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魔法使いたちの宇宙戦争 ~ ユニバーサルアーク  作者: 語り部(灰)
遠野郷・サンライズ

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624/631

遠野郷・サンライズ17

◇◆◇◆◇◆◇


「敵機接近!」

「両舷対空戦闘! 撃ち方始めっ!」

 『瑞鶴』のCICに、大声が響く。

 戦闘開始から二〇分。

 燃料切れの直掩機が軒並み戦線を離脱すると、敵機の群れが空母付近まで侵入し始める。

「流石のサムライ坂井でも、これだけの数は無理か」

 小沢としては、坂井の無双に期待していたのだが、流石に無理筋のようだ。

「サムライ坂井もニ箇所以上の場所に同時に存在できない以上、如何ともしがたい所でしょう」

 草加が答える。

 一応、坂井の名誉の為に言っておくと、坂井は十分に働いている。

 今も十機近い敵戦闘機を単機で引きつけているので、その分敵攻撃機の護衛は薄くなっている。

 問題は、その護衛の薄くなった敵機を落とす友軍機が圧倒的に不足している事だ。

「基地航空隊はどうなっている?」

「いくつかの基地から、数個小隊が到着し戦闘に参加していますが……陸軍が出したとされる航空機が到着していません。

 時間的にはとっくに到着しているはずなのですが……」

 小沢は小さく唸った。

 陸軍の航空兵は海軍ほど天測を教え込まれないので、ランドマークのない宇宙空間でしばしば迷子になる。

 今回も迷子になっているとするとタイミングが悪すぎる。

 陸軍に文句の一つも言ってやりたい所だが、そもそも海軍の戦力だけで対応できていない事も問題なのが歯痒いところだ。

「居ないものは仕方あるまい。なんとか手持ちの戦力だけで、この局面を乗り切るしかない」

 軍令部の話では、増援の艦隊も出しているという話だが、そちらも見当たらない。

 ひょっとすると、どこかでアメリカ海軍と交戦しているのかも知れないが、今ピンチなのは小沢の艦隊である。

「もうしばらくすれば、宮部が率いる攻撃隊が帰還します。

 攻撃隊の護衛に付いていた『烈風』はそれほど消耗していないので、十分戦力として計上できるかと……」

「ううむ」

 小沢は草加の意見を聞いて熟考する。

 既に小松艦隊から、敵機出撃の報が届いている。

 正確な数は不明だが、一〇〇やそこらは居るだろう。

 そこに宮部を当てても、結局は今の坂井の状況が再現されるだけだ。

 なんなら、その坂井もいづれ燃料か弾薬が尽きて戦線を離れざるを得ない。

 やはり、現状の打破に基地航空隊は必要不可欠だ。

「小沢長官! 『三日月』より入電! 戦艦を含む敵艦隊が接近中との事です。三〇分以内に我が艦隊の外縁に到達する可能性があります!」

「なんだと!?」

 防空駆逐艦は防空を主目的に設計された艦艇なので、砲撃には極めて脆弱と言える。

 もし、戦艦に殴り込まれれば防空網に大穴が空いてしまう。

「それはマズい」

 小沢が真っ先に考えたのは退避である。

 足の速い『翔鶴』型なら、十分敵艦隊から逃げられる。

