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若き日の恋人への手紙  作者: 古池ねじ、サブロー
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解説 献身的な愛







 解説──献身的な愛 コラムニスト 駒井美々子 

      

 ご覧になれば分かると思いますがこれは「折坂清久全集」の付録であり、折坂清久先生が実際にやりとりした手紙をそのまま載せたものです。

 かなりセンセーショナルな内容に息を呑んだ読者も多いのではないでしょうか。

 教師と生徒という立場であり、男同士という禁忌の関係に阻まれ、二人は一度別れるも七年経ってから交わした手紙のやりとりです。

 宛名から分かる通り、手紙で先生と呼ばれているのが折坂清久先生ご本人です。まだ文壇デビューは果たされていませんが、書生として耽美小説家の中屋幹雄先生に師事していた時代の話になります。

 当時のことが生々しい言葉で語られ、しかし胸が震えるほど美しいのは、先生の本に共通して感じる「献身的な愛」が根本にあるからではないでしょうか。

 私が先生の作品をはじめて読んだのは、大半の方がそうであるように、先生のデビュー作である「見知らぬ恋人」でした。

 十年以上前に出版されたその本を、高校の図書館で見つけたときは驚きました。何故ならみなさんご存知の通り、それは耽美小説の傑作として空前の大ヒットとなった作品だったことを知っていたからです。

 そんな耽美小説が高校の図書館にあるなんて。私は恐々と本をめくりました。

 とても繊細な話を書かれる方だな、というのが第一印象でした。そして、その文字ひとつひとつから情念を感じるような文章に次第に夢中になりました。

 当時まだ若かった私は、親に参考書を買ってくると嘘をついて、こそこそと先生の本を求めに本屋に通い詰めたものです。先生の小説の主人公はどれも性に奔放ながら、一貫として一人の男性に普遍の愛を捧げます。その生と愛の根本を書いた作品達が、多くの若い年代に共感を生んだのではないでしょうか。

 遅咲きの「清久ガールズ」と化した私は、編集部にも何度も手紙を送りました。実はそのときの手紙が編集のどなたかの目に止まり、いまのようにコラムを何点か書かせていただくようになりました。

 先生への「手紙」が繋いでくれたご縁だと、いまも感謝しております。

 その話を先日たまたまこちらの編集の方にお話ししたところ、この「折坂清久全集」の付録の話になったわけです。恐れ多いほどの奇縁に、いまも手が震えるようです。しかも、お分かりでしょう。

 これは、恋文です。

 それもとっておきの。とんでもないものを目にした感動と興奮で、私は眩暈さえする思いでした。これを書いているいまも、ともすれば叫びだしてしまいそうになるほどです。

 編集の方によれば、先生もはじめはこの恋文を付録にする話にはずいぶんと躊躇われたそうです。しかし、後世で同じ思いをする恋人たちが自分たちのようにすれ違わない為にも、この手紙をだす意義があると決意してくださったとのこと。先生の「献身的な愛」はその真っ直ぐとした心根からやってくるものなのだと心からおもいます。

 さて、みなさんは先生が手紙のやりとりをしていた恵一郎さんとその後どうなったのか。さぞかし気になっていらっしゃることだろうと思います。

 ですが私がそれを語るべきではないでしょう。

 ひとつ言えるのは、この「折坂清久全集」にも載っております先生のお写真。ファンならみなさんご存知だと思います。楚々とした佳人が柔和に微笑んでいるお姿に、こんな方があんな情感たっぷりの文をお書きになるのかと驚いたものですが。

 そのお写真を撮った方と、先生は長く恋人関係でいらして、いまもずっと一緒に暮らしていらっしゃるということです。



 その恋人の方はお写真が趣味の実業家。

 お名前を、宗田恵一郎とおっしゃるそうです。





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