24 どーしてですのー!?
帰ってきたはずだった。
自分の家の船に。
「……こんなに大きかったかしら?」
惑星ノイエルデの軌道上。
《ヴァルテンベルク》は、ちゃんとそこにある。
ただし、その横にも上にも奥にも、見慣れない構造物が続いていた。
接続通路。巨大な港。ずらりと並ぶ船。
アクセル・ヴォルフ率いるヴォルフ商会の宇宙基地と一体化した結果、もはやどこまでが自分の船なのか、ぱっと見では分からない。
「あちらは?」
「接続区画でございます」
「その隣は?」
「商会の区画でございます」
「では、その奥は?」
「そちらから再び本艦です」
「難しいですわね!」
艦内へ入っても、懐かしい我が家という雰囲気ではなかった。
人。荷物。運搬車。
作業員が行き交い、商人たちが端末を突き合わせている。
「ここ、軍艦でしたわよね?」
「はい」
「ずいぶん商売繁盛しておりますわね……」
地上で仕事をしている間に、宇宙のほうまで育っていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
副艦長シュミットが、情報将校らとともに出迎えた。
「留守中、ご苦労さまでしたわ」
「早速ですが、中央から通達が届いております」
「帰宅の余韻がありませんわね」
差し出された端末には、急増する移民の管理、受け入れ態勢との調整、ノイエルデへの過剰流入の抑制について記されていた。
そして、主導者の名を見た瞬間、エレオノーラの眉が寄る。
「絶対、妨害ですわ」
皇太子エアハルト。
とはいえ、移民が増えすぎているのも事実だった。
「受け入れ能力に応じた審査の見直しは、必要かと存じます」
セバスティアンの正論に、エレオノーラは口を尖らせる。
「そこが腹立たしいんですの。ちゃんと正論の服を着ておりますわ」
「では、基準に従って進めてよろしいですね」
「ええ」
端末を返し、窓の外を見る。
「それで、少しは空きましたの?」
船がいた。
その奥にも船がいた。
さらに奥にも、きっちり船がいた。
「空いておりませんわね」
「はい」
移民船に企業船。大型船の間を、小型の商品販売船まで行き交っている。別の場所では燃料販売船が横づけされ、補給を始めていた。
「待っている間に、お買い物までできますの?」
「そのようです」
「便利になりましたわねえ……」
感心しかけて、エレオノーラは扇を握り直した。
「渋滞が快適になっておりますわ!」
列を相手に商売をする船まで増えている。もはや順番待ちというより、ひとつの街だった。
その中に、緋色の船がちらほら見える。
船体の縁には提灯のような丸い装飾。側面には大きな文字がひとつ。
(福……?)
上下が逆さまだった。
縁起のよさそうな船も来たものだ。
エレオノーラが視線を戻すと、シュミットが告げた。
「厳格化された移民審査を、本日から適用いたします。ご覧になりますか?」
エレオノーラの顔がぱっと明るくなる。
「ええ! 久々のガチャですわね!」
「移民審査の面談でございます、お嬢様」
「ガチャはストレス発散によろしくってよ」
島の不法占拠。未知の知的種族。大型竜種。開拓行政。縁談。執政官不足。
頭の中に積み上がった書類を思えば、そろそろ金色のきらめきを浴びてもよいはずだ。できれば美形つきで。
「本日は面談でございますので、腕を振るう必要はございません」
「気持ちの問題ですわ、セバスティアン」
エレオノーラは扇をぱちんと閉じ、歩き出した。
「会場はどちら?」
「反対側でございます」
意気揚々と向きを変えた。
─────
案内されたのは、大会議室だった。
壁一面のモニター。その下には端末を備えた机が並び、担当者たちが申請書や審査結果を次々と確認している。
エレオノーラは目を輝かせた。
「まあ……!」
大きい。
ガチャの筐体が、大きくなっている。
「事前審査を終えた面談対象者の情報を、こちらで確認できます」
「よろしくってよ」
人が増え、船が増え、基地が増えた。
当然、ガチャも大きくなる。
中央の席に腰を下ろすと、画面が切り替わった。
「まずは初手十連ですわ」
「十人ですね」
「ええ!」
訂正も手慣れたものだった。
最初の申請者が映る。
チャリン。
白。
「ようこそ。お待たせいたしましたわね」
書類確認。移住希望の確認。記録。次。
チャリン、チャリン、チャリン、チャリン。
白、白、白、緑。全員移住希望。
なんだか全員、黒髪で玉京風の顔立ちだった気がする。
前世でいう東洋系というやつだ。
「皆様をお迎えできて光栄ですわ」
チャリン、チャリン、チャリン、チャリン。
白、青、緑、白。
やはり、全員移住希望。
なんだか全員、黒髪で……
「次で十人目です」
シュミットの声に、エレオノーラは顔を上げた。
最後の一枠。
まだある。
十連とは、最後まで分からないものだ。
「どうぞ!」
画面が切り替わる。
シャキィィーーン!!