 だが、それでは根本的になんの解決にもならないし、最悪遅れている陸軍航空隊が孤立して壊滅してしまう。

「艦隊空母全艦に下命! 可能な限りの艦載機を強行発艦させよ。無理は承知の上での命令である。質問は許さん」

 正直、敵機が近い状況で発艦作業など、空母が敵に隙を晒すのはもちろん、発艦中の航空機が撃破された場合に母艦も被害を被る可能性すらある愚行である。

 だが時間が経過すれば、無理矢理の発艦すら困難になってしまう。そうなれば、空母はただの高価な箱になってしまう。


 戦闘中の緊急発艦という作業自体は、一応対応マニュアルが存在する。

 緊急時は艦載機を重力カタパルトで射出している時間がないので、飛行甲板から直接後方へ向かって放り出すという方法を取る。

 そして、これが非常に危険なのである。

 そもそも航空機をカタパルトで射出するのは、空母の近くに艦載機がいて欲しくないという事である。

 それを、艦の後方とはいえ至近距離に艦載機を放すのだ。母艦との衝突リスクも避けられない。

 『瑞鶴』は後部エレベーターで飛行甲板に上げた艦載機を、仮想重力甲板に斥力を発生させる事ではじき飛ばしている。

 基本的に艦の後方へ向かって弾いているのだが、母艦の推進器に巻き込んだりしないか、小沢としてもヒヤヒヤものだ。

「こんな危険な運用は、もう二度とやりたくないものです」

「まったくだ」

 草加の感想に、小沢は同意する。

「それにしても、現場も上手くやっている」

 よくぞここまで成長した。と部下を誇らしく思う一方で、やはり心配はつきまとう。

「敵機来襲!」

「ついに来たか!」

 敵機来襲までの時間で、放出できた艦載機は甲『烈風』一機と乙『烈風』が四機。

 小沢艦隊の三空母合わせて十五機。

 有人の甲『烈風』が少ないのは、やはり事故発生時のリスク軽減の為である。

「符丁ミミズク1より『瑞鶴』管制。防空戦闘を開始する」

 飛び立ったばかりの『烈風』が、推進器を吹かして敵機へ向かう。

「ミミズク1の相川中尉は凄腕です。やってくれるでしょう」

 相川は確か首都圏の防空隊である所沢第一三三飛行隊の所属である。

 一航艦では、坂井や宮部といったトップエースに隠れがちだが、確かな実力を持つ飛行機乗りだ。

 他の艦から飛び立ったのも、屈指の凄腕たちのはず。たった十五機だが、最初の攻撃はいなしてくれるだろう。

「……しかし……やはり、ドローンの動きが悪い」

 戦術情報を見ながら、草加が呟いた。

「特に、余剰ドローンがよくないな」

 ドローンこと乙『烈風』は甲『烈風』一機に対して三機が基本運用である。

 一機余分に出した機体は、現状は完全自動操縦となっている。ドローンを失った誰かへの補充を想定しているが、未調整のドローンを操れる兵が近くに居ないので、戦力としては計上できないだろう。


◇◆◇◆◇◆◇


 ミミズク1を駆る相川は、飛び立ってすぐに敵機を捕捉した。

 『瑞鶴』のエースである相川としては、他所から来たサムライ坂井などに後れをとっては居られない。

「我『ヘルダイバー』を捕捉。撃墜する!」

 幸い近くに敵の護衛戦闘機は見つけられないので、攻撃は容易だ。

 電探を見ると、かなりの数の『ヘルキャット』が一機の『烈風』に絡んでいる。

 絡まれているのはサムライ坂井だろうか?

