・罠解除担当)

「……レン。

目立つのは苦手。

でも、危ない場所は一番に気づく自信ある。

ルークがまた一人で突っ走ったら……後ろから引っ張り戻す。

……よろしく。」(小声で、常に俯き気味。でも目だけは鋭い)


・ガルド・ストーン(13歳・重盾前衛・最年長)

「ガルド・ストーンだ!

盾持って一番前に立つのが俺の役目!

ルーク、お前がまた無茶すんじゃねえぞ。

俺が盾になるから、ちゃんと後ろで指示出せ。

……灰の雛は、誰か一人でも欠けたら終わりだ。

だから絶対に、全員で生きて帰る!」(声はデカいが、仲間思いがにじみ出ている)パーティ共通の掛け声

ルーク「灰は、まだ燃え残ってる火だ……!」




全員「「「いつか、赤く輝くまで!!」」」これが現在の「灰の雛」のメンバー5人です。


―――――――――――――――――――――――――――



リーダー「そうか。ポン、相手してくれ」

ポン「了解」


初めはポンに付けられた。


巨大遊園地の一角。

結界魔法で守られた演習エリアでは、ポンが仕掛ける「幻術」の雨が降り注いでいた。


最初は、ただ翻弄されるだけだった。

ポンが作り出す幻の魔獣にルークは空振りし、ガルドの盾は虚空を叩いた。

『灰の雛』にとって、それは「戦い」ですらなかった。


だが、三日目。

演習の空気が、決定的に変わった。


ポンの「幻術」が突きつける現実

ポンの幻術は、単なる「見せかけ」ではない。

相手の脳内にある「恐怖」や「迷い」を読み取り、それが最も効果的に機能する形で投影される。


ルークの「迷い」: 彼が幻に追い詰められるのは、必ず「誰かを守りきれない」瞬間だ。ポンはそこを正確に突く。


セリアの「冷徹さ」: 彼女が事実を書き留めようとするたび、その記録帳を真っ白な霧に変える。


しかし、その「嫌がらせのような演習」こそが、彼らの**「処理能力スペック」を強制的に引き上げていた**。


『灰の雛』のデバッグ記録:最適化される連携

1. ルーク・ヴァルガス:直感の「コード化」

ルークは、ルールのない戦い(ポンの幻術)の中で、自分の感覚を言葉にすることをやめた。

「来る!」と叫ぶ代わりに、彼はガルドの背中に触れるだけで、次にポンがどこから攻撃を仕掛けてくるかを伝えるようになった。

「知識」が「反射(ハードウェアレベルの反応)」に変わった瞬間だった。


2. セリア・ルミナ:ログの「リアルタイム化」

セリアは、幻術に惑わされることをやめた。彼女は「霧の密度」と「ポンの気配」を数値化し、パーティ全体へ指示を飛ばす。

「左、霧の濃度0.8。ガルド、その軸から30度左へ移動。ルーク、その位置なら斬れる」

彼女の言葉は、まるで最新の航法システムのように、パーティの移動ルートを確定させていく。


3. ガルド・ストーン:盾から「アンカー」へ

かつてはルークの無茶を止めるだけの盾だったガルドが、今はルークを「最適な攻撃位置」へ配置するための**「基準点アンカー」として機能し始めた。

ガルドが動けば、ルークもミラもレンも、全員が一番「機能する場所」へ収まる。

パーティという名のシステムが、初めて「完全同期フルシンクロ」**した。


4. ミラとレン:加速するフィードバック

ミラが魔法でルークたちの疲労を消し、レンがポンの幻術の「端っこ(ほころび)」を見つけて鋭い短剣を突き刺す。

ポンの幻影が、レンの一撃でバリバリと音を立てて剥がれていく。

バグ」を「現実(仕様)」に引きずり戻す、彼らの連係プレーだ。


リーダーの視点:最適化の完了

演習の様子を、リーダーは観覧車のゴンドラから眺めていた。

手には、深淵珈琲と、ポンから送られてくる演習の「ログデータ」。


「……ほう。ガルドの盾の角度、前回の6度から修正したか。ルークの踏み込みも、0.1秒速い。学習してるな」


隣に座るギルド長ハッサンが、電磁コースターの仕様書を片手に頭を抱えている。


「リーダー……これは演習なのか? それとも彼らを『改造』しているのか?」


リーダーは苦笑する。


「改造なんてとんでもない。ただ、『本来持っていた性能』を制限していた呪縛バグを外しただけだ」


結末:灰は、確実に赤く

