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第12話:巨拳とデコピンの衝突

煉獄の巨人ギガンテスの拳が振り下ろされる瞬間、部屋全体が揺れ、岩壁が軋み、床が沈み込むほどの圧力が空気を押し潰した。

巨体が生む影は天井から床までを覆い、逃げ場を完全に奪い、ただ死だけが目前に迫る状況だった。

その拳は岩盤を粉砕し、地形を変えるほどの質量を持ち、A級パーティが全滅する理由を一瞬で理解させるほどの破壊力を宿していた。


巨人の腕が落ちてくる速度は、視界が暗く沈むほど速く、風が唸り、空気が裂け、床が悲鳴を上げた。

その圧力は体を押し潰すほどで、呼吸が浅くなり、視界の端が揺れ、死の予感が背骨を冷たく走った。

だが、その瞬間──こちらは一歩も引かなかった。


巨拳が迫るタイミングに合わせて、指先がわずかに動いた。

軽く、しかし正確に。

まるで巨大な質量を迎え撃つことが当然であるかのように、指先が巨人の拳へ向けて伸びた。


そして──

軽くデコピンをした。


その瞬間、空気が弾けた。

巨人の拳に触れた指先から、脳内に流れ込むデバフの感覚が走り、ステータスを強制的にゼロへ書き換える力が発動した。

巨体の筋力、速度、耐久、生命力──その全てが一瞬で崩れ落ちるように弱体化し、拳の質量が急激に失われ、岩盤のような皮膚がわずかに震えた。


巨人の拳は、落ちてくる勢いのまま床へ叩きつけられたが、その衝撃は本来の破壊力とは比べ物にならないほど弱く、床に浅い亀裂を刻むだけで終わった。

巨体が揺れ、赤い瞳がわずかに濁り、膝が沈み、部屋全体の圧力が一瞬で軽くなった。

デバフは確かに通った。


巨人は理解できないというように、ゆっくりと顔を上げた。

その瞳には怒りではなく、ただ何が起きたのか分からないという困惑が宿っていた。

煉獄の巨人が、軽いデコピン一発で弱体化したのだ。


視聴者数は一気に5,000人へ跳ね上がった。

コメント欄は爆発したように流れ続け、画面の下部が白い文字で埋まり続けた。


「自殺キター」

「いや、待て…?」

「今デコピンしたよな?」

「巨人の拳に指一本で迎え撃つな!」

「何が起きてるんだこれ」


視聴者たちは状況を理解できず、ただ巨人の拳をデコピンで迎え撃ったという事実だけを捉えて混乱し続けた。

その熱量は、奈落の狼が塵へと砕け散った瞬間の静けさを逆に不気味なほど鮮明に思い出させ、今の異常さを強烈に際立たせていた。


そして──

画面を見つめるひとりの視線があった。


元事務所の先輩配信者、シオン。

美少女として人気を持ち、トップクラスの視聴者数を誇る彼女は、偶然この配信を見つけてしまった。

最初は興味半分だったが、今は違う。


巨人の拳をデコピンで迎え撃つ瞬間を見た彼女は、

息を飲み、椅子から立ち上がり、画面に顔を寄せるほどの衝撃を受けていた。


「……嘘でしょ。あれ、デコピンで止めたの……?」


その声は震えていた。

巨人の影が揺れ、デバフが浸透し、部屋の空気が変わる中、

シオンの視線は画面から離れなかった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

本作はここからさらに盛り上がっていきますので、どうぞお楽しみに。

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