2. 製糸場の案内
正式な稼働はしていないが、製糸場では既に一部でダルヴァール領から派遣された職員の指導の下、たくさんの糸が紡がれているところだった。
両親がザンバギルド会長に製糸場の案内をしている間は、ザンバギルド会長の息子、サムに私から説明をしていた。
私が子供に製糸場の説明をすることはよくあるので慣れたものだ。
大体の子供は親に付き添っているだけで、あまり興味も示さないことが多かったが、サムは違った。
「これは何でしょう?何のためにやってるのですか?」
「これはあげかえし器と言って、一度巻き取った生糸を大枠に巻き直しているのですよ。一度巻き取っただけではセリシンで固まってしまうのですが、こうすればそれを防げるのです。」
製糸場の規模に圧倒されながら、興味津々に目を輝かせて、たくさんの質問をしてくれた。
私も製糸場にこんなに興味を持ってくれたのが嬉しくて、たくさんお話をした。
そして、質問に嬉しそうに答える私にサムは本当に驚いていた。
「今日は製糸場の案内をしてくれて、ありがとうございます。本当にまだ小さいのに大人びていて、こんなにたくさんのことを知っていて驚きました。サラさんは、製糸場がとても好きなのですね。」
「幼い頃から製糸場で働く両親を見て参りましたので、両親への憧れが大きいです。いつか両親のようになりたいと思いながら、頑張っているのです。」
「サラお姉ちゃんはすごいよね。僕も両親やサラお姉ちゃんのようになりたいな。」
「こんなに小さくても、こんなに頑張っているとは、私も負けていられませんね。」
サムは美しい顔で嬉しそうに微笑んだ。
両親も製糸場の説明が終わり、ザンバギルド会長と応接間へ戻り始めたので、私たちも応接間へ戻り、商談が始まった。
ザンバギルド会長は製糸場をとても気に入ってくれたようで、すぐに繭の買取量、価格、糸の販売価格が決められていった。
「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。とても良い商談ができて、嬉しいです。」
「こちらこそ、本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。製糸場には感銘を受けました。また、今後とも末永くお付き合いできればと思います。」
ザンバギルド会長のお見送りをしようとしたところで、サムが話を始めた。
「すみません、製糸場での時間があっという間で、もっと見たいと思ってしまいました。ご迷惑でなければ、また見に来てもよろしいでしょうか?」
私はすぐに嬉しくなり、
「もちろん、ぜひまた見にいらしてください。たくさんご案内いたしますわ。」
「では、明日の朝10時に」
と約束をしてから、今度こそお見送りをした。
私は製糸場、商談のノウハウ、公爵令嬢としての教養、外国語の学習ととても忙しく、6歳とは思えない多忙な日々を送っているが、サムの製糸場に目を輝かせている姿が嬉しくて、案内を引き受けることを即答してしまった。