演習終了の合図と共に、ポンが幻術を解く。

そこには、三日前とは別人のような顔つきで、息を切らしながらも背中を預け合う五人の姿があった。


ルークが、ガルドと拳を合わせる。

レンが小さく頷き、ミラが誇らしげに胸を張り、セリアが記録帳をパタンと閉じる。


ルークの瞳からは、もう恐怖の震えが消えていた。

その代わりにあるのは、自分たちの力が「どこまで通用するか」を試したくてたまらないという、純粋な闘志。


「……勝ったな、ポン」


ルークの言葉に、ポンはタヌキの姿のまま、満足そうに尻尾を振った。

『灰の雛』のOSは、今、確実に新しいバージョンへ更新された。


「灰は、まだ燃え残ってる火だ……いつか、赤く輝くまで!!」


彼らの掛け声は、初日のような不安げなものではなく、地鳴りのような響きを持って、遊園地の空に溶けていった。


『灰の雛』は、次に爆炎パーティの講師の1人ニールに付けられた。


ニールという諜報技術のエキスパートを講師に迎えた『灰の雛』の演習は、

これまでの「正面突破」を前提とした戦闘訓練とは全く異なる、**「戦わずして状況を支配する」**ためのハードコアなカリキュラムへと変貌しました。


ニールが彼らに課したのは、単なる「隠れる」技術ではありません。**「戦場の情報を制御し、敵の演算能力を狂わせる」**ための高度な情報戦術です。


1. 物理通信インターフェース:「まぶたモールス」のインストール

ニールは彼らに、完全に沈黙した状況下でもパーティを機能させるための「身体言語」を徹底的に叩き込みました。


瞼によるモールス信号: 敵の目前で拘束されたり、魔法による音響妨害を受けていたりする状況下でも、仲間同士で状況報告を行うためのプロトコルです。


演習の様子: 互いの目をじっと見つめ合い、瞬きの回数と長さだけで「敵の数」「罠の配置」「撤退タイミング」をやり取りする。セリアが脳内でそれを高速変換し、ルークたちが無言のまま陣形を変える。この練習は、数日間、食事中も睡眠中も(交代制で)行われました。


2. 「違和感ノイズ」の管理と偽装

ニールは『灰の雛』のメンバーに、あえて「目立つ動き」をさせ、敵の索敵システムを意図的に誘導する方法を教えました。


レンの進化: 斥候であるレンは、森の生き物の鳴き声を真似て敵を誘き出すだけでなく、ニールが教えた「あえて隙を見せてから情報を誤認させる」ディセプション(欺瞞)技術を習得。


ガルドのフィルター役: ガルドはただ盾を構えるのではなく、敵が「一番狙いやすい」角度に盾を向け、敵の視線を誘導して他のメンバーへの攻撃を完全に遮断する「ヘイト管理」の極致を体得しました。


3. 脳内プロトコルの同期

ニールの訓練を経て、彼らのパーティとしての「同期率」は飛躍的に上昇しました。


ルークの判断: 「敵の動きが速い」と直感で騒ぐのではなく、「あそこに見える敵は囮だ。本命はニールさんが教えたあの『気配の揺らぎ』の先にある」と、情報を論理的に再構築できるようになった。


セリアの分析: ニールに叩き込まれた諜報術により、戦場全体の情報を「ノイズ」と「重要信号」に分離。必要な情報だけを瞬時にルークへ送信する、パーティのメイン演算ユニットとして覚醒しました。


ポン戦(ポンとの演習): 複雑な幻影に動じない「ハードウェアの強化(メンタルと反射神経)」。


ニール戦(ニールとの演習): 戦場全体を俯瞰し、敵の作戦を上書きする「ソフトウェアの更新(戦術と諜報)」。


「戦場で最も致命的なのは、敵に見つかることではない。敵にこちらの『作戦』を読まれることだ。ニールは彼らに、敵のOS(作戦)を逆手に取り、こちらの有利なコードを上書きする技術を教えている。」


『灰の雛』の変貌:「赤い閃光」への一歩

訓練を終えた彼らは、かつてのように「ルークが突っ走って、みんなが慌てる」パーティではありません。


ルーク: 全身から「殺気」が消え、影の中に溶け込むような動作を身につけた。


パーティの空気: 敵の気配を感じた瞬間、誰も何も言わずに、まるで最初からそう動く予定だったかのように散開する。その姿は、かつて憧れた『赤き閃光』のメンバーたちに近い「プロの佇まい」を醸し出しています。


