第7話:奈落の狼、完全消滅
デバフを受けた奈落の狼の赤い双眸が揺れ、影のような軌跡が薄れ始め、黒い毛並みが光を吸い込むような質感を失い、まるで存在そのものが崩れ始めるように輪郭が不規則に震え続けていた。
触れた瞬間に流れ込んだステータス強制ゼロという理解が現実として形を取り、奈落の狼の筋力も速度も
生命力も全てが消え失せ、影の獣がただの脆いガラス細工のように変質していく様子が視界に鮮明に映り続けていた。
その変化は一瞬でありながら永遠のように感じられ、赤い双眸の光が消え、黒い毛並みが粉のようにほどけ、影の獣が塵へと砕け散る瞬間、空気が静まり返り、死の恐怖が一気に消え去った。
奈落の狼は完全に消滅した。
岩肌の上には何も残らず、ただ粉塵がゆっくりと沈んでいく白い揺らぎだけが漂い、さっきまで死を目前にしていた現実が嘘のように静まり返り、体の奥底に残っていた恐怖が遅れて溶けていくように消えていった。
自分の体には傷ひとつなく、呼吸がゆっくりと戻り、鼓動がまだ速いままなのに、死の瞬間を越えたという実感だけが重く胸の奥に沈んでいた。
粉塵はゆっくりと岩肌に落ち、ライトの光を受けて淡く揺れ続け、奈落の狼が本当に存在していたのか疑うほど静かな空気が広がり、さっきまでの殺意と速度が嘘のように消え去り、暗闇の岩肌エリアが再び冷たい静寂を取り戻していた。
その静寂は不気味なほど深く、岩壁の奥から響く低い唸りのような振動だけが空気を揺らし、奈落の奥に潜む何かがまだこちらを見ているような感覚が背筋を撫で続けていた。
死の恐怖を越えた直後の静けさは、むしろ次の危機を予感させるほど重く、体の奥底に残った緊張が完全に抜けることはなかった。
視聴者数は100に急増していた。
画面の下部が白い文字で埋まり続け、コメント欄が困惑と混乱で揺れ続けていた。
「は? 今何が起きた?」
「CGか?」
「ウルフが消えたんだが」
「影の狼ってこんな死に方するのか?」
視聴者たちは状況を理解できず、ただ消滅したという事実だけを捉えて混乱し続け、画面越しに押し寄せるその反応が、さっきまで死を目前にしていた現実との落差をさらに強調し、体の奥底に残っていた恐怖がゆっくりと現実へ戻るように薄れていった。
コメント欄の流れは止まらず、白い文字が画面を埋め尽くし、視聴者たちの困惑と興奮が混ざった熱量がスマホ越しに押し寄せ、暗闇の岩肌エリアの静けさと対照的に画面だけが騒がしく揺れ続けていた。
その熱量は、さっきまで死を目前にしていた現実をさらに際立たせ、奈落の狼が塵へと砕け散った瞬間の静けさが逆に不気味なほど鮮明に思い出されていた。
脳内に響いたシステム音の余韻がまだ消えず、【神の采配】という力が本当に現実のものなのだと理解させられ、触れた瞬間にステータスをゼロへ書き換えるという異常な能力が自分の中に存在しているという事実が、恐怖よりも重い現実として胸の奥に沈んでいた。
その力が偶然ではなく、奈落の奥に潜む何かと関係しているという確信がゆっくりと形を取り始め、ただ生き残っただけでは終わらないという予感が暗闇の奥から静かに滲み出していた。
奈落の闇はまだ牙を剥いていないだけで、次の瞬間に何が現れるのか分からないまま、視線は自然と岩肌の奥へ吸い寄せられていった。
死の恐怖を越えたその場所で、まだ何かが待っているという確信だけが胸の奥に静かに灯り、奈落の第1層はただの入口ではなく、今の消滅が始まりにすぎないという理解がゆっくりと形を成し始めていた。
粉塵が完全に沈む頃、暗闇の奥から低い唸りが再び響き、奈落の奥に潜む何かがこちらを試すように気配を揺らし、次の一歩を踏み出すしかないという現実が静かに迫っていた。
奈落の狼が消えた静寂の中で、【神の采配】の力だけが唯一の希望として脳内に灯り続けていた。
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