トラップ・ラブビート
罠を仕掛けた。誰もいない学校の玄関。閉じ込めたのは小さな小さな悪だくみだ。想いのこもった希望の光。祈りを込めてその場を後にする。
君を初めて知ったのは、真夏の修学旅行の日々だった。沖縄の澄んだ海にイカダを浮かべようと、君はみんなに呼び掛けていた。総勢十人程で作り上げた流木を繋ぎとめただけの頼りないイカダは、広い海原の真ん中までふよふよと流されていくと、乗っていた君たちと一緒に沈んでしまった。けれど、楽しそうな笑い声は見事作り上げていたよね。沖から戻ってきた君の笑顔は、誰よりも輝いて見えた。
季節は変わって初秋。残暑の残る高い空の下。大きな歓声と応援が、熱の入った競技の数々を更に熱く、激しくさせていた。体育祭は今でもその熱気を思い出すことが出来る最高の一日になった。君は最後尾でもらったリレーバトンを、歯を食い縛って先頭まで持っていったんだよね。みんなと一緒に声を張り上げながら、熱の中で初めてとくんと胸の鼓動に気が付いたんだ。
風が雪を纏う冬の日々。寒さが厳しくなる度にクラスはその心を受験に向けていき、いつの間にか君も受験生の顔になっていた。椅子にじっと座っているなんてこと、大嫌いのはずなのにね。君はいつも一番最後まで教室に残って鉛筆を走らせていた。外は暗くなっていて、暖房も切れていてとっても寒かったのに、君は懸命に戦っていた。だからだよね。掲示板に君の数字を見付けたあの笑顔はとても輝いていた。君の目尻に浮んだ涙を見つけた時、私もすごく嬉しくなった。
そして桜の咲く頃。私たちは卒業を迎える。中学生という中途半端な時間が、今日終わりを告げた。
……でも。
罠を仕掛けた。君の靴箱。小さな手紙をそっと置いてきた。校舎の裏に咲く桜の木の下。君を待つこの心は、思えばあの夏の日に決まっていたんだ。
青く晴れた空の下。飛び立つ小鳥は、綺麗な歌を歌っていた。
どうしても千文字以上に出来ませんでした。いつも以上に短いですが、ご勘弁ください。