(来ましたわーー!)
金。
青年の輪郭を縁取る光が、画面いっぱいにきらめいた。
SSR。
金である。
初手十連とは気前がいい。
エレオノーラは口を開いた。
「…………」
止まった。
金色の枠の中には、一人の青年がいる。
玉京風の装い。すっと細められたキツネ目。整った顔には、面談を受ける緊張など欠片もない。長い濃紺の髪に橙色の瞳。
むしろ、こちらが来るのを待っていたような顔だった。
青年はカメラ越しにエレオノーラを見つめ、軽く片手を上げる。
「や」
「…………」
ホリスタ。
金。
美形。
知っている顔。
目を閉じる。
開ける。
いる。
「ど、どうして……」
「お嬢様?」
シュミットが声をかけ、セバスティアンも画面へ目を向けた。
エレオノーラの頭の中で、ばらばらだった情報がつながっていく。
SSR。
玉京星朝。
洛宵。
第六王子。
移民面談。
移民。
王子。
(王子?)
エレオノーラは勢いよく立ち上がり、モニターを指さした。
「どうして、玉京王族が面談にいらっしゃるんですのーーーー!?」
第三章・完。
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【アップデートのお知らせ】
勢力図が更新されました
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いつも『銀河聖国の星乙女 ―Holy Star Maiden―』をご利用いただき、
誠にありがとうございます。
このたび、勢力図の表示を更新いたしました。
※レアリティ表示は原作ゲーム上の評価であり、
人間の価値を示すものではありません(運営)
■エレオノーラ陣営
所属:ノイエルデ
立場:悪役令嬢
【UR】
ディートリヒ
【SSR】
セバスティアン、アクセル、ネーベル
【拠点・軍事戦力】
《ヴァルテンベルク》(都市機能あり)
ヴァルテンベルク艦隊(随伴艦・空騎士部隊含む)
ヴォルフ宇宙基地(戦力再編中)
惑星ノイエルデ
【SR・R/拠点・産業機能】
会計、農業、灌漑、魔導炉開発、艦隊運用
【N・HN】
開拓、行政、技術、物流、建設、その他多数
■アンナ陣営
所属:星乙女
立場:主人公
【SSR】
エアハルト、アルブレヒト、ルーカス、
コンラート、マクシミリアン、
ロジャー、クラウス
【SR以下/拠点機能】
宇宙船/小型飛行艇
BGM変更
宿舎
マイルーム
お料理・レシピ帳
写真撮影
…… And More!!
※ノイエルデの人口が増えすぎて集計中
明日から4章始まりますよろしくお願いします。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
「皆さま、ご照覧あれ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価(※星のエネルギー)と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」
「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」
お嬢様への応援、皆さまからのご感想を感想欄にてお待ちしておりますわー!




