9.セルシア王国へ
セルシア王国とエンドラ王国で妃教育も学ぶようになりあっという間に2ヶ月が過ぎ、セルヴィアはセルシア王国の王都にある学園初等科へ入学まで1週間となった。
今回もエンドラ王国を出立する際はクリストファー王太子殿下がお見送りをしてくれた。
「クリストファー王太子殿下、良かったらこちらのハンカチを。まだ刺繍は上手とは言えなくて申し訳ないのですが。。気に入らなければ捨てていただいてもよろしいですし。。」
「開けてもいいですか?」
「もちろん、開けてみてください」
ハンカチの刺繍は確かにプロが縫う程は綺麗では無いが、6歳が縫ったとは思えない程綺麗な赤い薔薇の花が刺繍されていた。
薔薇はエンドラ王国の国花である。
セルヴィアの手には小さな傷跡がたくさんあり、努力の様子が窺えた。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです。捨てるだなんてとんでもない、一生大切にします。とても綺麗にできています。セルヴィア嬢が私のために刺繍してくれた事がとても嬉しいのです。この手の傷は刺繍を縫うために?」
「まさか、こんなに喜んでいただけるとは思わなかったので、私も嬉しいです。手の傷は…実はなかなか刺繍が上手くできなくて、たくさん練習したんです。」
「妃教育も忙しいでしょうに。無理はしていませんでしたか?」
「無理などしていませんでしたよ。気分転換にもなりましたし。」
「それならいいのですが、できるだけ無理はしないで下さいね。実は私からもセルヴィア嬢へプレゼントが…付けてもいいですか?」
とても希少なブルーダイヤのネックレスを付けてくれて
「綺麗だろうと思ってはいたけど、想像以上に綺麗です。天使みたいです。」
「こんな素敵なネックレスをいただけて嬉しいです。ありがとうございます、クリストファー王太子殿下。私もネックレスを大切に使わせていただきますね。」
ネックレスは私のお気に入りに、刺繍入りハンカチはクリストファー王太子殿下がいつも持ち歩く物になった。
「喜んでいただけてうれしいです。その…セルヴィア嬢さえ良ければなのですが…私の事は殿下ではなく、クリスと呼んでいただけますか?」
「そんな恐れ多い事です。」
「私がクリスと呼んでいただきたいのです。」
「かしこまりました、クリス様。では、クリスも私の事はセルヴィア嬢ではなくセルヴィと呼んでいただけますか?」
「もちろんです。セルヴィ。」
2人は満面の笑みで微笑み合った。
「次にお会いできるのが4ヶ月後とは、寂しいです。手紙をたくさん書きますね。セルヴィ。抱き締めてもいいですか?」
「もちろんですわ。私もクリス様にお会いできないのが寂しいです。お手紙たくさん書きますね。」
初めての抱擁は5秒程だったが、2人は幸せだった。
「いってらっしゃい。セルヴィ。」
「行ってまいります。クリス様。」
2人は離れている間も頻繁に文通を重ねるのだった。
セルシア王国の王都へ行く前に、ダルヴァール領の祖父に会いに行った。
祖父は先代王の弟で研究バカで10歳で蒸気機関車を発明し、研究ばかりしていて周りから結婚するように言われても我が道をいっていた。
30歳でようやく同じく研究バカで25歳で未婚の祖母と恋に落ちたが、なかなか子宝に恵まれずに35歳で父が生まれたのだ。
公爵領の運営よりも研究がしたい祖父は、父が15歳で公爵位を譲り、60歳の今も蒸気機関車の第一線で研究に励んでいる。
祖父母は孫バカでもあり、セルヴィアの婚約をとても喜んでくれて、皆で楽しい時を過ごした。
ダルヴァール領では一泊したのみで、帝都の一等地にある邸に向かった。




