2-9.クリストファールート「リチャード王太子殿下とのダンス」
イーサン殿下とのダンスが終わると、リチャード王太子殿下からも跪かれ手の甲にキスをされて
「セルヴィア嬢、ぜひ僕と踊って下さい。」
とダンスに誘われた。
黄色い歓声に包まれる。
「とても綺麗だ、セルヴィア嬢。」
「ありがとうございます、リチャード王太子殿下もとても素敵ですわ。」
「僕は君を目にすると、心を奪われずにはいられないんだ。9年間ずっと愛していたよ。セルヴィア嬢。」
「ありがとうございます。私もイーサン殿下とリチャード王太子殿下に恋をしていました。でも、私が愛しているのはクリストファー王太子殿下ただお一人です。」
「ずっと分かっていたんだ。君がクリストファー王太子殿下とずっと一緒にいたいと望んでる事を。その為に君がどれだけ努力をしていたのかも。それでも僕は君を諦めきれなかったんだ。」
「私も許されないと分かっていても、自分の恋心を抑える事が出来ませんでした。あと一年で結婚だと思った時に、喜びよりもイーサン殿下とリチャード王太子殿下に会えない寂しさが大きい事に気づいたのです。私の側にはいつもお2人がいて助けてくれて、私は救われていたから。」
「リチャード王太子殿下には命と心まで救っていただきました。本当に感謝しております。」
「僕もセルヴィア嬢がいたから頑張れたんだ。ずっと側にいてくれて、ありがとう。」
「セルヴィア嬢と離れ離れになるのが、こんなに辛いものだとは、想像以上に辛いよ。」
「私もリチャード王太子とお会いできなくなるのが辛いです。」
「手紙も書くし、たまに会いに行くよと言ったら困らせてしまうかな。」
「いいえ、私もお手紙を書きますし、会いに来てくれたら嬉しいですわ。…大切な友人として。」
「大切な友人として手紙も書くし、会いに行くね。僕はこれからもずっとセルヴィア嬢の幸せを祈っているよ。」
「私もリチャード王太子殿下の幸せをずっと祈っております。」
ダンスの間、リチャード王太子殿下は私の事を愛おしそうにじっと見つめるものだから、私も彼の目が離せない。
ダンスが終わってしまった。
優しく抱き締められて
「さようなら、僕の愛する人。」
「さようなら、私の恋しい人。」
すぐに体が離れて、泣きそうな顔で切なそうに微笑んで、去って行った。
泣きたい気分でも主役である私がいなくなる訳にはいかない。
なんとかその後に何人かの令息と踊った後に、クリス様のエスコートで友人達と挨拶をした。
パーティーが終わり、クリス様と2人きりになって
「セルヴィは無理をしなくていいんだよ。」
と微笑んで、優しく抱き締めてくれた。
私が泣きそうだったのは、お見通しだったみたいだ。
私が他の人を想っているのに、どうしてそんなに優しいの。
その優しさに甘えて泣いてしまったが、私が泣き止むまで何も言わずに優しく抱き締め続けてくれた。
ごめんなさい。
他の人を想いながらクリス様の腕の中で泣く私を、クリス様は優しく包み込んでくれる。
明後日は笑顔で皆にお別れできる気がした。




