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36.衝動的なファーストキス(イーサン殿下視点)

セルヴィア嬢と出会ってから、もう少しで9年間。

セルヴィア嬢に片想いをして9年間。


ついに、今年の春にはセルヴィはエンドラ王国に行き、8月の誕生日にクリストファー王太子と結婚してしまう。


せめてずっと側にいたかった。

叶わない恋だったのだ。

流石に、セルヴィア嬢が結婚したら諦めるしかない。


友人として、セルヴィア嬢の側にいられた9年間。

兄も僕と同じで、いまだに婚約者もいないが、流石にセルヴィア嬢が結婚したらお互い諦めるしかないだろう。

兄も僕も隙あらばとセルヴィア嬢を狙っていたが、彼女はクリストファー王太子の婚約者としても完璧な女性だった。


でも、僕はセルヴィア嬢のふとした仕草に違和感を覚えたんだ。

冬休みが終わって2週間ぶりに会ったセルヴィアから何故か避けられている気がする。

クリストファー王太子と何かあったのだろうか?


僕にドキドキしてくれる様子が嬉しくて、僕は表情と行動に出てしまう事は多かったが、友人としての距離感で接するように心掛けてきたつもりだ。

セルヴィア嬢を大切におもっているし、一番大事なんだ。

今も普段通りに接しているはずなのに、何故だろう。

このまま、距離を置かれた状態で別れるのは嫌だ。

僕は今までになく強引に手を取り、セルヴィア嬢と放課後の空き教室で2人きりになった。


「セルヴィア嬢、帰国してからどうしたのですか?理由も分からず避けられているのは仲のいい友人として辛いです。」

冬休みが終わってから初めてセルヴィア嬢と目が合った。

ハッとしたような顔をしながら

「ごめんなさい。」

と目を逸らされる。

僕に何か隠してる?

「こちらを見てくれませんか?何か嫌われるような事をしてしまったのなら謝りますが、今のままでは分かりません。」


セルヴィア嬢は慌てた様子で僕を見て

「そんな嫌うだなんて!そんなはずはありません。イーサン殿下は何も悪くありません!私が…全て私が悪いのです。」

と言い、また目を逸らされてしまった。


「悩みがあるなら何でも言ってください。セルヴィア嬢が悩んでいると僕も辛いです。」

思わず手を取り言い募ると、初めて僕に対して頬を染めた表情をしたセルヴィア嬢と目が合った。

セルヴィア嬢が僕に恋してる?

もしかして、悩んでいたのは僕に恋をしていたから?


途端に心臓が高鳴り、しばらく見つめ合ってしまったが、慌ててセルヴィア嬢が顔を逸らせた。

耳まで真っ赤で明らかに動揺しているのが分かる。

その態度にセルヴィア嬢が僕の事を好きなのを確信してしまった。


「どうしてそんな表情をするの?諦めなければいけないと分かっていても、諦めきれないよ。」


取った手はそのままに、衝動的にセルヴィア嬢に歩み寄るとすぐ近くの壁に当たった。

セルヴィア嬢は何も言えず、壁と僕の間に挟まれ逃げようとしたが、僕はセルヴィア嬢を抱きしめた。

こんな機会は二度とない。


「愛してるんだ、9年間ずっと。」

僕は抑えきれない感情のままに、無理矢理セルヴィア嬢に激しいキスをした。

衝動的なファーストキス。

部屋には僕とセルヴィア嬢の2人きり、このまま強引に手に入れれば…婚約も破棄されるのではないかとも考えてしまった。

必死に抵抗するセルヴィア嬢の吐息、甘い香りにクラクラする。

行動と言葉で僕を拒絶するのに、僕を見つめる潤んだ瞳に理性を忘れて夢中でキスをした。


「やっ…やめてください」


「愛してる、愛してるんだ、セルヴィ。」


僕は愛を囁きながら、何度も何度もキスをした。


遠くから他の生徒の足音と話し声が聞こえて来て、気が逸れた一瞬のうちに、セルヴィア嬢は僕の腕の中から逃げ出して走って行った。

僕は呆然として、自分がしてしまったことに気づいたが、セルヴィア嬢が僕を好きでキスをしたという幸福感で胸が高鳴ってもいた。

でも、今ので絶対に嫌われてしまった。

嫌がる女性に無理矢理キスするなんて最低だ。


ふと、去年の春にパーティーで目にしたクリストファー王太子とセルヴィア嬢の仲睦まじく微笑み合う様子を思い出した。

クリストファー王太子殿下は毎年、春休みにセルヴィア嬢に会いに来て、セルヴィア嬢は夏休みと冬休みに会いに行っている。

セルヴィア嬢がクリストファー王太子と一緒にいるために、9年間ずっと努力して来たのを僕は見て来たのに。


最近僕と兄の事を避けていたのは、他の人に恋をしてしまっても、セルヴィア嬢がクリストファー王太子と一緒にいたいと望んでいるからだ。

他の人にする恋は許される恋ではないとセルヴィア嬢本人が一番よく知っているはずだ。

僕とキスをしてしまって、心優しい彼女は罪悪感に耐えられるだろうか。

僕が謝ろうとしても、彼女に怖がられてしまうだろうか。


セルヴィア嬢が兄の事も避けているという事は、セルヴィア嬢は兄の事も好きなのだろう。

兄と僕以外は避けられていないし、僕と兄は9年間ずっとセルヴィア嬢の近くにいた男性だ。

兄と僕に、セルヴィア嬢がよくドキドキしていたのも伝わってきていた。


セルヴィア嬢の結婚の準備は大分進んでいる、

今年の8月には結婚で、諸外国の王族もたくさんやってくる。

世界一の次期国王の結婚式なのだから、世界一の規模の結婚式だ。

もし、今から婚約破棄になったら、とても大きな国際問題になるだろう。

あのタイミングで他の生徒が教室の前を通り過ぎて良かった。

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