「灰は、まだ燃え残ってる火だ……いつか、赤く輝くまで!!」


この後、『灰の雛』は、出来上がった遊園地で動作確認をした。


『灰の雛』の五人は、今や単なる「初等学校の卒業課題パーティ」の枠組みを完全に超えていた。


ポンによる「幻影ノイズの排除」と、ニールによる「諜報インテリジェンスのインストール」。二人のスパルタ講師を経て、彼らのOSは劇的にアップデートされた。

次にリーダーが命じたのは、彼ら自身が関わった**「爆炎のバビロニア遊園地」での動作確認デバッグ・ラン**だった。


実機環境でのシステム稼働試験

遊園地の各施設は、単なる娯楽ではない。それはリーダーが仕掛けた、高負荷な「冒険者スキル・シミュレーター」だった。


1. 電磁コースター:慣性制御の同期試験

ソニックブームをも凌駕する速度で駆け抜ける電磁コースター。この車両の座席に座った五人は、ただ叫ぶのではなく、**「高速移動中の状況判断」**を訓練させられた。


電磁コースターでルークが一瞬視界を失う

セリアが異常を先に拾う

セリアの解析: 猛烈なGがかかる中で、視界を流れる景色から異常バグを瞬時に特定する。


ガルドが支え、レンが違和感を指摘し、ミラが負荷をケアする

ガルドの重心: 車両が急旋回する瞬間、ガルドがルークの姿勢を物理的に支え、ルークは空中で正確に「目標(架空の敵)」を射抜く準備をする。


2. 海中ローラコースター:閉鎖環境下での通信試験

潜水機能付きの海中コースターが深い水底へ潜る。そこは結界で守られているとはいえ、魔力密度の高い「高圧エリア」だ。


瞼のモールス信号セリア・ルミナ: 結界外の圧力が通信魔法を阻害する中、ルークとセリアは互いの目を見合わせるだけで「酸素濃度(魔力保持量)の低下」を伝え合い、即座にエネルギー効率を最適化する。


3. 大観覧車:俯瞰視点システム・モニタリングの習得

頂上(直径400m)に達したとき、五人はバビロニアの全景を見下ろした。

直径400m

ニールの諜報的視点: ここから見る街並みは、ただの景色ではない。「どの路地が閉鎖されているか」「どこで神殿の動きが活発か」。


ルークの自覚: 観覧車の最頂点で、彼は初めて「灰」がどこまで燃え広がれるかの「射程距離」を理解した。

五人が訓練成果で立て直した。


結界に叩かれた幻獣の爪が、青白い火花になって霧へほどけた。

ルークはもう叫ばなかった。ただガルドの背に指を二度触れた。

それだけで盾が半歩ずれ、レンが死角へ滑り込み、ミラの支援光が走る。

三日前には成立しなかった連携が、今は呼吸のようにつながっていた。


システム稼働、開始

動作確認を終えた彼らは、遊園地の出口でリーダーとニール、そしてポンと合流した。

彼らの装備、表情、そして五人の距離感。すべてが初日とは比べ物にならないほど「洗練」されていた。


「動作確認は完了か?」とリーダーが深淵珈琲を飲みながら尋ねる。

ルークは、かつて震えていたその声で、今は確信を持って答えた。


「――はい。システム、オールグリーンです」


セリアが記録帳を閉じ、ガルドが胸を張り、レンが影から姿を現し、ミラが晴れやかな笑顔を見せる。

その姿は、憧れだった『赤き閃光』のメンバーたちと並んでも、決して遜色ない「一つの炎」の形をしていた。


「灰は、まだ燃え残ってる火だ……いつか、赤く輝くまで!!」


彼らの合図と共に、バビロニアの空に祝砲のような魔導の光が上がる。

『灰の雛』の卒業課題は終わった。だが、彼らの冒険という名の「運用」は、今まさに始まったばかりである。


「よし。じゃあ、次の『依頼』へ行こうか」


リーダーの言葉に、五人は迷いなく頷いた。

彼らはもう、雛ではない。バビロニアの空を翔ける、一羽の猛禽のように強靭なパーティとなっていた。彼らはもう、雛ではない。バビロニアの空を翔ける、一羽の猛禽のように強靭なパーティとなっていた。

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