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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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(91)

「影山くんは屋敷に認められたようだし」

「冴島さん、それ、どういう意味ですか」

「影山くんが一番わかっていることでしょう? 屋敷から『鍵』を受け取ったんだから」

「……」

 なぜそれを知っている。あの場には俺しかいなかったはずだ。

「それ、どういう意味か、詳しく知りたいんだケド」

 橋口さんが冴島さんを振り返る。

「いままで屋敷の鍵はなく、『さやか』を使って開けるしかなかった。けれど、今日、影山くんは屋敷から鍵を受け取ったのよ」

「ちょっと、どうしてそれを」

「さっき神武(こうたけ)さんからそう連絡が入ったわ。あっ、神武さんは屋敷の固定資産税とかを影山くんの代わりに払ったりしている人の名前ね」

「……」

 冴島さんが腰に手を当てて話す。

「三島優子さん、上戸絢美さん。二人はドラキュラ・ヴァンパイア病の治療が終わるまでは外に出せないわ。そういう意味でも、屋敷の敷地に入ってもらうことは都合がいい。ある程度気晴らしが出来る広さがあるからね」

「ちょ…… どうして? それならカゲヤマも同じじゃないんですか?」

「影山くんは私と契約があるの。それもドラキュラ・ヴァンパイア病に罹るよりずっと前にね。だから、私の命令(コマンド)に従うしかない。命令が入っている限り、他人に、ドラキュラ・ヴァンパイア病を感染させることはないわ」

 今から三島優子や上戸絢美に契約をしても後付けになってしまうから、ドラキュラ・ヴァンパイアの力が勝ってしまうということなのか。

「とくに上戸さん。あなたはまだ野心を捨てきれていない。隙あらばドラキュラ・ヴァンパイアの力を行使しようとしている」

「なっ……」

 と言うと、上戸さんは怒りの表情になり、顔がカッと赤くなる。

「影山くんも含め、この治療を拒むことはできないわ。拒めば、自由がそれだけ奪われることになる」

「そ、そんな」

「ダメよ。あなたが除霊士でもなんでもない、一般人だったとして、得体のしれない病気を持った人間がウロチョロしていると知ったらどんな気持ちになるの?」

「……」

「わかったらさっさと引っ越しの準備をして」

 部屋の中で座っていた者が全員が立ち上がる。

 蘆屋さんが自身の顔を指さして言う。

「あ、あたしも引っ越すんですか?」

「そうね。影山くん一人じゃとてもじゃないけど理性を失ってしまうでしょう? 蘆屋さんの協力が必要だと思うけど」

「……じゃあ、必然的に」

 加藤さんがそう言うと、冴島さんが言葉引き継ぐ。

「引っ越ししてもらうことなるわね」

「抗ウィルス薬の為に、マリアも引っ越すわ」

 橋口さんが言う。

「あたしは全く関係ないんだケド」

「かんなに引っ越せって言ったつもりないわ。引っ越したいなら止めないけど」

「……」




 俺たちは各々引っ越し荷物をもって、向かいの屋敷へ移動した。

 布団やら、大きな荷物は、後で俺が運び入れることになった。

 屋敷につくと、俺はさっき手に入れた屋敷の鍵を使って扉開けた。

 正面に見える階段の前で言う。

「ここから上には上がれないから、近寄らないように。見えない壁がありますから」

 入ったことのない加藤さんが静かにうなずくが、上戸さんが

「知ってる」

 と言った。

 冴島さんが俺の横に立って、全員に向かって言う。

「まずは、各々部屋を割り振るから、住みたい部屋の候補を決めて」

 全員が屋敷の中を歩き回り、部屋を探し始めた。

 俺はちょっと出遅れてしまって、玄関付近で立っていると蘆屋さんが寄ってきた。

「あんたも来なさいよ」

「う、うん」

 蘆屋さんに腕を引かれるまま、俺は屋敷の奥へと移動した。

「ここなんかよくない?」

「書斎、だよね」

 俺はこの中の実験器具の中に入ってしまったことを思い出した。

「俺、ここ……」

「二人で暮らすにはちょうどいい広さだし」

 そうか、蘆屋さんはここにいる間中、『さやか』に意識を取られていたから、中での出来事をよく覚えていないのだ。

「二人でって、ここベッド一つしかないけど」

 俺はベッドを叩いて、腰かけた。

「あ、あんたは結界の中で寝るんだから間違いなんて起きないんだからねっ!」

 蘆屋さんが体を寄せるように俺の隣に座った。

「あ、そう……」

 結局、広い屋敷に移っても結界の中で寝ることになるのか。俺は落胆した。

「た、ため息ついても無駄なんだから。結界を張るとはいえ、一緒のベッドに寝れるんだから、いいでしょ?」

「結界か……」

 俺はそのままベッドに仰向けになった。

 結界で寝ると動きが極端に制限されてしまう為、疲れが取れた気がしないのだ。

 蘆屋さんは、俺の方を横目でみながら頬を赤くした。

「男女の仲になるには、ちゃんと順番があるの」

 と、突然部屋の扉が開いた。

「みんな集合してるんだケド」

「橋口さん」

「順番ってなんの話?」

「な、なんでもありません」




 玄関扉のスペースに俺たちは集まり、部屋の見取り図が書かれたホワイトボードの前に立っていた。

「各々、使いたい部屋に名前を書いて。第一候補は赤いペンで。第二候補は黒いペンで書いて」

 俺は蘆屋さんを振り返った。

「もう一つ部屋の候補、考えてなかったですよね」

「他の人が誰も見に来なかったんだから、候補一つでも大丈夫でしょ」

「一応、もう一つ候補考えません?」

 屋敷の見取り図を見ながら、俺は蘆屋さんに耳打ちする。

「う、うん。いいわよ。あんたの好きなところで」

「じゃあ、第二候補も書き込みますね」

 順番に全員が書き込むと、冴島さんが一部屋ずつ整理していく。

「ここは第一候補の書き込みしかないから、三島さんで決定ね」

 なぜか拍手が起こる。

「ここは加藤さんと上戸さんが競合してるわね。じゃあ、三本勝負のじゃんけんで」

 二人が第一候補に選んだ部屋はかなり広い部屋だった。

「あっちの方がよかったですか」

「広いけど家具が何もないのよ」

 冴島さんが仕切ると、加藤さんと上戸さんがホワイトボードの前に来て向かい合う。

 二人とも気合が入っている。

 加藤さんは、手の甲に指を置いて何かを数えている。上戸さんは手を組み合わせて何か覗き込んでいる。

「さあ、じゃんけんっ!」

『ポン』

 三、二で加藤さんが広い部屋をとった。

 自動的に上戸さんが第二候補の部屋を取った。

「マリアはこの部屋でいいのよね」

「ハイ。ヘヤノケイビジョウ、͡コノヘヤヲキボウシマス」

 見取り図の中央、この玄関から入ってすぐのこのホールがマリアの部屋となった。

 誰かが抜け出たり、侵入者が入る可能せいが一番高い部屋を、眠らないアンドロイドが監視するのは理にかなっている。

「で、この部屋がかんな、ここは私と玲香。赤井さんはこの屋敷に来た時は、この部屋を使ってください」

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