第1話:大手配信事務所からの追放宣告。俺は今日、無能の烙印を押された
大手配信事務所ブレイブ・チューブの社長室は、いつ来ても息が詰まるほど静かだった。
壁一面に飾られたトップ配信者たちの巨大パネルが、まるで俺を見下しているように感じる。
カナタは呼び出された理由を理解していた。
最近の配信は伸び悩み、視聴者数は底辺。
コメント欄は冷笑ばかり。
事務所の期待枠から外れたのは自覚している。
だが、それでも。
今日の呼び出しは、ただの叱責では済まない予感があった。
社長の机の前に立つと、彼は書類を一枚だけ取り出し、ため息をついた。
「カナタ。お前はもううちのチャンネルに不要だ」
その言葉は、刃物より冷たく、重かった。
「……理由を聞いてもいいですか」
カナタは声が震えないように必死に抑えた。
社長は椅子にもたれ、鼻で笑った。
「理由?結果がすべてだろ。お前の配信は数字が取れない。視聴者の反応も悪い。企画力もない。トークも弱い。ダンジョン攻略も凡庸。お前に残ってもらう理由が一つもない」
淡々と、切り捨てるように言われる。
「努力はしてきました。改善案も出しました。新人のサポートも……」
「そんな誰でもできる雑用はどうでもいいんだよ。結果が出てない時点で無能なんだよ」
社長は机を指で叩きながら続けた。
「お前の枠は、もっと数字を取れる奴に回す。うちは慈善事業じゃない。お前みたいな底辺を抱えておく余裕はない」
カナタは拳を握りしめた。
悔しさが喉を焼く。
だが、反論すれば状況が好転するわけでもない。
「……わかりました。退所手続きは、いつまでに」
「今日中だ。配信機材も返却しろ。お前のアカウントは今月末で削除する」
即日。
容赦など一切ない。
社長は最後に、心底どうでもよさそうな声で言った。
「まあ、せいぜい頑張れよ。個人でやるなら勝手にしろ。ただし、うちの看板は二度と使うな。お前みたいな無能がうちの名前を汚すな」
その瞬間、カナタの胸の奥で何かが音を立てて崩れた。
無能。
不要。
底辺。
言われ慣れているはずの言葉なのに、今日はやけに重かった。
社長室を出ると、廊下の空気が妙に冷たく感じた。
すれ違うスタッフたちは、誰も目を合わせない。
まるで、もう存在しない人間を見るように。
カナタは事務所の出口に向かいながら、心の中で呟いた。
──終わった。
俺の配信者人生は、今日で終わった。
だが、この時のカナタはまだ知らない。
この絶望の直後、世界の理をひっくり返す力を手に入れ、全人類の度肝を抜くことになることを。
そして、ブレイブ・チューブの社長は後悔など一切しない。
カナタが後に世界を揺るがす存在へと成り上がることで、自分の判断を嘲笑されたと感じ、憎悪を燃やし、彼を潰すために暗躍する未来が始まる。
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