 何にせよ、戦闘機を引き受けてくれているのはありがたい。ここは撃墜数を稼ぐチャンスであると相川は判断した。


 だが五分が経ち、十分が経つ頃には『ヘルダイバー』に加えて『ヘルキャット』が増え始める。

 流石に直掩機を見つければ、護衛戦闘機もやってくるという物だ。

 そうなれば、多勢に無勢。

 複数の戦闘機に追い回されながら、相川にできるのは『ヘルダイバー』の攻撃進路を妨害することくらい。

 当然、直掩機をすり抜けて『瑞鶴』まで到達する『ヘルダイバー』も出てくる。

 『ヘルダイバー』が二発の対艦ミサイル……『マーベリック』を放ち、『瑞鶴』がチャフやフレアをばら撒きながら急旋回。

 なんとか、攻撃をやりすごす。

 だが、この回避で発艦待機中の機体を甲板から放す事ができない。

「味方! 味方は居ないのか!?」

 無線に向かってそう問いかける。

 返答はない。

 ちらりと電探を見れば、『紅鶴』『天鶴』共に、敵機に襲われている。それぞれの直掩機は母艦を守るのに手一杯のようだ。

 まだギリギリ均衡を保っているが、それはそう遠くない内に崩れるであろう、危うい均衡だ。

 再び、『ヘルダイバー』が『瑞鶴』めがけて突入していく。

 『瑞鶴』のスポンソンから、猛然と対空砲火が撃ち上げられ、『ヘルダイバー』を退けようと奮戦している。

 ぱっと、火の粉が散ったかと思うと、『ヘルダイバー』が消し飛んだ。

 迎撃に成功したようだ。相川は胸をなでおろした。

 それでも、敵の猛攻は止まらない。

 さらに二機の『ヘルダイバー』が、『瑞鶴』への突入コースに入る。

「させるか!」

 ミミズク1の機首を、突入する『ヘルダイバー』に向ける。

 その瞬間、ガガガっという衝撃。

 真上から来た『ヘルキャット』の機関砲だ。

「AI! 被害は!?」

「右主翼に被弾。高機動スラスター出力低下」

「くそっ!」

 毒づきながら、相川は操舵スティックを倒して、『ヘルダイバー』から照準を外す。

 敵に突入を許すのは癪だが、だからと言って『ヘルキャット』に撃墜数を稼がせてやるいわれもない。

 スロットルを開けて、『ヘルキャット』から距離を取る。

 視界の隅で、『ヘルダイバー』が『瑞鶴』に突入していく。

 再び、『瑞鶴』の対空砲火が火を吹く。

 しかし、今度は二機が同時に突入しているせいで、弾幕が薄い。

「……マズい……」

 マズいのはわかっているのだが、『ヘルキャット』に追い回されている今、相川に敵機を止める術がない。

 戦闘中に余裕がなくなった相川は、ドローンを操るという事もできないのだ。

 空戦をしながらドローンを自由自在に操れる奴など、人間ではない。というのが相川の意見だ。

 ドローンを動かすことはできても、それと平行して自分事はできないのだ。

 『ヘルダイバー』二機が、まるでスローモーションのように、『瑞鶴』の飛行甲板に向かって吸い込まれていく。

「駄目だ!」

 相川は叫んだが、それでスーパーヒーローが助けに来てくれれば世話はない。

 が。

 次の瞬間に、二機の『ヘルダイバー』が一瞬で消し飛んだ。

「!?」

 そして相川の優れた動体視力は、視界の隅を超高速で飛び去って行く何かを捉えていた。

 慌てて、相川は電探を確認する。

 電探には何も映っていなかったが、味方機の方向を示すマーカーが増えていることに相川は気づいた。

「チョウゲンボウ……1? だと!?」

 増えた味方のマーカーには、チョウゲンボウ1の符丁がついていた。

 言わずとしれた、『翔鶴』航空隊のエースの一角、宮部である。サムライ坂井の先頭十七飛行隊所属の凄腕だ。

 確かチョウゲンボウは、攻撃隊を率いて出撃していったはずだが、戻ってきたようだ。

 それにしても、『瑞鶴』へ突入した敵機を撃破した時のチョウゲンボウ1の相対速度。実に秒速三〇〇〇キロ。狂った速度である。

 その狂った速度で、『瑞鶴』の脇を掠めながら正確に敵機を撃ちぬいて行った宮部の実力。恐るべしである。

 宮部が敵でなくて良かったと、相川は心底思った。

「チョウゲンボウ1から各々。チョウゲンボウ1以下、『烈風』四二機。順次制空に参加するっすよ」

 キラキラと輝く、光の粒が急旋回。『瑞鶴』に向かって戻ってくる。

 通信内容から判断するに、チョウゲンボウ1は作戦海域から加速を続けて戻ってきたらしい。

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