表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/103

(26)

 病院側からストレッチャーを持ってきて、除霊事務所か搬送する。

 先日あった急患と同じだ…… この機械…… この|機械(GPA)はいったい何をするものなのか。


「たぶん……」

 冴島さんは少し考えているように時間をあけた。

「おそらくだけど、その除霊士がそもそも降霊して、その女の人をいいように扱えるように仕掛けたんだわ」

 赤井さんはうっすらと涙を浮かべていた。

「そういう事件があったらしい、という情報が知っている。その除霊士…… いえ、除霊士もどきの人物は特定出来ていないけど」

「私、勤め先だったので住所は……」

 冴島さんがスマフォを使ってその住所を調べる。

 冴島さんは首を振る。

「……病院はあるわね。除霊事務所はなくなっているみたい」 

 赤井さんは唇をぎゅっとむすぶ。

「……くやしい」

「うん」

 赤井さんと冴島さんが同時に俺を見た。

「俺はまだ除霊士見習いですが、絶対、その犯人を見つけるよ。そんな男に除霊士を名乗らせてはいけない」

「ありがとう」

「影山くん。そういう、お気楽な発言は人を傷つけるわよ」

 赤井さんは笑った。

「いいんです。そう思ってくれる人がいるだけでも、私うれしいです」

「影山くん、責任重大よ」

「ええ、頑張ります」

「という、ことなんで、GPAってかなり人体に負荷をかけていると思うんですよね。カゲヤマさんは大丈夫なんですか?」

「影山くんの場合はかなり特殊だから、一般的な人間の常識は当てはまらないかもね」

「あ、あの、冴島さん……」

「……良かった。ちなみにカゲヤマさんって、タフなんですか?」

「タフなんじゃない」

「フフフ……」

 赤井さんが口元に手を当てて笑った。

「何、その変な笑い方」

「なんでもないです。いいなぁ、私もタフな彼氏が欲しいなぁ」

「何、急に彼氏、とか」

「別に。フフフ……」

 赤井さんは立ち上がって、扉の方へ行くと、

「お二人の時間を邪魔してごめんなさい」

 と言って出て行った。

「えっ?」

 どういう意味だ、と俺は思った。

 冴島さんは扉の方を向いたまま、俺の方に向き直らない。

 冴島さんの横顔をみていると、少し頬が赤くなっている気がする。

「冴島さん、今のどういう意味ですかね」

「は? 私が知るわけないでしょ」

「……なんで怒るんですか?」

 横目で見ている冴島さんに、押された。

「あんたが馬鹿だからでしょ」

「俺ってタフなんですかね」

「だから知らないわよ」

「冴島さんがそう言ったんじゃないですか」

「見た感じよ」

 さっきから冴島さんは視線を合わせようとしない。

 さらに頬が紅潮しているように見える。

「えっ? 俺の見かけが?」

「裸を見て思ったわけじゃないんだから!」

 バシッと、叩かれた。

 確かに冴島さんの家が焼けた日、俺は除霊の為に裸に()かれてお祓いされたことがある。裸は見られたことがないわけじゃない。

「???」

 冴島さんは立ち上がると、電話を掛けた。

 そして部屋を出ていく。

「じゃあね、影山くん。明日退院できるそうだから、また明日」

「は、はい」

 バタン、と扉が閉まった。

 俺は上体を勢いよく倒して、仰向けになった。

 赤井さんの敵、除霊士の風上にも置けないやつ、そいつのことで頭がいっぱいになった。

 どうすればそいつを見つけ出し、捕まえることができるのだろうか。




 退院した日の夕方、俺は居酒屋にいた。

 胸を刺された居酒屋でも、手を貫かれた居酒屋でもなかった。冴島さんが斡旋してくれた、新しいバイト。しかも、除霊の業務が伴わない仕事だった。

『あの看護師の言っていた除霊士を探るのは一回忘れなさい。今、あなたは紫宮という女、エリーとかいう謎の外国人、トウデクアという集団、それだけの相手と対峙しているのよ』

『……』

 俺が答えないでいると、冴島さんがメモを渡してきた。

『じゃ、ここに書いてある居酒屋でバイト。今回は除霊の仕事とはかかわりがないから。目いっぱい働いて忘れなさい。エリーとその集団やトウデクアに関しては、しばらく私達でやるから』

『そ、そんな……』

『いいから』

 そう言って手をかざされた。

 おそらく冴島さんの命令(コマンド)が入ったのだろう。

 俺は大学近くのこの居酒屋に、なんのためらいもなくバイトに入っていた。

「はい、いらっしゃい」

 入口を振り向くと、驚いた顔をした若い男女がそこにいた。

「えっ、影山?」

「影山がここでバイトしてるって」

「影山君、意外とその格好似合うじゃん」

 大学の知り合いだった。

 バイト先で知り合いと出会うなんて。何か嫌な予感がする。

「知り合いにはサービスとかあるんだろ?」

「えーーうれしい」

 俺は人差し指を立てて口に付けた。

「(黙って)」

 これだ、これがその予感だ。

「(なんだよ、一品ぐらいサービスしろよ)」

「……」

 これは店長に掛け合って、一品タダで出さなければならないだろう。問題は、入ったばかりのバイトがそれをして良いか、というところだ。過去の経験からして、無理な話だった。

「あのさ、俺、今日からこのバイトに入ったから無理だよ。店からの信用ないし」

「けど、俺たち友達だろ?」

 知り合いで会って、友達じゃないよ、と言い返せなかった。実際は知り合い以下の関係なのに。

「いいじゃん、影山君。ドリンク一杯サービスでもいいから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