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「フェアも可哀想だ。あんな我儘王女が姉などと……」

我儘王女のその名に恥じず、自分の状況を理解していない。

大国アショークのクロヴィエ王子の側室として迎えられたとしても、その立場は人質である。

魔王が発現し、勇者が声をあげ旅に出た。歴代の勇者の中では途中で倒れた者もあったが、今回においては各国の連携がとれ、魔族との善戦を繰り広げている。勇者の他に賢者、魔術師、戦士と神に冠された称号を持つ者が揃い、先ほど聖女までもが随行している。この戦いの勝利はほぼ確実である。

そうなれば、事後の処理の下準備に乗り出す者がいても当然だ。

王女は戦勝国となるであろうアショーク王国の貢物である。聖女と血を分けた姉なのだ。血をつなげる価値が、あの王女にあるのはそういった理由だ。しかしこれほど我儘な状況を鑑みれば、アショーク国がと聖女が王子の婚姻相手にと入れ替わる要望を出すことができる。大国と小国のバランスを見事に無視――いや、意識していないのだ。母国の利益を認識していない。


(――この様子じゃあな)


苛立つクロヴィエの様子を見て、王女との相性の悪さは明白だ。

王子との婚姻は、十二の時分より予定されていたことだった。王子との面会も幾度と無くおこなわれたが、馬が合わない、その一言につきた。しかも側には聖女である。

聖なる王女はその見目も愛らしく、すぐに王子と意気投合したと聞いている。実際、騎士の何人かはその様子を目にしたことがある。我儘王女とは違い、おとなしく微笑む様子にその場の誰もが心を奪われた。


対して、第一王女。

小国とはいえ、王女たる者に随行したのはひとりきり。そのメイドは、容姿は優れているが、だからと言って、何ができるのだろう。王女が話す最中も、表情を一度も崩すことない女。城の従者が話しかけても、ろくな応答がなかったと報告を受けている。


奇跡の力を持つ妹、我儘を許される生活、一人しかいない従者。


(もしかしなくても、地元でも嫌われてるんじゃねえの)


そう思うと、密かに騎士たちは王女にも同情してしまうのだった。


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