緊張
校内歌劇コンクール当日、体育館に、下級生四十名、上級生四十名、講師二十名の計百人が集まっていた。パイプ椅子に座っている。
「あの子たちよ」
「下級生の分際で」
「どうせろくな劇、できやしないわよ。笑ってやりましょう」
本番前にいざこざはごめんなので、私と熱美は常に果矢と怜夏の口を塞いで、抽選が始まるのを待った。
抽選の結果、私達の劇の順番は七グループ中、最初から数えて四番目となった。澪先輩と樹理先輩はトリの前、最後から二番目だ。
体育館の照明がゆっくり消えて行く。カーテンも閉め切っているので真っ暗になる。
「グループ名『トリプルトリオ』。演目『白雪姫』」
アナウンスがあった。劇が始まる。
「演劇はつまり出ハケの繰り返しだ」
授業で、凛さんはそんなことを言っていたっけ。出ハケの出はステージへ出ることで、ハケはハケル、すなわち袖に消えることだ。
上手や下手から出てきた役者が、ステージでしゃべり、歌い、踊り、上手か下手のどちらかに消えて行く。
『トリプルトリオ』の上級生たちは、落ち着いた様子で劇を進めていく。
スポットライトの中で白雪姫が歌っている。イメージは森、かな? 何だかぼやけたイメージだ。でも、声がきれい。
魔女役の人が下手袖から登場した。上手い。腰の曲がり具合や、声音や手の震えが効いている。やっぱり一年間先に学んできただけのことはある。
二番目のグループの劇はダンスシーン多めだった。ダンスが得意な人達でグループを作ったのかもしれない。大勢で踊ることを群舞というが、上級生の群舞は見事に揃っていた。つま先や手先の向きと角度、ターンのタイミング、足を上げる高さ。ポイントが揃っているから、全部揃っているように見えるんだ。勉強になる。
本番一時間前には体育館を抜け出して教室へ行き、柔軟運動や発声練習をした。
怜夏は台本を開いて閉じてを繰り返している。果矢は教室内の同じところを歩き回っている。私は十秒おきに時計を確認してた。
「みんな、緊張してるん?」
熱美が言った。
「してません」
「してねーよ」
「すごくしてる」
「大丈夫やって。あれだけ練習したんやから、上手くいくいく。練習通りやればええねん。練習仕切ってきたウチが保証する。今日は絶対うまくいくで」
熱美の言う通りだ。




