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住吉神社

順序、手順。俺はすごく気にする。


平等、不平等。これもすごく気にする。


でもこれって基準があった上での事なのよね…


んでもって、この基準を自分の中で勝手に作ってる。

自身では間違いには気づきにくいから、一般的じゃなかったりすると…


そんな俺に指摘してくれるような友人がたくさん欲しい。


―――


先週、湍津姫様へ幣立神宮で見かけた少年と謎の犬についてお尋ねしたところ、

いつもなら数回はお酌させていただけるのに、すぐにお姿をお隠しになられた。


何かが失礼にあたったのかと、一旦はその事を忘れた。


今週は上司が少しだけまともになったことや、日々の感謝のみを報告させていただいた。

そのおかげか、今週はいつものようにお付き合いくださった。


よし、忘れよう。


―――


〈明日、呑み行かない?〉


《良いね。どこで呑む?》


〈博多駅の近くかなぁ。豚バラが食べたい。〉


《オッケ。ちな、博多駅に用事でもあるの?》


〈言わなきゃ駄目?住吉神社にお参り行こうと思って。〉


《言ってるやん》


〈君に会うのはついでなんだからね〉



「おーっす。」


待ち合わせの場所でスマホのメッセージを読み返している途中、

その相手の低い声が聞こえたので顔を上げた。


「おーっす。太宰府以来かね、アキノン。」


「そだね。…しかし君も暇だねぇ。」


表情は変えず、同じ低音だが複数の声色を使い分けて来る。

以前会った時は、冷静な人間で表情に出さないのかと思ったが、底が知れない。

なんかスゲェ。


博多に住んではいるが、住吉神社や櫛田神社へ参拝した時の記憶が薄かった。

せっかくだから、俺も一緒に参拝することを伝え、15時ごろに博多駅で待ち合わせをしていた。


博多駅からなら、住吉神社まで歩いて片道15分ほど。


「道は、アキノンに任せて良き?」


口に出した後、太宰府天満宮へ向かう際の奏恵さんを思い出した。

いや、きっと大丈夫だ。


「良き。おぅ、任せときな!」


…なんだこの感じは?


道中は参拝の理由だけは触れず、仕事のことや、この後に向かう居酒屋の話、

たわいのない話を絶えず交わしていた。

基本的に顔を向けずに話すアキノンに合わせて、俺も前を向いて話せるので、

電柱などの障害物を敵に回さず楽だった。


―――


俺は鳥居のない林の前で、立ち尽くしていた。

側には駐車場の文字が見える。


「何か、問題でも?」


アキノンは、わざとらしい、ゆっくりと低い声で俺の顔を覗き込む。

俺もその顔へ向けてゆっくりと顔を向けると、彼は堪えきれず吹き出した。


「いや、だって、表に回ると結構歩くのよ。近い方がいいでしょー?」


確かに。

俺もつられて笑いながら一礼し、住吉神社の敷地へと入った。


―――


入り口こそ怖かったが、中は綺麗で整っていた。

立派な石碑と恵比寿神社の前を通過し、手水舎を見つける。


手と口を清めて進んだ先は、赤く染められた拝殿側面の門。

こんな形での参拝をお許しください、失礼致します。


本殿まで続く赤に見惚れている中、その本殿の前をアキノンは横切っていく。

おおおぉーい!?全てがイレギュラーだよ!ちょっとよくわからない。



予期せぬところで足を止めた、彼の視線の先を見る。


“菅原神社”


御祭神は“菅原道真公”、その摂社だった。

酒の肴にでも彼が何か話してくれるのであれば、色々聞かせて欲しい。



その後、本殿への参拝も終えたが…すいません今度もう一度…鳥居から正しく参拝させてください。


まだ余裕のある時間を確認し、俺だけおみくじを引く。

アキノンはそんな俺の引いたくじを、じっと見てる。

当てる気か?


「言いたいことが伝わってきたよ…」

揃えた指を自分の額に当て、ノリで話す。


「ほぉ…なに?」

普段より低い声で、興味深そうに聞いてくる。


「「お前のおみくじの結果は見なくても分かる、マジ吉だ。」と、いう」


「おっ…そんなこと言わねーよ!」

半笑いで肩を殴られた。外したが、俺の勝ちだな!?


―――


目的の居酒屋は、すでに満員だった。

いや、予約のできる店ではないので、こればかりは仕方ない。

会話に夢中になり、どれだけ待ったかは覚えていないが席に通された。

とりあえず生をお互い頼んだ。



「んじゃ豚バラぁー」


アキノンがメニューを指さしながら、食いたいものの本数を確認していく。


「俺は2本で」


「俺も2かなぁー。鶏皮ーは、塩とタレどっちがいい?」


「両方にしましょ」


「何本ー?」


「10ずついきましょか。」


「オッケー。俺は後は何でもいいよー。」


「んじゃーベーコンチーズ巻き…2本ね。牛サガリは?2本。一旦こんなもんで。」


この間にもアキノンにより、出されたキャベツが減っていった。


―――


ビールはお互い3杯目を終えた頃。


「小林先生から、何か聞いた?」


共通の知人、奏恵さんの苗字だ。

一瞬誰かわからなかった。


「んー、太宰府でアキノンと合流してからは、旅行先の話を聞いたくらいかなぁ」


「ふーん…」


なんか表情がある。片眉歪んでる。

いや、住吉神社あたりから割と表情豊かになってたから、驚くとこじゃないけど。


「今日、お参り行ったじゃん?」


俺は串を頬張った状態なので、二度頷いた。


「俺の生徒で、単位は取れてるのに進学しないって言い出した子がいてさー…俺、ちょっと意味わかんなくて。」


うん、わかんないというか、勿体無いというか。


「その子の親と説得してたんだけど、まぁー、伝わんなくて。」


…どんな説得したのかが気になる。


「俺が学生の頃に頼った菅原道真公の祀られた神社に、いくつか参拝してたんだよ。」


住吉神社に菅原神社って見かけたとき驚いたけど、そんないくつもあるんだ?


「俺たちが会った頃?」


「そう。んで、その頃に進学を決めてくれてさぁ。今はそのお礼で参拝してんのよ。」


そう言ってアキノンはビールに手を伸ばした。

一区切りついたんやね?


「太宰府天満宮には、もうお礼に行ったの?一緒に行こうか?」


そう言いながら、ビールを一口。


「いや、いいよ。俺の親かよ?俺が気ぃ使うだろー?」


お互い笑い、新しい串へと手を伸ばした。

本作はフィクションです。

作中に描かれる神や出来事は、信仰や感じ方の一つの形を表現した創作です。

実在の宗教・信仰・人物とは関係なく、それらを否定・評価する意図はありません。

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