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**闇落ち白狐のあやかし保育園  作者: うちはとはつん
第2章 中核都市ベイルフ
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086 がしゃ髑髏、ぜったいに殺すマンモードになる

日差しが照りつける盆地の野原に、みっちりとアンデッドが集まり、緩やかな渦を作り出す。


一体、なにをしているのか?


いぶかしむダークエルフの前で、渦の速度があがっていく。


スピードが上がるにつれて、アンデッド同士の甲冑が、激しくこすり合わさるのだった。


肩や腕がぶつかり合い、お互いに相手を削りとっていく。


甲冑がそれを着ている者、そして周りの者を擦り下ろしていくのだ。

干し肉と砂利を大なべに入れ、延々とかき回すような光景だった。


摩擦熱で上昇気流がおきる。

気流と共に干し肉をローストしたような匂いが、山頂のサンフィルドまで届いた。


「イースっ!」


その異様な光景に、たまらずサンフィルドは振り返りその名を呼ぶ。

するとイースが、そっと視線を外した。


――こいつ目を逸らしやがった、まだいる気だっ!


イースを睨みつける、サンフィルドの頬に突風が当たる。


「んんっ!?」


何かと思い視線を戻すと、アンデッドの中央に、巨大なスケルトンがうずくまっていた。


こめかみには、ねじれた二本の角があり、背中には骨の翼が生えている。


「な……うぐっ!?」


サンフィルドは声を出しそうになる、自分の口を押さえた。

見ると巨大スケルトンの傍にいるアンデッドから、次々と粉を吹いていく。


あっという間に、盆地に集まる十万以上のアンデッド全てが、白い砂と化していった。


「ふーっ、ふーっ、ふーっ」


リールーの、荒い息づかいが聞こえる――


    

    *  



ここはどこなのか?

がしゃ髑髏(どくろ)はその変化に気付き、不思議そうに辺りを眺めた。


ゆっくりと慎重にだ。

何せ自分の頭の中に、怖い方たちを乗せている。


何かあると、怒られてきっと砂にされてしまう。

頭を傾けてはいけない。


がしゃ髑髏は周りを良く見るため、ゆっくりと立ち上がる。

頭の中で、小さな笑い声が響いた。


お一人起きているらしい。

機嫌が良いようなので、そのまま動き続ける。


周りは山しか見えないので、高い所へ登ることにした。

ゆっくりゆっくり、山頂へ向かう。


胸の高さにまで生える木々が邪魔なので、へし折ることにした。

一本を掴み力を入れる。


ミシリと音がした時、頭の中で起きている方が小さな声をあげた。

どうやら折るな、と言っているようだ。


言葉はわからないが、がしゃ髑髏の目のふちをペシペシと叩いておられる。


仕方がなく、がしゃ髑髏は体を横にして更にゆっくりと登る。

登るがしゃ髑髏に驚き、木々にとまる鳥たちが飛び立っていった。



ようやく山頂につく。

頂に立つと遮るものが何もなく、どこまでも見渡せた。


少し離れた頂に別個体の、がしゃ髑髏がたたずんでいる。


その先の頂にも、幾つかの姿が見えた。

夏の日差しを受けて、その白い巨躯が輝いている。

反対を振り向くと、こちらもそうだ。

幾つもの姿が見える。


皆が、思い思いの方向を眺めていた。

何を見ているのか?


がしゃ髑髏も、正面を眺める。

馴染みのある森のずっと向こうに、何か嫌なものを感じた。


森の向こうに、胸糞悪い生者どもが溢れているのだ。

久しぶりに感じる、嫌悪感だった。

どうしてこの感覚を、今まで忘れていたのか?


これこそが、がしゃ髑髏の全てだというのに!

がしゃ髑髏の中で、嫌悪がどんどん膨れていき憎悪へと昇華する。


少し離れた頂に立つ、別個体の髑髏が山を降りていった。

次々と、他の髑髏も山を降りる。


角付きのがしゃ髑髏も、憎悪にかられて山を降り始める。

ただし慎重に、ゆっくりとだ。

頭を傾けてはいけない。


なんと、山は降りる方が難しかった。

更に、がしゃ髑髏の歩みは遅くなる。


気は焦るが、慎重に慎重に……

なにせとても怖い方の、眷族たちを乗せているのだから。






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